第七章 第一節「アメリカ国家安全保障会議」
ホワイトハウスの地下に造られたシチュエーションルームにはアメリカの頭脳と権力が呼び集められ、テーブルについていた。そうそうたるメンバーに向かってビル・ワトソン大統領は告げた。
「諸君。人類はかつて体験したことのない局面をむかえようとしている。既にご存知のことと思うが、ホワイトハウスはある一人の少年の訪問者を迎えることとなった」
一同は耳を澄まして大統領の演説を聞いた。
「その少年の名は如月創君と言う。見た目は東洋の少年だが、彼の持つ力は神にも匹敵する」
大統領がそこまで話すと、シチュエーションルームに設置された巨大なモニターに如月創の姿が映し出された。モニターはアリゾナ砂漠の米軍基地で行われた実験の様子を映し出した。
砂漠の中に突如として1000機の『ロッキード・マーティン社製。ボーイングF-22 ラプター』が現れる様子は圧巻だった。出席者の誰もが、まるで映画のような非現実的な映像に釘付けになる。
「これは事実だ。しかも彼の力のほんの一部でしかない。これが何を意味するかは皆さんは十分理解していることだろう。たった一人の力によってアメリカの抱えるエネルギー問題、資源問題、食糧問題、労働問題、人口問題のすべてが解決できると言うことだ」
ビル・ワトソン大統領は一拍置いて続ける。
「如月創君によると、彼はこの星の『創造者』と言うことだ。現在、この地球にあるものは無制限に創り出すことができる。石油を満載したタンカーで港を埋め尽くすことも、ロッキー山脈と同じ大きさの食糧の山を築くことも夢ではないのだ。しかも、一瞬にして」
ビル・ワトソン大統領はテーブルに置かれた水差しから、水をコップに注いで一気に飲み干す。
「これがどんなに危険なことか、諸君は認識したはずだ。こんなことが他国に知られれば、金融恐慌はおろか世界経済そのものが崩壊してしまうだろう。世界中が彼を奪い合い、戦火は地球全土をお覆いつくす」
ビル・ワトソン大統領はモニターに映し出された如月創の顔を見つめる。
「だがしかし、我々が彼を保護し、制御することができれば。アメリカは再び、世界の英雄として返り咲くだろう。私はここで皆に言いたい。如月創君が神でなくとも、我々の神が与えてくれた、アメリカにとっての最大のチャンスなのだと考えたい。我々は彼と共に新しいアメリカを築き、世界の秩序となるのだ」
出席者の間から拍手がわき起こる。
「だが、問題がないわけではない。如月創君の話では彼と同じくらいの力を持った『破壊者』なるものが、我々の同盟国である日本に潜伏しているとのことだ。彼が覚醒すれば地球上の文明を一瞬にして消し去ることができると言う。如月創君が我々に協力する条件は、この対極する力、つまり『破壊者』を抹殺することだ」
出席者が騒めき始める。
「幸いまだ彼の力は限定されている。我々はまず『破壊者』なるものを探し出す必要がある。『破壊者』の名は天乃解と言う。わかっていることはそれだけだ」




