野球少年だった俺と無表情な彼女1(28話)
今日は7月18日天気予報では晴れのち雨とのことなので傘を持ち僕は幸助の家へと向かった。
『ピンポーン』
インターホンの音の後に中から歩いてくる音がする
『ガチャ』
「おう、来たか」
家の中から、僕の友人である幸助が顔を出す
「今日は来てもらって悪いな」
「いやいや、七瀬の誕生日なんだから僕にも祝わせてよ」
そう、今日7月18日は七瀬の誕生日なのだ。とはいえ最近は天使が堕天しかけているのだが、
「さぁ、上がってくれ」
僕の前にスリッパを置き、幸助は部屋の中へ案内する。
「あらいらっしゃい倫太くん、ゆっくりしていってね。」
「どうも、久しぶりです。」
幸助のお母さんが台所で洗い物をしていた
それにしてもおかしい?今日の主役の姿が見当たらない
「あれ?七瀬は?」
「言ってなかったか?美園の家に泊まってるぞ」
「なに⁉︎初めて聞いたぞ⁉︎」
通りで今日は奈津が来ないと思った。
「昼の15時ごろにこっちに来るらしいぞ」
「そっか」
手元の時計を見ると時刻はまだ13時だ
「あと2時間もあるじゃん」
「お前はもう少し遅くても良かったな」
「何か暇つぶしになるものないの?」
僕の言葉を聞き幸助は立ち上がる
「ど、どうしたのいきなり?」
そして彼は拳を握り僕に向かってこう言った。
ー「どうだ一戦しないか?」ーと
、、、一戦?それは僕と戦うということか?
面白い!!僕もお前とは決着をつけておきたいと思っていたところだ!!
「受けて立とうじゃないか!あとで泣いても知らないぞ!!」
ーーーーーーーーーー
「ふんっ!!」
「おい!倫太それは俺が取ろうとしたアイテムだ!!」
「取ろうとしただと?だったらこのボックスにお前の名前でも書いてあるのか⁉︎幸助」
「貴様!あくまで俺にアイテムを取らせないつもりか!なんてゲスなことを!!」
「僕がどれだけこのマリ○カートで奈津を泣かせてきたことか!とくと味わうがいい!!」
僕たちは某カーレースゲームをしていた。
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「ふぅ5戦中3勝2敗か、、、」
一通りレースを終え僕たちは休憩していた。
「倫太お前ってやつは、マリ○カートからアイテムを取ったらただのカーレースじゃねぇか!」
「なにを⁉︎お前だって最後の2レースは僕の戦術をパクったじゃないか⁉︎」
お互い胸ぐらをつかみ合い睨み合う
「やめとこうゲームで喧嘩するなんてバカバカしい」
「そうだね、僕が間違っていたよ」
「分かればいいんだよ」
ちょっとイラッときたが今日のところは抑えておこう
そういえば僕は幸助と七瀬の2人についてずっと気になっていたことがある。
「ねぇ幸助」
「あぁなんだ?」
テーブルに置かれたお茶を飲みながら返事をする
「2人ってさ、どうして一緒の家に暮らし始めたの?」
「・・・」
突然飲んでいた手を止め黙り始めた。
あれ?聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな?でも、学校のみんなも2人が一緒に住んでるの知っているし
「どうして、そんなこと聞くんだ?」
「いや、気になってたんだけど?聞いちゃ悪かった?ごめん」
「いや、いつかは言おうと思ってたからな」
そういうと彼は再びお茶を飲み始めた
「そうだな、どっから話すかなぁ」
ーーーーーーーーーー
それは5月のことだった
その日は朝からクラス内が騒がしかった。
1つだけ空いている席について色々な言葉が飛び交っていた。
「なんでこんな時期に転入生⁈」や「イケメンだったらどうしよう⁉︎」などなど各々が妄想を膨らませていた。
『ガラァ!』教室のドアが開くそしてその向こうから担任の先生が1人の女子を連れていた。
「加賀中から来ました。光野七瀬です。よろしくお願いします。」
その瞬間クラスが騒ついた無理もないだろう、誰が見てもその女子の容姿は優れたものであるからだ。
「おい茅場、加賀中ってあの加賀中だよな?」
斜め前に座っているこの男は俺の所属している野球部のエース川田だ。
「間違いないな」
加賀中には因縁がある、去年俺たちの先輩は県大会をかけた決勝で加賀中に負けたのだ。
「彼女は全国模試で10位圏内に入ったことのある秀才です。ぜひ皆さんも光野さんを見習って勉学に励んでください。」
しかし、あの様子だとガリ勉って感じで野球部の事とか一切知らなそうだな。
「では光野さんの席は彼の隣ですね」
そう言って先生が俺の方を指差す
「いいなぁ!茅場!」
「その席変われよ!」
クラスの男子から敵意の目を向けられる、そんなにもこの女子の隣の席が良かったのだろうか?
俺にはよくわからん
俺の隣で川田の後ろの席に彼女が座る
「俺川田って言うんだよろしく光野さん」
積極的にコミュニケーションを取りにいった
「・・・はい」
彼女のその態度は人見知りというよりかは人を避けているように見える。
その後も休み時間の度に彼女の周りに人が集まるが、彼女の対応は川田に接した態度とは変わらず時間が経つに連れ彼女の周りには人がいなくなってしまった。
放課後練習の時間俺はセカンドの佐野とキャッチボールしていた。
「なぁ茅場」
「どした?」
「おまえのクラス転入生来たんだろ?」
「あぁ来たな」
「女か⁉︎女なのか⁉︎」
「女だよ」
「それもかなり可愛かったぜ!!」
割り込んで入ってきたのは川田だ
「なにー!!」
「あ、おい!佐野!どこ投げてんだよ!」
「すまんつい力んで」
ボールは遥か遠く、フェンスの近くへと消えていった。
「ったくどこまで飛ばしてんだよあいつ」
「、、、あ」
「あ?」
フェンス越しに立っている女と目があった。
「転入生?どうしてここにいんだ?」
「・・・」
彼女は何も言わず校門の方へ走って行った。
「おい茅場まさか今のが噂の転入生か?」
「そうだ、てゆうかボール取りにくるならさっさとこいよ。」
「なぁ、俺たちってさ、二遊間コンビとして今までやってきたじゃないか?」
「何が言いたい?」
「メアド教えてくんない?」
「今日来たばかりだぞ?それにあいつはやめとけ、痛い目見るぞ?」
「えぇー!なんでだよ!」
「さ、練習戻るぞ」
この日から俺と七瀬の関係は少しずつ進み始めることになる事をこの時の俺はまだ知らない。
今回の話は長くなります。




