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リセスト  作者: トンボ
過去編
34/49

野球少年だった俺と無表情な彼女7(34話)

俺らの先輩を倒し県大会へと行った加賀中、

俺たちは『打倒加賀中』という目標を立て日々練習していた。そして、今日ついにリベンジを果たす時が来た。


「なぁ古賀」

「なんだ?」

古賀はキャッチャーの防具を付けながら俺に返事をする。

「緊張してるか?」

「まぁ程々にしてるな」

だが、古賀の表情からは緊張は一切感じない

「そうか」

「そういうお前は?」

「してるよ、、、まぁあいつら程ではないけどな」

俺はそう言ってチームメイト2人に目を向けた。

「お、おい!川田キャ、キャ、キャッチボール!

しようぜ」

佐野は言葉が詰まりまくっている

「お、おう投げるぞ?あ、これおにぎりだった」


「しっかりしろよ!緊張してんのか!?」


「馬鹿野郎してねぇよ!てか、お前なんでグローブ持ってないんだ!お前こそ緊張してんだろ?」


「、、、2人とも落ち着ついて、足が生まれたての子鹿バンビみたいになってる」

「「なってねぇよ!!」」

確かに川田と佐野の足は震えまくっているから、

子鹿バンビという表現は正しいかもな

「、、、それに加賀中は色々対策とってきたから大丈夫」

2人を諭すように七瀬はノートを取り出し、パラパラとめくりはじめた。

「「、、、ななちゃん」」

感激したのか、2人の足の震えはおさまっている。


ー「「ノート逆さまだよ」」ー

「、、、あ」

「いや!お前もか!?」

どうやらみんな緊張しているらしい。


*******

試合開始5分前、俺たちは円陣を組んでいた。

「とうとう来たな、この日が。俺らがこの一年してきたことを全てぶつけるぞ!!」

川田はさっきの緊張した様子とは違いだいぶ落ち着いている。

「「「「おう!!!!」」」」


『プレイボール!!』

そしてまもなく試合が始まった。

川田、落ち着いていけよ」

俺はショートの守備につき川田に声をかけた。

第1球振りかぶって投げた

『ボール!』

川田が投げたコースは外角低めのストライクゾーンギリギリ外れたところだった。

(1番バッターの冴島くんは初球を絶対振ってくる)

七瀬の言葉が脳裏によぎる。

間違いなく相手は戦い方を変えてきている。

『カキィン!』

冴島の打った打球は1、2塁間を抜けヒットとなる

2番打者が打席に入る。名前は唐田、バントが得意で塁にランナーがいる時はバントしかしてこない

現に今もバントの構えをしている。それを見て内野陣の俺たちは前進守備をとる。

ピッチャーが投げたその瞬間俺たちはバント処理のためバッターの近くまで走る。

『カキィン!』

しかし、唐田はバントをやめヒッティングした。その打ち方を『バスタ』という

打球は平凡なゴロだが、前進していたため内野を抜け外野へと転がった。1番バッターの冴島は足が速いため三塁へと進んだ。

『タイム!』

ランナーが1.3塁となり、古賀がタイムをとった。

ピッチャーの川田のまわりに内野陣が集まる。

「すまない俺の配球が悪かった。」

一言目に古賀は申し訳なさそうに謝った。

「あぁ?何言ってんだ眼鏡、誰も悪くねぇだろ?」

低い身長で俺たちを見渡しながらそう言った。

「そうだな、佐野の言う通りだ。よって俺のせいでもない」

笑いながらみんなを見る川田

「お前は打たれてんだから少しは反省しろよ」

そう言って佐野は目を細めた

「なんか、お前らいつも通りに戻ったな」

そんな2人の会話を見ていると緊張していた俺も少し落ち着いた気がする。

「当たり前だろ?いつまでも緊張してられっかよ!?」

「おい、お前ら本題に戻るがこれからは光野が前に言っていた作戦でいくぞ。」

「「「了解」」」

タイムを終え俺らは守備位置へとつく

「おい何してんだあいつら」

加賀中のベンチからそんな声がする

それも当然だろう。通常3塁にランナーがいるなら前進守備で一点を阻止しに行くのが普通だが、俺らの守備位置は定位置よりもむしろ深く内野ゴロでも一点入ってしまう位置にいる。

七瀬が言っていた作戦、それは一点を捨て、バッターに集中するものだ。


(それで俺らはどうしたらいいの?」

(無理なお願いかもしれないけど、川田くんには常に4割くらいの力でピッチングをしてほしい)

(4割?ななちゃんそれって打たれない?)

