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第二章 第一節「前島麗華」

 如月創きさらぎ そう前島麗華まえじま れいかは並んでエレベーターに乗った。前島麗華が黒猫を抱いたまま、最上階のボタンを押してカードキーを差し込む。エレベーターは微かな振動ののち一気に最上階に向けて加速した。階数表示が目まぐるしく切り替わっていく。彼女は如月創の顔を見つめる。


「面白い手品ね。キミ、さっきのお金はどうやって出したの?」


如月創は答える代わりに彼女の目の前で100ドル紙幣の束をもう一度出して見せた。彼女はもともと大きい瞳をさらに真ん丸にしてそれを受け取る。紙幣を一枚抜き取り裏表を念入りに確認するが特に問題はなさそうだった。


「必要ならいくらでも」


如月創は女の子のようなつるりとした顔を向けて笑顔で答える。前島麗華はあごに指を添えて考えた。


「なら、100ドル紙幣でペントハウスのプールを満たして」


如月創は苦も無く答える。


「お望みなら。その前にプールの水を抜かないと」


前島麗華は思わず吹き出してしまう。


「キミ、変わっているね。紙幣はいくらでも出せるのにプールの水は消せないの?」


「ああ。創り出すのが専門で」


如月創ははにかんで見せる。前島麗華は、自分に言い寄ってくる数々の男たちとは異なる彼の素振りに心をひかれた。


「気に入ったわ。キミ、私の彼氏になりなさい」


「まだ、名前も聞いていないけど」


「そうね。私のことを知らないなんて、益々気に入ったわ。私は前島麗華。よろしくね」


彼女はそう言うと右手を出して握手を求める。如月創は細くしなやかな手をとって片膝をついて屈みこむ。


「如月創です。よろしく」


彼女を見上げるようにして言ってから、手の甲に軽く口づけした。身に染み込んだスマートで流れるような動作は嫌みがなく、どこかの国の貴公子を感じせせる。


「キミ、日本人?」


「いや。創造者」


「神様?」


「いや。神は人間が造ったもの。ぼくはこの星を創ったもの」


「ふーん。ちょっとややこしいけど。まあ、いいわ。キミ、かわいいし」


 前島麗華の思考パターンは一般人とはかなりずれていた。如月創は驚かずにすんなり受け入れてくれる彼女を見て、しばらく一緒にいるのも悪くないと思った。エレベーターが最上階に到達し、ドアが開く。この世界の贅沢をこれでもかと詰め込んだ部屋が広がっていた。

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