時を戻せる僕と海の家3(27話)
開店から1時間が経ち、客足は今日一番のピークとなっていた。
「りんちゃん!五番テーブル空いたよ!」
「4名でお待ちの佐藤様、五番テーブルへどうぞ!」
「倫太、三番テーブルのお客さんの会計お願い
私は片付けるから」
「わかった」
僕らの仕事ぶりはかなり手馴れたものになっていた。
「杉本くん」
「どしたの?鳴海さん?」
「笹田くんの元気がないんだ、何か知らないか?」
「え?」
そう聞いて外の笹田を見るといつも通りの様な気がするけど
「気のせいじゃないの?あいつ人見知りだから静かなだけでしょ?」
「それもそうだな!それでは引き続き杉本くん、頑張ってくれ」
「鳴海さんも客寄せ頑張って」
「もちろんだ!どんどん連れてくるぞ!」
そう言うと彼女は自分の持ち場へと帰っていった。
「倫太!!」
幸助の声だ。
「なに?」
「米がなくなった!!」
驚きの報告だった。
「ええっ⁉︎どうすんの⁉︎さっきチャーハンの注文受けちゃったよ!」
「何番テーブルの客だ⁉︎」
「八番テーブルだよ!」
そっとそのテーブルの方を見る幸助
「八番か、、、」
幸助は冷蔵庫から何かを取り出した。
「しょうがないこれを持ってけ!」
そう言って彼が置いたものはなんだろう、、、 犬の餌だろうか?
「これなに?」
「チャーハンの米なしだ。」
「僕はこれをなんて言って出せばいいの?」
ただでさえ、外見が酷いのに冷蔵庫に入っていたから冷えきっている。
「いいか、今から俺が言う通りに言ってみろ」
ーーーーーーーーーーーー
「お待たせしました!」
『コトッ』と食器が音を立てる
「これ俺達が頼んだのと違うんですけど?」
「そうよぉ!ねぇ店員さんなにこれぇ?」
案の定、カップル(男女とは言ってない)2人から質問がきた。
「誠に申し訳ございません、ただいまお米の方を切らしておりまして」
「だったらぁこれなによぉ」
恐らく彼女である方が言い寄ってくる。
髭が濃ゆくてすごく気持ち悪い、あと筋肉質
「はい!なのでこちらは『チャー』になります。」
「チャー⁉︎そんなもん出しておいて俺たちから金とんのかよ‼︎」
彼氏である方が狂犬のように迫ってくる
「あ、安心してください!代金の方は二割引きますので!」
「八割とんのかよ!!おい美智子こんな店出ようぜ!」
「たかし!あたしぃこの店員さん超タイプなんだけどぉ!」
2人揃ってめちゃくちゃ髭が汚い
「あっはは、冗談は顔だけにしてくださいよ、お客様」
「なんだとオラァ!てめぇ表出ろや!」
そう言って僕は片方に胸ぐらを掴まれた。
「おい落ち着け美智子!」
美智子怖ぇぇ!
「ちょっ!お客様⁉︎暴力は困ります!」
「テメェが売った喧嘩だろうが!!男なら堂々としろや!!」
その姿はオネェとは程遠く『漢の中の漢』というべきだろうか
ーーーーーーーーーー
「どうだったか?倫太?」
「めちゃくちゃ殴られたんだけど?すごく痛かったんだけど?美智子パないんですけど?」
「、、、だろうな(ボソッ)」
ん?なんか聞こえたような気がしたんだけど?
「僕の気のせいだろうか?君はこの状況になる事をわかってあんな事をさせたのかい?」
「いや、普通気づくだろ」
曇りのないこの表情が僕の怒りを有頂天にさせる
「んだとコラァァァ!!」
「ちょっと何やってるの2人とも!」
「「ま、真美さん⁉︎」」
風邪で寝ていたはずの真美さんの姿がそこにはあった。
「早く仕事に戻りなさい!」
「いや、真美さん⁉︎さっきあなた風邪で寝てましたよね?」
「そんなもん、寝たら治るわよ」
「...箱庭家の血筋は化け物だな」
「って!すごい人がいるじゃない!!」
厨房から出てきた真美さんの第一声がこれだ。
「私の店にこんなに人がいるの初めてだわ!」
「あの盛り上がっているところ申し訳ないんですが?」
「ん、なに?」
「米がなくなったんですが、どうすればいいすか?」
すごく申し訳なさそうだ。なんで僕にその態度ができないんだろうか?こっちは殴られたんだぞ?