(もし、ピンチになったら10割で投げて)

(古賀と川田はわかったが、俺や佐野を呼んだ理由はなんだ?)

(セカンドとショートの2人にはランナー三塁の時は後退守備をしてほしい)

(ななちゃんそれって1点を捨てるの?)

(うん、川田くんは球が速いから10割で投げた時打球が速くなると思う、1点を捨てて1つずつアウトを取ってほしい。)


前に七瀬とした作戦会議を思い出した。

『プレイ!!』

審判のコールにより試合が再開される

相手の3番の岩見がバッターボックスに入る

特徴は高い長打力だが走力がないため内野安打はほとんどない

『カキィン!』

『ファール!』

川田の10割の球に押されファールとなる

程なくして2球目を投げる

『カキィン!』

転がった速い打球はセカンドの佐野の正面、ゲッツーコースだ。

「佐野!!」

セカンドに入りながら声をかける、佐野から投げられた球を受け、セカンドを踏みファーストに投げる

『バシッ』

『アウト!』

三塁ランナーは生還したもののゲッツーをとり

2アウトランナーなしとなった。

七瀬の作戦が功を奏したのだ。

続く4番打者をフライに打ち取りチェンジ



そして後攻の俺たちの攻撃となる

1番打者の佐野がバッターボックスへと向かう。

「しゃす!」

審判と投手に挨拶をし、バットを構える

『ストライク!!』

初球を佐野は見逃しストライク

『カキィン』

『ファール』

七瀬のおかげで相手投手の『柳』のことは研究済みだ。しかしさっきの相手の攻撃を見る限り何かしら変化があるに違いないだろう

『ストライク!バッターアウト!!』

そんなことを考えていた時、佐野が空振り三振をして帰ってきた。

「どうしたんだ佐野?」

「ななちゃんの対策は忘れろ」

2番打者の川田とすれ違い際に佐野はそう言った。

「どういうことだ?」

「あいつら俺たちのこと完璧に研究してきてるぜ」

「まぁ普通に考えてそうだろうな、加賀中の情報を知っている光野が転校してきたんだ。少なからず対策は取ってくることは向こうも分かっただろうからな」

ネクストサークルで待つ古賀がそう言った。

「ごめん私の考えが甘かった。」

「七瀬が謝ることじゃないだろ?」

「そうだぜななちゃん!なんせこの天才が次の打席でホームランを打つんだからな」

「期待してる。」

絶対してないな

『ストライク!バッターアウト!』

「だめだ、手が出なかった。多分ここ最近の試合で打った球はこないと考えた方が良さそうだ。」

川田が苦笑いを浮かべながら帰ってきた。

結局この回の攻撃は古賀も三振し、三者三振となった。



ーーーーーーーーーー

「ねぇ、幸助」

「ん?なんだ?」

「今思い出したんだけど僕が聞いたのはさ、なんで2人が暮らし始めたかなんだけど」

幸助と七瀬の中学時代の話に聞き入っていて普通に忘れていた。

「そうだな」

「覚えてるならそこだけはなしてよ!!」

「そんなこと言ったって、もうそろそろあいつらが来る時間だろ?」

時刻は14時30分七瀬達が来るのは15時だから

まだ30分時間がある。

「あれ?幸助くんさては照れてるな〜?」

彩瀬さんは不敵な笑みを浮かべ、からかうように幸助に迫る

