余計なことを言っちまったかな?
「申し遅れました! 私が族長を務めております、オフィーリアの父、クレイドです! こちらが私の妻であるアルナに、私の娘で、オフィーリアの姉でもあるフィリスです! どうぞよろしくお願いします!」
「アルナです! まさか兎人族の方とお会いできる日が来るなんて! フィー、偉いわ! よくぞ連れてきてくれました!」
「は、はいっ。恩人ですし、エルフとして当然ですからっ」
「フィリスです! フィーを助けていただいたそうで、本当にありがとうございました! どうぞゆっくりしていってください」
「お、おう。ありがとうよ。それじゃあ遠慮なく寛がせてもらおうかな」
エドガーを見たクレイド、フィリスの両名は、人が変わったような反応を見せた。クレイドは大きな声で驚いたかと思うと、すぐに大声で妻のアルマを呼び出し、そのアルマもまたエドガーを見て嬉々として駆け寄ってきた。
そして貞淑そうな美女であるフィリスは、年相応な笑顔を見せ嬉しそうにエドガーの手を握った。
フィーリアやこの里のエルフもそうだったが、異常なまでの歓迎のされ方である。正直、ここまでされると何か裏があると疑ってしまうエドガーだった。好意を信じきれない汚れた自分がちょっと悲しい。
「さぁ、こんな所で立ち話もなんですし、どうぞ中へ! すぐにお茶をご用意させますので!」
「あ、ああ。じゃあ頂こうかな」
頑固そうな権力者の顔はどこへ行ったのか。エルフらしく、若々しい好青年のように見えるクレイドに案内され、エドガーは家に上がった。
おそらくは客室なのだろう。連れられた部屋には、高さのあるテーブルと、椅子が四つ置かれていた。
迷いなく上座である椅子を引き、クレイドは言う。
「さぁ、エドガー殿。どうぞこちらへお座りください」
「ああ、ありがとう。でも、椅子が四つしかねぇが」
「ご安心ください。すぐに変わりの椅子を用意させますので。すまないがフィー。それまでは」
「はい、もちろんです。エドガー様、ご遠慮なく」
言われるまでもないとばかりに、フィーリアはエドガーの椅子の後ろに控える。
それならばと、エドガーは遠慮なく椅子に飛び乗った。
「……前が見えん。ちょっと高いな」
「も、申し訳ありません! おい! もっと高い椅子を持ってきなさい!」
エルフ用だからか、エドガーの背丈には合わなかったようだ。正面から見るとテーブルから耳が飛び出し、顔が見えない。向かい側に立っていたアルナ、フィリス母娘はその可愛さに悶えていた。
「族長。大丈夫だぞ。俺なら気にしないからな」
「いや、そういうわけにも……」
「大丈夫だって。おい」
ちょいちょいと、エドガーはフィーリアに椅子を指す。
フィーリアは首を傾げた。
「えっ? あの、エドガー様?」
「いいから、はよ座れ」
「えっ!? あ、あのっ……!」
恐縮しオロオロとするフィーリアを、グイグイとエドガーは押す。フィーリアが椅子に座り、うむと頷くと、エドガーはピョンとフィーリアの膝の上に飛び乗った。
「きゃん! あわっ、わわっ!? エドガー様っ!?」
「おい、落ちる。もう少し深く座れ」
「ええっ!? ですがその――あんっ!」
フィーリアの膝に深く腰掛け、大きい胸を搔きわけるように後頭部を埋める。そして両手を自分の腹に回させて、しっかりと固定させる。
ふかふかの感触と暖かさに、エドガーはホクホク顔で言った。
「うむ、これでよし」
「あっ、あわわっ! あの、エドガー様? こんなことをしなくても、新しい椅子をご用意しますけど……」
「要らん。これでいい。むしろこれがいい」
「そ、そうですか? エドガー様がそう言うなら……えへへっ」
安心したように笑うと、フィーリアはぎゅっと抱きしめ、毛皮の感触にひたる。その分、エドガーも至福の感触を味わっていた。世の男性が見たら血涙を流さんばかりの待遇であった。
引き攣った表情を浮かべ、クレイドは言う。
「よ、よろしいのですかエドガー殿? フィーが言ったように、他の椅子をご用意することも出来ますが」
「うむ、これで十分だから気にしないでくれ」
「は、はぁ。エドガー殿がそれでいいのならいいのですが……本当にフィーでよろしいので?」
「何か問題でもあるか?」
「い、いえ。エドガー殿が望むならそれでいいのです! まったく問題でもありませんとも!」
「まぁ、お二人はもうそんなに仲がよろしいのですね! 光栄ね、フィー。しっかりと支えてあげなさい」
「はいっ! もちろんです、お母様!」
「あの、エドガー様? フィーではなく、私の膝でも構いませんよ?」
「いやぁ、流石に出会って間もない女の膝を借りるのはなぁ。俺が遠慮しちゃうっていうか」
「そ、そうですか。残念です……」
しょんぼりとした顔を見せるフィリス。よっぽど妹が羨ましかったらしい。
自分でやっておいてなんだが、どれだけ好きなんだとエドガーは思う。ちょっと狂信染みてないか?
