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異世界で料理人を命じられたオレが女王陛下の軍師に成り上がる!2  作者: すずきあきら
第四章 旅は家に帰りつくまでが本番なわけで
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2

ブーリエ女王に嵌められた?

 とつぜん、新たな声。

 空から降って来た。もう鳥の姿の少女たちは全員が着地したとみて、誰も空を見ていなかったから不意を突かれた。

 バサバサッ! 大きな羽ばたきとともに空から降って来る。

「ぅっわ!」

 その風圧と、吹き付けてくる細かい羽根の嵐に思わず目を閉じそうになる衝太郎。ケルスティンは顔を半ば覆いながらも前に出る。

「くっ!」

「へーえ、さすがだね。でもべつに戦うつもりなんてないんだけどな!」

 そう言うと、さらに強い風が逆巻く。ケルスティンでさえ、もう目を開けていられなくなるほどだ。

「きゃああっ!」

「姫さま!」

 けんめいにアイオリアを守ろうとするジーベたち侍女。衝太郎もそうしたいが、なにしろ目が使えない。

「くっそ! なにが戦うつもりがない、だ! こんなの……あれ?」

 不意に風が止んだ。

 ようやく目が開く。と、そこに、

「だから言ったじゃん。あたしは戦う気はないっての」

 声の主がいた。

 空から降りて来た、まぎれもないこっちは、

「鳥、の……!」

「そうだよ。ハーピー族のニケ。おぼえておきなっての!」

 自信たっぷりに胸を張る。それはかなり小柄の少女だ。

 顔も身体のほとんど人間そのもので、こっちがちょっと遠慮したくなるような、露出の高いコスチュームを身に着けている。

 しかしなんといっても異なるのは、その手足だ。

 両足は膝から下が鳥の足そのもので、足先やかかとには大きな爪が剥き出しについている。

 もっと、一目でわかるのは両腕で、まさに、

「ハーピー族。人であり鳥……鳥人族というわけか」

 ケルスティンの言葉どおり、それは大きな鳥の羽そのもの。いまは折りたたまれてコンパクトだが、広げると身体の倍くらいにもなる。

 羽根の先が手だ。完全に羽を広げきったときには、手の先にも、腕の長さほどの翼が伸びる。

 手の形は人と同じだが、その爪は鳥のように固く伸びていた。

「うん。思ってるとおり。ニケはガンティオキアの王族のひとり。このサモラカンの谷は、ニケたちのものになったんだ」

 いつのまにか、ニケの背後に他の鳥少女たちが居並んでいた。が、さっきとどうも雰囲気が違う。それは、

「羽根、翼が」

 ジーベがつぶやく。

 そのとおり、彼女たちにはもう翼がなかった。手脚もふつうで、手にはそれぞれ剣や弓を持っている。

「あいつら、どこから!」

 それまでは、ニケと同じように腕が羽根になっていたのに。と、見ると、脱ぎ捨てられた翼が地面に折り重なっている。

「あれは作り物だったの?」

 アイオリアが驚くのも無理はない。

「なるほどな。本物のハーピーはニケだけ。残りは、作り物の羽根でグライダーみたいに滑空して来たってわけか」

「そういうこと。いいでしょ! ニケの空中騎兵団だよ!」

 ますます胸を張るニケ。だが、

「ご自慢の空中なんたらはいいけどな。ない胸そんなにどうどうと見せつけられてもなぁ」

 衝太郎がポリポリと頭を掻く。

 とたん、ニケの顔がサッ、と赤らんだ。

「な、なに!? 胸がどうしたって? おまえ、どこ見てんだよ! この痴漢! ヘンタイ!」

 胸を押さえながら、ニケがにらむ。周りの少女たちもまた、なぜだか自分の胸を意識して顔を見合わせたり赤面したり。

「痴漢って、こっちの世界にもあるのか、って、ぅん? ……ははぁ」

 言葉の途中で衝太郎、

「なにかわかったの、衝太郎?」

 と、アイオリア。そのアイオリアの胸を、

「ふむ」

 じーっ、と見つめる衝太郎。

「えっ、なによ? なんなの!」

 だが衝太郎は次にケルスティンをガン見。もちろん胸元だ。いや、胸だ。バスト。

「なんだ」

 こっちはあくまで冷静なケルスティン。だが、衝太郎の視線の先がわかると、

「ど、どこを見ている!」

 やはり、胸を押さえて半身になる事態に。

 すると衝太郎の視線は次に、

「なんですか」

「ぁ、あの……!」

 ジーベとフィーネへ。

 こっちは、少しも動じないジーベと、つい猫背、前かがみで胸を隠そうとするフィーネ、と好対照。

 と、一周し終わって、衝太郎。

「圧勝だな、わが軍の!」

 言い放つ。これまた胸を張って。

「なによ、どういうこと!?」

「なんだってのよ!」

 これにはアイオリアだけでなく、ニケも強く反応する。

「アイオリア、何センチだ?」

「は? 何センチ、って」

「胸だよ。バスト。おっぱい。乳房……っていうと、ちょっと生々しいな」

「おっぱい、でじゅうぶん生々しいしエッチよ! ……胸回りのこと? そんなの、測ったことないし、わかんないわよ」

「八十三センチです」

「ジーベ!」

「Cカップ、になります」

「ちょっと! なに言って……ぁあ、もぉ!」

 どうやら、服や下着はすべてオーダーメイドのアイオリア。

 侍女たちにサイズを測らせても、自分では覚えているはずもない。採寸したことも忘れてしまっているようだ。