「彩瀬さんは知ってるんだから聞かなくてもいいですよね?」

なるほど幸助がなぜ話したがらないのかわかった

僕だって一応こいつの友達だ。今回は聞かないであげよう

「わかったよ、じゃあ今度七瀬に聞くー「それだけはやめろ。」

即答だった。

「だったらちゃんと倫太くんに話してあげなよ」

「わかりましたよ!話せばいいんでしょう!」

幸助は顔を少し赤らめ再び話し出した。



ーーーーーーーーーーーー


加賀中との試合は初回の1失点のまま最終回の7回まで進んでいた。俺たちの安打数は0本ここまで綺麗に抑えられている。

「ここで打たなきゃ試合が終わりだ!全員なんとしてでも塁にでろ!勝つぞ!!」

「「「「おお!!」」」」

円陣を組み川田が気合い入れをする

この回の攻撃は1番からの好打順だ。

「しゃす!」

バッターボックスに入りバットを構える

「うて!佐野ぉ!!」

「かっとばせ!!」

ベンチからも自然と声が出る。

『ボール!』

初球を見逃しボール

相手ピッチャーも疲れてるのか初回ほどの勢いがない。そしてゆっくり振りかぶり投げた

『カキィン!!』

佐野が打った打球はセンターの頭上を越した

「「「ワァァァァ!!」」」

と歓声が上がる。打った佐野は二塁まで進んだ。

「、、、佐野すごい!」

俺の隣にいる七瀬が嬉しそうに言った。

「しゃす!」

2番の川田が打席へ入る

バントの構えだ。

『コン!』

初球を1塁側に綺麗に転がし佐野は三塁へと進んだ

流れは確実にこっち側に来ている。

「ナイスバント川田」

ネクストサークルで待つ俺の元へ川田が歩いて来た。

「茅場ピッチャー球威が落ちてるから打てるぞ」

笑顔で俺にそう言う

「なんだ?プレッシャーかけてんのか?」

「ちげぇよ、期待してんだよ」

「、、、大丈夫幸助なら打てる」

七瀬まで俺のところへ来たがプレッシャーをかけられてるとしか感じない。

『カキィン!』

3番の古賀が打った打球はレフトへ高く上がり犠牲フライとなった。

「ナイスバッティング!佐野!」

帰ってきた佐野とハイタッチをする

「頼むぞ茅場、4番打者の意地を見せろ」

「自信持てよ!茅場!」

「頑張って幸助!」

佐野と川田と七瀬の3人に背中を押され俺はバッターボックスへと向かった。

「しゃす!」

ホームランでサヨナラだ。今までの打席は三振と内野ゴロと当たっていない。

『ストライク!』

初球は外角高めのストレートたしかに球威が落ちてる。

『ボール!』

2球目は内角高めのストレート

「ボール!』

3球目は低めの変化球

打つなら次だなと俺は思った。

ピッチャーがゆっくり振りかぶって投げた。

ボールはすっぽ抜けたのか真ん中のストレート

俺はフルスイングした。

『カキィィィィィン!!』

俺の打った打球はレフトの頭を大きくこえた。

「「「ワァァァァァァァ!!」」」

と歓声が上がる。

今回の試合会場は広くフェンスを越えることはない。ランニングホームランしかない。

俺は一塁、二塁を蹴った!

ボールはセンターが拾い中継のショートへと渡った!

「茅場!!まわれ!!

三塁コーチの指示に従い三塁を蹴った!