「しかしまぁ、里を歩いていた時も思ったが、この里のエルフはよっぽど兎人族が好きなんだな。こんなに偉そうな奴を歓迎するくらいだもんな。俺ならぶっ飛ばしてるぜ」
自覚があるのだから、なおタチが悪い。
しかし、クレイドは当然とばかりに頷いた。
「もちろんですとも。私たちエルフにとって兎人族は特別な存在ですゆえ。無碍な扱いはできません」
「ふむ? エルフと兎人族は何か関わりがあるのか? そのあたりのことは全然知らなくてな。理由も知らず好意を受けるのも申し訳ない。よければ教えてもらえないか?」
エドガーがそう言うと、クレイドは目を丸くした。
「なんと、そうだったのですか?」
「ああ。もしかして、余所者には話せない秘密だったりするのか?」
「あっ、いえ。確かにエルフの起源、文化に関わることですが、秘密という訳ではありませんので。エルフが兎人族を神聖視するのは、信仰が理由です」
「んん? 信仰というと?」
「エルフが崇める神。【森と獣の神ブディーチャック】ですよ」
「──ああ。そういう」
一瞬、違和感を感じ、クレイドは尋ねた。
「エドガー殿? どうかなさいましたか?」
「いや。ちょっと思ってもみなかった名前が出たもんでな。なんでもない、続けてくれ」
「はぁ、そうでしたか。これは知っているかもしれませんが、我々エルフは森と共に暮らす種族です。
必然というべきか、だからこそ、森と獣を司る神──ブディーチャックを信仰しています。
そして我々の間でウサギは、時にブディーチャックの使いとして現れると伝わっています。その為、同じウサギの種族である兎人族は、我々からすれば崇める対象になる訳です」
「ははぁ、なるほどなぁ」
一族で崇められている、いわゆるアイドルな訳だ。それならば、あの憧れの瞳には納得である。
「兎人族もブディーチャックの使いと象徴される存在に近い種族として、そのことに誇りを持っているはずでしたが……正直驚きました。エドガー殿は知らなかったのですね」
「ああ。ブディーチャックのことは知ってたし、ウサギがブディーチャックの使いってのはまぁ、なんとなく思い当たるけどな。エルフとの関係までは教えられなかった」
「なるほど、兎人族にエルフとの関係を知らない氏族があったのですか。……私が知る限りそんな氏族は聞き覚えがないのですが、エドガー殿はどちらの氏族の方で?
