第五章 第四節「秘密の地下室」
三人は星崎大貴の家の地下室にいた。複数の大型の液晶モニターが部屋中を埋め尽くしている。天乃解は中央の椅子に腰かけてカーソルを操作している。
吉澤栞里と高木彩佳は異次元の世界に迷い込んだかのように茫然と突っ立っていた。モニターに映し出される画像が目まぐるしく切り替わり、青白い光が三人の顔をあやしく照らしていた。
「大貴は、いったいどんな仕事をしているの?」
「株のディーリングって言っていたけど、まさか家の地下にこんな部屋があるなんて・・・」
「栞里はここに入るのは初めてなの?」
「いつもカギがかかっているし、子供の時から近づくなって言われてたから」
「普通、近づくなって言われたら覗きたくなるもんでょ」
高木彩佳は物珍しそうにあたりを見回す。その間も、天乃解の操作に合わせてモニターの画像は高速に切り替わった。難しい外国語の論文もあれば、カラフルでち密なコンピューターグラフィック、生々しい手術画像など様々なものが映っては消えた。
「こんなど田舎に、この部屋は絶対に異常よ。それに大貴のようなダンディな紳士がいるのも異常。ミステリアスな大人の男って素敵!」
高木彩佳の瞳孔は、興奮で完全に開ききっている。
「おい、勝手に触るなよ」
星崎大貴が地下室に入ってくる。
「解君、どうだ。目的の情報はとれたかな?」
「はい。ありがとうございます。地球上にある医学に関する情報は一通り」
天乃解が星崎大貴に答えた。吉澤栞里には二人の会話の意味がまったく呑み込めなかった。天乃解が席を立つ。
「おい。行くぞ」
吉澤栞里と高木彩佳は星崎大貴に肩を叩かれてわれにかえる。
「あっ。ハイ」
星崎大貴は三人を地下室から出すと鍵を閉めた。四人一列になって狭い階段をのぼる。一階につながる扉を開けると、古びたいつもの廊下に出た。吉澤栞里は未来から過去にタイムスリップした気分だった。
「それじゃあ。彩佳さんのおばあちゃんに会いに行きましょう」
天乃解は高木彩佳の顔を見る。
「おばあちゃんのガンを直せるの?」
「ええ、医学の知識は十分理解しました」
「たったの10分で」
「はい」
「キミ、やっぱり人間じゃないわ」
地域でトップクラスの知能を有する高木彩佳はあきれた。