ショートからキャッチャーへボールが返球される

俺はホームに向かって思いっきりスライディングした!クロスプレーだ!その時足に痛みが走った

「「「茅場!!」」」

短い土煙のあと審判は叫んだ

『セーフ!!』

「「「「「ワァァァァァァァ!!!」」」」」

歓声は過去最高のものだと思う。

見ると俺の足がホームベースの上にあり、その上に相手のキャッチャーが乗っていた。

「みんな整列だ!!」

川田の号令のもと笑顔のチームメイトが走ってくる。加賀中も同様に泣いている選手や悔しそうな表情の選手が整列を始める。

しかし俺は違和感を覚えた。

「あれ、、、立てねぇ」

痛みはないが、足に力が入らない

「幸助!!」

異変を感じたのか七瀬が駆け寄る

「どうした茅場!?」

七瀬に続いて佐野や古賀が駆け寄ってくる

「、、、立てないんだ。」




*******


診察室を出た俺を待っていたのは七瀬だった。

「、、、幸助」

「骨折だとよ。明日の決勝は無理だそうだ。」

試合の挨拶を終え俺はすぐに病院へ向かった

そして結果は骨折完治は2ヶ月かかるらしい、しばらくは松葉杖だそうだ。

「、、、うぅ」

「なんでお前が泣くんだよ?」

「、、、だって幸助が、、、」

「あら幸助その子もしかして噂の七瀬ちゃん?」

俺に遅れて診察室から出てきたのは母ちゃんだった。

「噂ってなんだよ」

「は、はじめまして」

七瀬は泣いていた表情から一転して驚いた表情をしている。無理もないだろう

俺の母はこの病院で働いてるのだから。

「はじめまして幸助がお世話になってます。それにしても美人さんね、幸助にはもったいないわ」

こいつは何を言ってるんだ

「いや、、、私なんて」

「これからもうちの息子をよろしくね、七瀬ちゃん」

「・・・」

七瀬はうつむいて黙り込んだ。

「どうしたんだ?七瀬?」

「実は姉ちゃんの仕事が決まって再来週に引っ越すことになった」

目に涙を浮かべながら確かにそう言った。

「え?」

俺の頭の中には『引っ越す』という単語だけがずっと残った。




次の日に行われた県大会をかけた決勝で俺たちの学校は惜しくも敗北した。



*******


その日の帰り道、河原で俺と七瀬は座ってゆっくり沈んでいく夕日を眺めていた。

「負けたなぁ」

今日の試合が終わった後のみんなの泣いた顔が脳裏に浮かぶ

「、、、うん」

「俺の野球人生もこれで終わりか、まぁ加賀中に勝てたし、悔いはないかな」

「高校で野球しないの?」

「まぁな、しばらく運動できないしな」

「、、、そう」

「本当に引っ越すのか?」

「、、、うん」

夕日をまっすぐ見つめ静かに頷いた。


「あっここにいた!おーい七瀬!!」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた

「、、、姉ちゃん」

彩瀬さんはゆっくりと俺たちの元へ歩いてくる

「あ、幸助くんもいる」

「どうも、久しぶりです」

「七瀬から聞いた?」

「引っ越すんですよね、、、」

「そう、急でごめんね。あと少しだけど七瀬のことよろしくね」

「姉ちゃん」

七瀬は立ち上がり、彩瀬さんの方を向いた

「どうしたの?」

「、、、私引っ越したくない!」

「どうして?」

「初めて学校が楽しいと思った!初めてこんなに学校に行きたいと思った!あと初めて、、、初めて好きな人ができたから!」

七瀬は泣きながら彩瀬さんにそう言った。

「そう良かったね。でもね七瀬、決まったことは変えられないんだよ?」

落ち着いた口調で七瀬を諭す。

「だったら、また一人で暮らす!お金はバイトでもして自分でなんとかするから!お願い!ここにいたい!」

ー幸助と一緒にいたい!!ー

その言葉が俺の中に響いてきた。

「聞いて七瀬。お姉ちゃんね、七瀬が一人でいるのが一番嫌なの、お姉ちゃんが見てない間にまた七瀬が悪い方へ変わってしまうのが嫌なの。」

「でも、、、」

涙を流しながら七瀬は黙り込んでしまった。

「、、、あの」

「ん?どうしたの幸助くん」

「だったら、うちで一緒に暮らすのはどうすか?1部屋空いてるし、、、なんて、、、言ってみたり」


「「え?」」

姉妹揃って同じような顔して俺を見ていた




ーーーーーーーーーーーー


