表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間やめても君が好き  作者: 迷子
四章 孤高の氷狼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/141

あれこそが獣だよ



 冷たい風が入り込む、暗く、狭い洞窟の中。

 その奥で焚き火を挟んで、六つの人影が向かい合っていた。


 洞窟の奥に居るのは、アメリア、フィーリア、エドガーの三人。エドガーはアメリアの足元から顔を出し、フルフルと震えている。


 そんなエドガーを背に庇いながら、アメリアは厳しい表情で敵と相対している。フィーリアも怯えているようであったが、それでもキッと強く睨みつけている。


 そんな三人を塞ぐように、洞窟の入り口側にラッシュ、ジーナ、ネコタが立っていた。

 仲間に向けるものではない憤怒の表情で、アメリアとフィーリアを見ていた。

 その中でも比較的冷静なラッシュが、厳かに口を開いた。


「大人しくそいつをこっちに渡せ。そうすれば、お前達のことは許してやる」


「駄目、エドガーは渡さないっ」

「そっ、そそそそっ、その通りですっ! エドガーさんは渡しません!」


「フィーリアさん。お願いですから、言うことを聞いてください。今がどういう状況なのか、分かるでしょう?」


 聞き分けのない子供に言い聞かせるように、ネコタは言った。どこか悲しそうですらあったが、手は聖剣に添えられている。その矛盾に背筋が凍りつくような恐怖を感じる。


 しかしそれでも、フィーリアは譲ろうとはしなかった。


「だ、駄目ですっ! どうしてもと言うなら私を倒してからにしてくださいっ!」

「よく言った。いい度胸だ。せめて苦しまずに寝かせてやる」

「ひぃっ……!?」


 ジーナの殺気に、フィーリアは思わず後ずさる。さすがに殴り合いに長けた女からの殺気に耐えられるほど、温室育ちのフィーリアは強くはなかった。

 それを見て、エドガーは悲しげに、そして優しげに首を振った。


「いいんだ、二人共。もういいから。二人が傷つくのは見たくないんだ。だから――」

「そんなの駄目だよ! エドガーを渡して私達だけ助かるなんて、そんなのっ!」

「そうですっ! そんなことするくらいだったら死んだ方がマシです!」

「アメリア……フィーリア……!」


「茶番もいい加減にしろよこら! マジで殴り殺してやろうか!?」


 血走った目をするジーナを見て、ウサギは神妙な顔で頷いた。


「見てみろ、フィーリア。理性を捨て、欲望のままに行動する……あれこそが獣だよ。ウサギの俺なんかより、よっぽど獣だ。あんな風にだけはなっちゃいけねぇぞ」

「ウサギィ! テメェ、マジで殺すぞ!」


「来るなら来い、受けて立つ! このエドガー! たとえ兎の身であろうとも、人の心だけは絶対に失わない! 貴様らのような獣には断じて屈さぬっ! 正義は我にあり!」


「いいだろう。なら望み通りにしてやるよ」

「んぁあああああ〜!?  ア、アメリアァ……!」


「ああっ、エドガー!? ッ、エドガーを離して!」

「そうです! 離さないというのなら……!」


「ちょっ、待て! こんな場所で魔法や精霊術なんて使ったら……バカッ! 本当にやめろ!」

「ふっ、二人とも落ち着いて! ジーナさんも一旦ストップ! ストップで――ぎゃあああ!」


 ……完全に、いつだったかに見た光景と全く一緒であった。

 世界を救うべく動く勇者一行は、今日も今日とて楽しそうに仲間割れをしていた。

 なぜ今回も争っているのか? それを語るには、一ヶ月ほど前までに時間を遡る。




 ――もはや鉄板である。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