時を戻せる僕とフリマアプリ(44話)
「あ、モンミュ新作出てる。」
それは学校からの帰り道、ついつい立ち寄ったゲーム屋で僕は見つけてしまった。
『モンスターミュージカル』通称モンミュ中高生に人気のミュージカル会場でモンスターと闘うという斬新かつ独創性に溢れるオープンワールドゲームだ。
「長いこと新作が出てなかったのに、いつの間に出たんだ?」
言わずもがな僕も『モンミュ』のファンプレイヤーのひとりである。
しかし、買おうと思った僕の手は値札を見てそっと棚に戻すのだった。
「ありがとうございました~」
店員の挨拶を受けながらとぼとぼと帰路につく。
「今ってゲームあんなに高いのか」
五千円くらいと思って手に取ったソフトがよく見れば一万円弱したのだ。
「そういえば、ゲーム機すら持ってないんだよな~」
ゲーム機+ソフトとなると高校生の僕がとてもじゃないけど払える値段ではなかった。
「りんちゃ~ん!!」
信号を待っていると聞き覚えのある幼馴染の声が聞こえたので振り返るとそこには童顔の幼馴染が走ってこちらに向かってくる姿が目に映る。
「意外と早かったなたしか、学園祭の集まりがあったんだろ?」
「うん!意外とすんなり会議が進んだの!でも、下校中のりんちゃんに追いつくとは思わなかった!」
「あ~それはだなあ」
僕はかくかくしかじかゲームソフトの話お金がない話をした
「なるほど、りんちゃんフリーマーケットしてみたら?」
「フリーマーケット?それってあれか、学校の行事とかで自分のいらなくなったもの売ってる出店のことか?」
あまり、詳しくはないが自分のいらないものに値段を付けて見に来た客にこじつけているようでいまいち買う気が起きなかったのだけは覚えている。
「うん!今は携帯のアプリがあればできるんだよ!?」
「へ~そうなのか、確かにそれなら高校生の僕でも稼げそうだな」
今回の話は案件ではないとだけ先に言っておこう
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「え~っと確かここに...あった!」
僕は押し入れから小学生のころにしていたカードゲームを掘り起こした。
フリマアプリをダウンロードし、まず、目に入ったのはカードゲームだ。
僕が持っているカードも1枚1000円とかで取引されていたので数点出品してみる。
【商品説明】
カードゲーム
いらなくなったので売ります。
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「見よう見まねで出品してみたけどこんなところかな?」
『ピロン』という通知とともに画面に売り切れという文字が出てきた。
「えっ!?売れた!」
そう、出品してわずか数分で売れたのだ。
「こんな簡単に1000円が手に入っていいのか…?」
『俺、実は隠れてバイトやってんだけどよ。時給1000円だぜ?すごいだろ?今度アイス奢ってやんよ?』
僕は隣のクラスの坂下くんが言っていた言葉を思い出した。
「なるほど、カード以外にも写真集から日用雑貨まで幅広く売れているんだな」
目標は、4万円、今1000円売れたから残り3万9千円…道は果てしないな。
フリマアプリには気にいった商品にマーキングすることができる『いいね』機能や購入前の値段交渉ができるチャット欄がある。いいねの数が多ければ多いほど人気商品であることの証明にもなるし、チャット欄を見れば値段設定の参考にもなる。
え?
気のせいだろうか、いや気のせいではないな。
僕のスマホの画面には大きな文字で
『 杉本倫太 1st写真集 元気りんりん 3万円 』
と映し出されていた。
「なんじゃこりゃあああああああ!!!!!」
「これは奈津が持っていたやつだ!99冊のうちの1冊がなんでフリマアプリに!?てゆうか、3万円!!!???」
僕は勢いのまま商品画面をタップしスクロールする
【商品説明】
もう見飽きたので売ります。
チクショー------!!!!!!!!
「どこの誰だか知らないけど百歩譲って出品するのは許してやる!!見飽きたってなんだ!?僕に失礼だろ!?」
いや、そもそも勝手に写真集が作られている時点で僕は人権を失っている気がする。
「特定してやる…」
さらにスクロールしていくと
【 いいね 10 コメント13件 】
【 コメント欄 】
Natsu: 欲しいです!安くしてください!
暗黒竜を宿しもの: その魔導書我が購入しよう...
Love みぃこ: へぇ杉本ってこんな趣味あるんだな~
カメラ小僧: 人が作った写真集を売るとは...外道め!
〇 : 美園さんの写真集売っていないですか!?