「え?嘘でしょ?そんな理由?」

「あっははは!!みんなそうなるよね!!」

彩瀬さんはゲラゲラ笑っている

「だから嫌だったんすよ!」

幸助は顔を真っ赤にしてテーブルに伏せた。

その時『ガチャ』と玄関のドアが開く音がした。

「おじゃましまーす!!」

「ただいま」

聞き慣れた幼馴染なつの声と友人ななせの声がする。

「七瀬!!おかえり!!」

彩瀬さんは七瀬を見るなり抱きついた

「えっ!?姉ちゃん?」

七瀬は少し困惑した表情をしている

「なんだ七瀬お前も聞いてなかったのか?」

「、、、聞いてない」

「言ってないもん!サプライズだよ!」

彩瀬さんは満面の笑みでそう言った。

しかし、こうして2人並んで見ると顔は似ているけど性格は真反対だな

「おっと、奈津ちゃんだよね?七瀬の姉の光野彩瀬です。妹がお世話になってます。」

改まって奈津に向かって軽くお辞儀をしながら挨拶をする。

「いえいえ、こちらこそ七瀬ちゃんとは仲良くさせて貰ってます!」

奈津達が来たということは今の時間は15時くらいか

「みんな集まったなら、少し早いけどパーティにしましょうか!」

そう言って幸助のお母さんがテーブルに人数分のコップと皿を持ってきた。

「母ちゃんまだ少し早いんじゃないか?」

たしかに、外はまだ明るいしパーティするには早いかもしれない

「ごめんね、私18時には帰らないと行けないんだ。」

「えっ?そうなの?」

七瀬が少し驚いた表情で彩瀬さんを見る。

「そういうことだから、早く始めましょう」

幸助のお母さんはそう言って再び台所へ戻った。

「うん、仕事が入っててね」

「なんの仕事してるんですか?」

疑問に思った僕は彩瀬さんにそう聞いた。

「弁護士」

「「「え?」」」

七瀬以外の3人から気の抜けた声がする

たしかに七瀬の姉さんだから頭はいいのだろうと思ってたけど

「はい、みんなテーブルの真ん中を開けて」

そう言って持って来たのはケーキだったしかもかなり大きい。

「、、、大きい」

「今ロウソク持ってくるからね」

「それじゃあ電気消すか」

そう言って幸助が立ち上がった。

「15、16、17と」

みんなで分担してケーキにロウソクを立て、火をつけた。それと同時に部屋の電気が消え、ロウソクの火だけが部屋を照らす。

「それじゃあ歌おうかせーの!」

奈津の掛け声とともに、七瀬以外の全員で『ハッピーバースデイトゥーユー』と歌を歌った。

「、、、消すよ?」

そう言って七瀬はふぅとロウソクを消す。

「おめでとう!七瀬!」

「おめでとう七瀬ちゃん!」

各々が七瀬に労いの言葉をかけ、みんなで笑った

やっぱり七瀬の笑顔は素敵だな、なんて思ったのはいつものことである。


******


静かに寝息をたて、すやすやと眠る奈津と七瀬の2人

「ぐっすり寝てるね2人とも」

寝ている2人を見ながら彩瀬さんは優しい口調でそう言った。

「パーティ始まってずっと奈津は、はしゃいでたもんな」

「まったくだ。」

幸助は呆れた表情をしている。

「私ね、幸助くんには感謝してるんだよ?」

「なんでですか?」

「君が約束を守ってくれたからね」

そう言って彩瀬さんはにこりと笑う

「あんなに表情がころころ変わる七瀬は久しぶりに見たよ、ありがとうね」

「別に俺は何も、、、」

幸助は少し申し訳なさそうにそっぽを向く

「何言ってんのさ、七瀬が感情豊かになったのは幸助のおかげじゃないか?僕たちから見てもそう思うよ!」

まぁそのせいで僕にまで被害が出ることがあるけどね。

「ふふ、幸助くんはいい友達を持ったねぇ」

倫太こいつは友達なんかじゃないっすよ、疫病神やくびょうがみです。」

「ねぇ、幸助くん?聞き間違いだろうか?今、僕のことを疫病神と言わなかったかい?」

「言ったが、何か?」

「それはこっちのセリフじゃあボケェ!!表でやがれ!!」

「やんのか!?コラァ!!」

お互い胸ぐらをつかみ合い、睨み合う。

「仲良いね、2人とも」

「「良くない!!」」

「本当かなぁ?あ、そろそろ時間だ。帰るかな」

時計を見るとあと数分で18時になるところだ。

「あら、彩瀬ちゃん帰っちゃうの?」

「すいません、お母さんもう少しゆっくりしたいところなんですけどね」

彩瀬さんは荷物をまとめて立ち上がった。

「また、いらっしゃい」