「本当⁉︎完売間近なのね!?」
「え?いいんですか?」
「私今まで完売した事なかったのよ!」
「さぁ!あと少し頑張るわよ!!」
その後真美さんの加勢により店内のまわりは良くなり海の家「ハコニワ」の商品は1時間程で完売した。
「カンパーイ!!」
『プシュ!』
座敷に座りみんなで缶ジュースを開ける。
「お疲れみんな!いやぁ今日は高校生に助けられちゃったなぁ!」
「いやぁ疲れたなぁ!」
「幸助のコーラが欲しい。」
「はぁ?お前がオレンジジュースがいいって言ったんだろ⁉︎」
「幸助の口づけほやほやが飲みたい。」
「いい方が生々しいんだよ!!」
「風松くん?君も私の口づけが欲しいかい?」
「い、いらん!...どうしてもというのであれば飲んでやらんこともない」
「ねぇりんちゃん」
「ん?」
「澄乃ちゃんは?」
「さっきジュース買いに行った時にトイレ行くって言ってたけど?」
「遅くない?もしかして、誘拐とかあってたりして、、、」
たしかにジュースを買いに行ったのは15分くらい前のことだけど
「笹田、、、」
ふと1時間程前のことを思い出した。
ー『笹田くんの元気がないんだ』ー
鳴海さんの言葉が頭をよぎる。
「ん?どうした倫太?急に立ち上がって」
「どっか行くの?」
「ちょっとトイレ!!」
ーーーーーーーー
「はぁ」
私って勉強も運動もできないし、本当になにやってもダメだなぁ、前に倫太くんに撮影の協力を無理やり付き合わせちゃったからそのお詫びに手伝おうと思ったのに
「看板もろくにできないなんて、、、」
『ねぇお嬢ちゃん!この店どんなの売ってんの?』
『・・・ない』
『お嬢ちゃん?』
『貴様などに売る商品はないと言っておる!』
『ええええ⁉︎』
『分かったらとっとと帰れ!!』
『ちょっと!笹田くん⁉︎』
、、、なんで追い返しちゃったんだろう。
浜辺を歩きながら海を見つめ、今日の出来事を振り返る。
結局足手まといだ、みんなに合わせる顔がない。このまま帰っちゃおうかなぁ
「ねぇお嬢ちゃんかわいいね」
「お兄さんたちと遊ばない?」
「え?いや、あの」
誰だろうこの人達
「俺君みたいなかわいい子大好きなんだよね?」
「ちょっとでいいからさ」
「ご、ごめんなさい、、、私友達と来てるんで」
とりあえず、離れなきゃこの人たちから
「待ってよ!ちょっとでいいって言ってんじゃん!」
走り出した時、私の手を掴まれた。
「は、離してください!」
「君みたいな子を見てるといじめたくなっちゃうんだよね」
力が強い、、私の力じゃ振り払えそうにない
「あの、その子離してもらっていいですか?」
その時背後から聞いたことのある声がした。
「あぁ⁉︎誰だテメェ?」
「誰かと聞かれたら、、、そうですね」
私はゆっくり振り向いた。その時彼はこう言った
ー「僕はその子の眷属です。」ーと
「はぁ?眷属ぅ?だーはっはっは!!」
「腹いてぇ!なに⁉︎お前中二病ってやつか?」
『ドスゥ!』
「ぐぇぇ!!」
倫太くんの拳が私を掴んでいた人の鳩尾にはいり、その場にうずくまる。
「大丈夫か笹田?」
倫太くんに引っ張られた勢いで胸元へと体を寄せてしまう。涙が出てきた。怖かったというのもあるけれど、また倫太くんに迷惑をかけたと思うと辛くてしょうがなかった。
「おいおい、覚悟はできてんだろうなぁ!!」
もう1人の男の人が大声で襲いかかってくる
「笹田離れて」
それは一瞬だった。男の人は殴りかかった態勢から宙に舞い地面に叩きつけられる。
「ふぅ」
ひと段落を終え彼は1つ溜息をついた。
「いた!」
私の頭に思いっきりげんこつをした。
「全くお前は!探すの大変だったんだぞ⁉︎トイレにいないし、周りの人に聞いたら浜辺の方を歩いていたって聞いたから急いできてみれば」
やっぱり私は迷惑をかけた。
「、、、ごめんなさい」
「でも、無事でよかったよ」
「・・・」
「ほら、帰るぞみんな待ってんだからな」
「、、、帰らない」