Kosuke : 久々にこんな笑ったわ
どうしよう、チャット欄おそらく知り合いだらけなんですけど
明日から恥ずかしくて学校行ける気がしないんだけど…
「あ。」
たった今画面に「SOLD」の文字が映し出された。
「なんで売れるんだよ、こんなの」
また1つ僕の恥ずかしい姿が知らない人の手に渡ったのか
そんなことを思いながらふと1つの考えが頭に浮かんだ
「ん?待てよ?こんな物でも売れるならみんなからいらない物をもらって転売すればいいんじゃないか?」
~翌日~
昼休み僕は悪友のもとへ足を運ぶ
「なあ、幸助」
「あ、なんだ?」
「家になにかいらない物ない?」
「いらない物か…あることにはあるがどうしてだ?」
うわ、どうしよう。転売したいから渡してくれなんて言えないよな。
「世界の貧しい子供たちにユニセフでー
「嘘だな」
くそっ!言い訳が思いつかねえ!
「本当の理由はなんだ?」
僕は良い言い訳が見つからず俯き幸助の足元を見る
「…幸助のモノが欲しいんだ。」
決して上手くない言い訳を言うと
さっきまで騒がしかった教室が一瞬で静まり返る
(え?なにBL!?)
(りん×こうよ!)
(杉本が茅場の股間を見ながらモノが欲しいって...)
ひそひそと周りから声が聞こえる。
え、僕なにか間違った?
「倫太、それはどういう意味?」
幸助の背後からヒョコっと顔を出したのは完璧美少女七瀬だ。
「いやいや、僕は幸助の使わないモノが欲しいだけで」
「幸助のモノは私という使い道がある。」
「お前ら本人を前に気持ち悪い会話すんじゃねえよ!あと俺のは七瀬のモノでもないからな!」
(なに?三角関係?)
(茅場を杉本と光野さんが取り合ってるらしいぞ?)
また周りからひそひそと声が聞こえる。
「私のじゃない…」
そして露骨に落ち込む七瀬
「まあなんだ、何に使うかは知らんが俺のいらなくなった枕とかならくれてやるよ」
枕とかなら意外と高く売れそうだ!
「本当!?ありがとう幸助!放課後もらいに行くね!」
僕は次の目的地に向かうために教室を出る
(聞いた?茅場の枕もらうんだって)
(杉本君何に使うのかしら?)
(決まってるじゃない!匂いをかいであれをああするのよ)
「あいつ何する気なんだろうな」
「浮気は許さない。」
「おい!七瀬その手に持ってるもので何をする気だ!?ぎゃああああ!!!!」
去り際に聞こえたひそひそ話と幸助の悲鳴を聞いて思った。
僕はこのクラスが嫌いだ。
次に向かったのは風松のいる写真部だ。
「いらないものだと?」
「そう!使わなくなったカメラとかさ!そんなのない!?」
「そうだなぁ、いらなくはないがこれならあげてもいいぞ」
そういって渡してきたのは小型のカメラだ。
「ん?これは?」
「これは俺が初めて使ったカメラだ。新しいカメラを買ったんで、今は使わなくなったんだが機能的には問題なく使える。たまにこのカメラを見るたびに初心を思い出すんだ。記念に残しておいたんだが、まあ日ごろのお礼だ。」
すごくキリっとした表情で渡してくるけど
ごめん風松それは売れないよ…
だって側面に名前書いてるし、すごい年季感じるし、絶対大事な奴じゃん。
「い、いいよ。なにか別のはない?」
「一体お前は何を求めているんだ?」
そういいながら風松が次に出してきたのはカメラケースだった
「この前、写真コンクールで入選した時にもらったやつだ。カメラケースなんてものすでに持ってる俺には使わないからな」
見るからに高そうだこれなら心置きなく売れる!!
「ありがとう!風松!大事に使うね!」
「お、おう。」
そうして僕は写真部の部室を後にした。
「どうせならこのカメラ持って行ってほしかったんだけどな…」
次に向かったのは職員室だ。
「いらないものだと?」
「はい!古本とか、ネクタイとかありませんか?」
僕は天敵の箱庭先生に会いに来ていた。
「貴様一体何を企んでいる。」
「何も企んでなんかいませんよ。僕はただ箱庭先生の使ったものを使わせていただくことで気持ちを引き締め真っ当な人間になるためー
「嘘をつくな!!貴様なにか後ろめたいことでもあるのだろう!!」
僕ってなんでこんなに周りからの信頼がないのだろう。
「失礼な!!僕はただ純粋にいらないものを集めてるだけですよ!」
「その純粋にいらないものを集める目的はなんだ!!」
「日々迷惑をかけている皆様に恩を返すために廃品回収という形で社会貢献とともに…
ちょっと待って!なんでこぶしを握っているんですか!?」
「貴様はそんな人間ではないからだ!!」
何で!?今のは表情も話し方も完ぺきだったと思うんだけど!?
