第七章 第四節「前島財閥」
国務長官が出ていくのと入れ替えにFBI長官が白髪をかき乱しながら駆け込んできた。彼は大統領の前で息を整えて報告した。
「大統領。如月創を監視しているチームから報告が入りました。ターゲットは現在、市内のリゾートホテルに宿泊しているのですが、彼の帰りを前島麗華が出迎えたとのとでした。二人は最上階のペントハウスを借りているとのことです」
「前島財閥のおてんば娘か。日本の政財界を裏で操る多国籍企業とつながっていると言うことか」
ビル・ワトソン大統領は渋い顔をする。
「ヨウゾウに一杯食わされたか。如月創君が既に日本と接触しているとなると厄介だな」
「それが、ホテルのフロントマンに酒を飲ませて聞き出したところ、偶然に出会っただけで、最初からの知り合いでは無いようです」
「そうか。わかった。ヘタな動きをとると如月創君がどんな動きをするかわからん。直接聞く」
ビル・ワトソン大統領はスマートフォンを取り出すと如月創に電話を入れた。
「創君かね。ビルだ。キミは今、前島麗華嬢と一緒だそうだが、アメリカと日本の両方に天乃解を探させているのかね」
「彼女は関係ありません。人間社会を理解するための単なるガイドです」
「そうか。我々、アメリカと組むという言葉は信じていいのだな」
「ええ。そのつもりです」
「わかった。ところで、麗華嬢はキミの能力をどこまでを知っているのかね」
「ぼくが『創造者』であることは理解しています」
「頼みがあるのだが」
「なんですか?」
「前島麗華は前島財閥の一人娘だ。彼女の父、前島徹次は日本の政財界に多大な影響力を持っている。キミの存在を知られるのはアメリカにとって非常に不都合な事態だ。天乃解を探すのにも障害となる」
「わかりました。接触は控えます」
「そうか。理解してもらえて嬉しいよ。それと、キミの能力を人前でできるだけ使わないようにしていただけないか。国民にいらぬ混乱を招きかねない。マスコミに知られでもしたらキミも動きにくいだろう」
「ではそうしましょう」
「良かった。これからキミの所に使者を送る。無制限に使えるクレジットカードと身分証明書を贈ろう。他になにか欲しいものはあるかね」
「十分です。しばらく彼女と人間社会を観光して回ることにします」
「助かる。トラブルが起きないように警護のものを何人かつけさせよう」
「警護は不要ですが、ぼくが日本や他国と接触しないように監視すると言うことですね。いいですよ」
「理解していただけて助かる。人間社会はなにかと面倒でね」
「そのようです」
「困ったことがあったら連絡をくれ。できるだけのことはする」
ビル・ワトソン大統領は電話を切り、険しい顔をしてFBI長官に告げた。
「国務長官とCIA長官に連絡をとり、前島徹次を監視対象に加えろ」
「はっ」
FBI長官は大統領執務室を飛び出していった。