「はい、七瀬の顔を見にまた来ますね」

僕たちは玄関へと移動した。

「おい、七瀬彩瀬さん帰るぞ」

幸助はリビングで寝ている七瀬をゆする

「いいよ、寝かせてあげて」

「いいんですか?」

彩瀬さんに言われ幸助はリビングから玄関まで歩いてくる。

「うん、元気なところ見れて十分だよ!幸助くん、もう少しだけ、妹のことよろしくね?」

「はい。」

「それから、倫太くんと奈津ちゃんもこれからも仲良くしてあげてね」

「もちろんですよ!」

僕の返事を聞いて、にこりと笑うと

「それじゃあまたね。」と言い残し、彩瀬さんは幸助の家をあとにした。

「なんか、嵐のような人だったね。」

「あの人はいつもあんな感じだからな」

「彩瀬ちゃんも、変わらず元気で良かったわね」

なんか、今日は疲れたなぁ

3人でリビングに戻ると変わらず、奈津と七瀬は寝ていた。そういえば母さんに18時頃には帰るって言ってたんだっけ?

「ちょっとお母さん回覧板渡しに行ってくるわね」

そう言ってリビングに戻るなり幸助のお母さんは早々と家を出て言った

「だったら僕も帰りますかね。」

そう言って、僕は寝ている奈津をおんぶする。

「起こさなくていいのか?」

「今起こしたら、ここが地獄絵図になるけどいいの?」

「、、、どういうことだよ?」

言葉のままだ。

「だったら、近くまで送ろうか?」

「いいよ別に、それよりお前のポケットにあるプレゼント早く渡してあげなよ」

来てから気になってはいたけど、ずっと渡さない感じからしてプレゼントなんだろう。

「気づいてたのか?」

幸助は驚いた表情をしている

「まぁね、お前の疫病神だからね。」

皮肉を混ぜて僕はそう答えた。

「そうか、じゃあな疫病神」

驚いた表情から、一転少し笑い僕達を見送る。

ちゃんと渡せるといいな、なんて思いながら僕は帰路に着いた。


*******

「、、、んぅ」

あの倫太ばかを玄関で見送り、リビングへ戻ると丁度七瀬が起きた。

「起きたか、七瀬」

「、、、あれ?みんなは?」

「帰ったよ」

「、、、そう」

七瀬は少し悲しそうに下を向いた

「俺たち一緒に住み始めて、もう2年が経つんだな。」

「うん。」

「これからも俺と暮らすのは嫌か?」

「嫌じゃない」

七瀬は大きく首を横に振り答えた

「そっか、七瀬」

「ん?」

「目を閉じてくれないか?」

「こう」

俺の言った通り、目を閉じている

「動くなよ?」

俺はそう言って七瀬に近づく。

「俺がいいって、言うまで目を開けんなよ」

「うん。」

ポケットからプレゼントを取り出しそっと七瀬の首元に通した。

「よし開けていいぞ」

「、、、キスじゃないの?」

「ち、ちげぇよ!!」

確かに、誤解を招くような行為ではあったけど。

「え?これって、、、?」

七瀬は自分の首元にあるネックレスに気付いた。

「ほら、前しずくとショッピングモール言った時に、それ欲しそうに見てただろ?」

「、、、知ってたの?」

「まぁな」

七瀬はネックレスに見とれている

「なんだかんだ言って、お前には世話になってるしな、、、その嬉しいか?」

「うん!」

とても嬉しそうな、七瀬の顔を見ると買ってよかったなと心からそう思った。

「そんじゃ俺はシャワーでも浴びて寝るわ」

「幸助!!」

「ん?」

珍しく大きな声で呼ばれ振り向くと、俺の口元に一瞬だけ柔らかい感触があった。

「ありがとう!!」

そう言って七瀬は喜んで部屋へと走っていった。

「たっだいま!!お父さんの帰還だぞ!!」

「・・・」

「おわっ!どうしたんだ幸助!?そんなところに立って?顔すごい真っ赤だぞ?」

「、、、親父」

「ん?」

「空気読め」

「え?お父さんいま何かした!?ねぇ幸助くん!?ちょっと無視しないで!?」


もう今日は寝るか。それにしても熱いな、、、こんなに体が熱いのはきっと夏だからであって、さっきの事とは関係ないはずだ。


そう言い聞かせながら俺は眠りにつくのであった。


34話読んでくださりありがとうございます。

大分長々と書かせていただきました。

次回からいつもの感じに戻るので、これからも何卒お願いします

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