「どうして?」
「私がいない方がみんな楽しいし、それに私はみんなの邪魔をするだけで、役に立たないし」
「そんなことで悩んでたのか?」
呆れた顔で彼は続けた。
「お前をいらないなんて思ったやつはクラスにもここにもいないぞ?」
「嘘だ!!」
「嘘じゃない」
「だって私は何もできないし!クラスのみんなにも迷惑かけてばっかりだし!!」
「僕は知ってるよ、人見知りのお前が休んだ人のために板書したノートとプリントを家まで届けたりしてることや、部活が忙しい人の委員の仕事を引き受けたり、妊婦の先生の荷物を運んだりもしてること。」
そんな事誰にも言ったことなんてかった。
「なんで?、、、なんで知ってるの?」
「クラスのみんなはお前に感謝してんだぞ?お前自身がどう思ってるのかは知らないけど、僕たちはお前の事を『必要』だと思ってる。」
『必要』その言葉を聞いた途端涙がさらに込み上げてきた。
「それに笹田をいじらないと僕調子出ないんだよね」
「す、すまないな眷属、、、少しだけもう少しだけここにいる事を許せ。」
「はいはい、落ち着くまで泣いてどうぞ」
それからしばらくの間倫太くんの胸の中で私は泣き続けた。
ーーーーーーーーーー
「あ、りんちゃん帰ってきた!」
「笹田くんも一緒だな」
「2人ともどこ行ってたの?」
奈津と鳴海さんと七瀬の3人が海の家の外で出迎えてくれた。
「心配をかけたな!我が下部達よ」
「あぁ、ちょっとね、ってあれ?男2人は?」
「そろそろ帰るから荷物まとめてるよ」
「え!もうそんな時間⁉︎」
手元の時計を見るともうすぐ17時になるところだ
「なにかしたいことでもあったの?」
僕の悔しがる表情を見たのか奈津が質問してくる
「もっと水着ギャルをおが、、、」
僕の欲望を言った瞬間、一瞬だが奈津の表情が放送できないくらい怖いものになっていた。
「なんでもないです。」
「お、帰ってきたか」
中から幸助と風松が荷物を持って出てきた。
「お前らどこをほっつき歩いてたんだ?」
「まさか、Mr.杉本貴様だけ水着ギャルを堪能したんではないんだろうな?」
全くこいつはそんな事を言ったら奈津が誤解するじゃないか?
「も〜風松言葉には気をつけてよ〜取り返しのつかない事になるよ?」
「まさか、そんなことしてないよね?りんちゃん?」
水着ギャルとは関係ないが実は笹田が泣いていた時、笹田の小さい胸の感触を堪能しようとしてたなんて言えない、、、
「さ、さぁ!駅まで競争だ!!」
「ちょっと待てよ倫太!」
「杉本くん!まだ真美さんに挨拶してないぞ⁉︎」
「いいではないかMs.鳴海、新幹線の時間はもう10分しかないんだぞ?」
「えっ!そうなの⁉︎風松くん」
「どうしたの澄乃?立ち止まって新幹線来るわよ?」
私のことを必要としてくれている友がいる。今の私にはそれだけで十分だ。
「フン!貴様らにハンデを与えたまでだ!我の超加速について来れるかな⁉︎」
だから、私にできることを精一杯しよう!!
「あ、ちょっとあなたたち⁉︎待ちなさい!まだなんのお礼もできてないじゃない!、、、ってもう見えなくなっちゃったわ、、、さすが兄さんの教え子ね感心しちゃうわ。」
「しかし、すごい売り上げね、また来年も頼んじゃおうかしら」
ーーーーーーーーーーーー
行きとは違い、疲れが相当出たのか帰りはみんな眠ってしまっていた。
「ねぇ幸助?」
「、、、なんだ?」
彼は肘をつき目を閉じながら返事をする。
「自分は必要とされてないって思ったことある?」
「、、、どうした急に?」
幸助は少し思いあたる節があるような表情をした。
「いや、やっぱなんでもない!今日は楽しかったね!」
「そうだな、疲れたし俺は寝るぞ」
「僕も疲れたなぁ少し寝よう」
来年もまたみんなで来れたらいいなぁ、そんなことを思いながら少し揺れる新幹線の中、僕はそっと目を閉じた。
設定メモその1.倫太くんは中学生の頃、格闘技を少しだけしていたらしいよ。