「それが生徒に向かって放つ言葉ですか!?教育委員会に訴えますよ!!」
「ならば貴様が訴えを取り下げるというまで殴るまでだ」
「なんでそんな脳筋なんですか!?」
まずいこのままだとボコボコに殴られる何か打開策を探さねば!
「せ、先生そこの万年筆貸してくださいよ!」
「む、万年筆だと?なぜだ?」
「字、字の練習にと…」
「まあお前はまず字を書くことから始めた方がいいな貸してやろう。」
危ない危ない、担任じゃなかったら膝蹴り入れていたところだ。
「杉本、間違ってもそれはいらないものではないからなちゃんと返せよ」
「心得ております。」
それから一週間後
昼休みのこと
「倫太眠たそうだな」
僕は幸助と2人でいつも通り屋上で昼食をとっていた。
「実は最近臨時収入があってゲームが買えたんだ。それで夜までね」
あれから僕は見事に転売に成功していた。
幸助の枕は4千円、風松のカメラケースは7千円そして先生の万年筆は驚きの2万円で売れたのだ。合計約3万円を手にし、もともと持っていたお金と合わせて購入に至った。
『俺1日3時間を週に3回働いて月に3万円稼いでるんだぜ?凄いだろ?今度焼きそばパン奢ってやんよ!』
実際に3万円を手にしたとき僕は隣のクラスの坂下くんの言葉を思い出していた。
正直3万稼いでるのなら焼肉クラスの物を奢ってくれよと思ったけど。
今となっては彼が何時間もかけて稼いだお金を僕はわずか数日で稼いだという背徳感でどうでもよくなっていた。
「ゲームかそれは良かったな。それより少しおかしな話をしてもいいか?」
「おかしな話?いいよ」
「これはこの前の出来事だ。」
『七瀬メシできたぞ~』
『・・・』
『七瀬?入るぞ』
『ガチャ』
『なんだ寝てるのか…は!?』
「七瀬が使っていた枕は俺がお前にあげたものだったんだが、近くにあった段ボールのラベルを見たら差出人にお前の名前が書いてあったんだ。」
「へ~そんな偶然てあるんだ。」
たしかにあの枕は出品してすぐ売れたんだよなぁ
4千円という高い設定だったのに売れた理由が今わかったよ
『ガチャ』
「やはりここにいたか」
屋上のドアを開けて入ってきたのは風松だ
手には大きな袋を抱えていた。
「いつも昼休みは部室にいるのにどうしたの?」
「いや、最近不思議なことがあってな」
「なんだおまえもか」
幸助が腕を組みながら風松にそう言った
「最近カメラ仲間と撮影に行った時だ。」
風松は手に持っていた袋から見覚えのあるカメラケースを取り出す。
「これは大会の商品のため非売品なんだ。お前にあげたものがカメラ仲間が持っていた...不思議だろ?」
「え、そんなことあるんだね。」
『ガチャ』
「貴様ら昼休みは屋上の出入り禁止と何回言ったら分かるんだ!!」
大声をあげながら入ってきたのは箱庭先生だ
「「「さーせん」」」
僕らは気だるそうに謝る
「そうだ杉本おまえに話しておくことがある。」
「みんな今日は僕に話が多いですねなんですか?」
「これはとある生徒の話だ。最近字の練習がしたいから俺の万年筆を貸してくれと言ってきたのだがな。」
先生の拳がギュッという音を立てて握られる。
「その万年筆は結婚祝いにもらったものでな、俺と妻のイニシャルが入っていて妻がたまたまフリマサイトで見つけてのだ、まさかと思って購入したら俺がその生徒に貸したものだったんだ。」
「ハハッ!それじゃあ、先生金払って自分の万年筆買ったんすか!?バカっすね!!」
「フハハハ!いつも怒ってばかりだからそんなことになるんですよ!」
幸助と風松が高らかに笑いながら先生バカにする。
「ガハハハッ!送られてきたラベルにしっかりと“杉本倫太”と書かれていた!いやぁ俺もまさか2万円払って自分の万年筆を買うとはな!人生何があるかわからんな!」
先生も腰に手をあて大声で笑っている。
「アハハ!!いやあ!!みんなの不思議な話面白いね!!じゃあ僕トイレ行くから3人でここで話しててよ!」
僕はドアに向かって笑いながら歩き始め
『ガシッ!』
―られるわけがなかった。
「まあまあ倫太まだ話そうぜ」
「そうだMr杉本話の途中ではないか?」
「杉本遺言は決まったか?」
リセット!!
僕は心の中で叫んだ
『ガチャ!!』
「コラァ!!杉本!逃げるな!!」
「倫太!!待ちやがれ!!!」
その後、僕は家にあるありとあらゆるものを売り捌き全額返金をしたのであった。
もうフリマなんてこりごりだ