「八十三のC、だいたい思ったとおりだ。ケルスティンは?」

「わ、吾は! そんなサイズはもとより測らぬ! 侍女たちが適当に詰めてくれるのでな。鎧は、少々きつくなったりして、直すこともあるが」

「……九十五、F。推定だが、けっこう合ってると思うぜ」

「え、F。吾、が……」

「かなり正確な推定です」

「ジーベ、キミは」

「推測には及びません。九十、Eです。フィーネは九十六、G」

「じ、ジーベ! ぁぁあああ」

 もはや、胸を両手で絞めつけて、その場に崩れ落ちそうなフィーネ。

 全員のサイズを特定して、衝太郎。

「これでわかったろう。おまえたちの負けだ!」

 ニケたちを指さす。

 これには、

「ぁあ!? なに言ってんだぁあ! バカじゃないの! そんなのでどうして勝ち負けが」

「じゃあ、ひとりでも勝ってるのか? こっちの最小、アイオリア超えがひとりでもあるのか?」

「最小って、ちょ、っと! 衝太郎!」

「それは……じゃないっての! なんで胸がデカいほうが勝ちで、小さいと負けなんだよ! おかしいだろ!」

 激昂するニケに、しかし冷静に言い放つ衝太郎。

「なんでって、オレが好きだからだ」

「はあ!?」

「えっ、そうなの……衝太郎」

「そうだったか。まぁ、うん。そうか」

「……」

「ぁ、あの、それってまさか……い、いいえ! 失礼、しますぅう!」

 さまざまな反応を引き起こす。

 もっとも動揺しているのは、もうほとんど自分で自分の胸を両腕で押し込むように隠し、しゃがみ込んでしまっているフィーネ。

 それに、

「そうなんだ。衝太郎って、胸、大きければ大きいほど、いいんだ……」

 ぼうぜんと遠くを見る目のアイオリアだ。

 これに対し、いっしゅん虚を突かれたニケだったが、

「ば、ば、バッカじゃないの! バカバカバカ! 正真正銘のバカだっての! おまえの好き嫌いなんて聞いてない!」

「ああ。オレもここまで言う気はなかった。でもまあいい。みんなのサイズもわかったしな」

「まさかそなた、そのために」

「違う違う。けど、こんなにかんたんに正確なサイズがわかるとは……ん! んんっ、で、ここからは本題だ。ニケ、おまえは空を飛ぶために身体を軽量化しなくちゃならない。だから重量物の胸はきょくりょく小さくなる。推定、いや、間違いなく、Aカップだ」

「ぐっ! だ、だったらどうだっての!」

「そしておまえの空中騎兵とやらも、グライダー滑降するのに重量物は禁物。したがって全員、胸はAからBカップだ」

 衝太郎が断言すると、ニケ配下の少女たちの間にも、ざわざわと動揺が広がった。

「み、みんな、だまされるな! そんなのウソだ! ……ほんとうだけど、でもそんなの関係ないんだから!」

「そう、関係ない。胸が大きいだの小さいだの、そんなのはどうでもいい。どうでもよくないのは、おまえたちが武器まで使って、オレたちを脅してなにかをしようとしてることだ。そうだよな?」

「そうだよ! 胸の大きさなんて関係ないもん! ニケたちは、おまえたちがリュギアスの王女とその一行だって、ふふん! ここへ来るって知らされたから、襲うことにしたんだっての!」

「ほーお、やっぱりか。誰かに聞かされたな。で、誰だ」

 ここまで来ると、完全にやりとりは衝太郎のペース。むろん、胸のサイズなどで徴発し、ニケを混乱、興奮させての誘導だったのだが、

「そんなの、グレナグラ=ビラのブーリエ女王に決まってるっての!」

 ニケの言葉の意外さは予想以上だった。その場のほぼ全員が驚き、声を失う。

「えっ、どういう、こと」

「思ったとおりだ。わざわざ帰りのルートを指定したり、この村でちょうど護衛がいなくなるとか、で、空から登場、だろ? おかしいと思ったんだ。誰かが絵を描いてなくちゃ、できないことだ」

「で、でも」

「では我々は、ブーリエ女王に売られた、ということか」

 ケルスティンまでが表情を険しくする。さっきまでの、胸の大きさで沸騰していた空気が凍り付いた。

「いや、そこまで悪質じゃないと思うぞ。けどあのポンコツ女王だ。しっかり仕込んでやがった、ってとこか。なぁ、ニケ!」

「は! ぇ、っと……そんなの、決まってるってーの! てか、関係ないし! ニケたちがおまえたちと勝負して勝ったら、この村も谷も、ニケたちのものになるって、女王と約束だし!」

 またも驚くべき事実。

 胸の大きさ対決でいっとき激昂したとはいえ、あっさり口にしたうえ、さらなる核心の情報まで。

「おまえ、あんまり頭よくないだろ」

「はぇ!?」

 ショックを受けたニケの顔。

 しかしそれはアイオリアたちでも同じで、

「信じられない。大叔母さまが、なぜわたしたちを」

「しょせんはコマ。吾らは女王の手駒というわけか。それも使い捨てのな」

 ケルスティンなど、吐き捨てる。が、

「まだ決まったわけじゃないぜ。その「勝負」ってのはなんなんだ。それも女王から指定されたのか。聞かせてもらおう」

 衝太郎が水を向けると、ニケ、どうやら自分の失敗を自覚して焦りながらも、妙な強気だけは崩さずに、

「へ、ヘンっ! それはぁ……料理対決だ!」

 言い放った。

「はぁ、料理対決ね。ん? 料理」

「対決!?」


料理対決! 料理ものっぽくなって来ましたw

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