兎人族はエルフ以上に希少な種族。失礼ながら、私が知らない氏族が居るとも思えないのですが」
スッと、クレイドの瞳が細まる。すると、エドガーはどんよりとした空気を纏った。その変わりように、クレイドは狼狽する。
「ど、どうかなされましたか? 私は何かおかしなことでも……」
「いや、なんでもねぇさ。ただ、そいつは聞いても意味がないことだから、どうしたもんかと思ってな」
「意味がない、とは?」
「なに、単純なことだ。……もう、故郷には帰れなくなっちまってるからな」
部屋に居た全員が息を飲んだ。エドガーはそれに気づかないように、ズズッと出されたお茶を飲んでいる。だが、その身から発せられる空気は変わりない。
この場に居たエルフは皆、なぜ兎人族が希少なのか、その理由を思い出した。フワフワの愛らしい毛並みに、人の言葉を理解する種族。それは、ある点ではエルフの美女以上に希少な価値。愛玩動物として、兎人族は幾度も狙われた歴史を持つ。つまり、エドガーの故郷、氏族は……!
「エドガー殿、それはつまり」
「……悪いな。出来れば、もう思い出したくないんだ」
「──ッ! あなた、もういいのではないですか?」
「そうですよお父様! 無理に聞き出さなくても!」
キッと、アルナ、フィリス母娘はクレイドを睨みつける。
最愛の妻と娘に責められ、クレイドは慌てて言った。
「わ、分かってるっ。儂とて無理に聞き出そうとは思っておらんっ。エドガー殿、申し訳ない。嫌なことを思い出させてしまった」
「いや、大丈夫だ。気にしてねぇよ」
「エドガー様……」
「本当に大丈夫だよ。なに、昔の話だ。俺も大人になった。仕方ないことだと割り切って居る。今は楽しくやっているしな。ただ、ちょっと思い出し掛けちまっただけさ……」
「──ッ!」
寂しげに笑うエドガーに耐えきれず、フィーリアはさらに強く、優しくエドガーを抱きしめた。使用人を含め他のエルフ達も、痛ましそうにエドガーを見ている。
憐憫の目で見られながら、エドガーは思った。
ハハッ! こいつらマジちょろい! 紛れもないクズである。
エドガーの内心も知らず、クレイドは気遣うような笑みを見せる。
「エドガー殿、好きなだけこの屋敷に滞在なさってください。できる限りのおもてなしをさせて頂きますので」
「ん? いいのか? なんだか悪いな、そこまで言わせちまうなんて」
「もちろんですとも。それどころか、エドガー殿が気にいってくださったのなら、この里で暮らすことも一向に構いませんとも」
「ははっ、そこまで言ってくれるのは嬉しいが、流石にそりゃ無理だろ。隠れ里で余所者が住人になるなんて」
「何を仰います。他の種族ならいざ知らず、兎人族の方なら里の者も喜びますとも。なんならば、娘のフィリスをエドガー様に嫁がせましょう。フィリスの夫となれば、文句なく里で暮らせるでしょう」
「おっ、お父様! 急に何を言うのですか! エドガー様が困ってしまいます!」
顔を真っ赤にして、フィリスはクレイドを窘めた。だが、口ではそう言いつつも、あながちまんざらでもないらしい。恥ずかしそうに目を伏せ、チラチラとエドガーに目をやっている。
「はははっ、ありがたい話だが、俺よりもフィリス殿が困るだろう。族長の娘となれば、婚約者か恋人の一人くらい居るんじゃないか?」
「──ッ! い、いえ! 私にはどちらも居ませんので! それに、エドガー様ならば構いませんっ! それどころか、むしろ……!」
にやける頬を手で押さえながら、期待するような目を向けるフィリス。
娘を援護するように、クレイドが続けた。
「エドガー殿がよろしければ、是非とも貰ってやってくれませぬか?
娘自慢になるが、こう見えてフィリスは里一番の美貌の持ち主と言われ、気立ても良い。実際、求婚者が後を絶たぬほどなのです。
それでも所帯を持たぬのは、不出来なフィーを心配してのこと。本来ならとうに子を持っても良いのですが、私が言っても頑なになって聞かず。
ですがエドガー殿が貰ってくれるというのならば、今まで手放さなかった甲斐があったというもの」
「……お父様。フィーは不出来な娘ではありません。とても優しく可愛らしい子です。ただ、フィーの良さに気づかぬ男性の見る目がないだけです」
「いや、儂とてそれは分かっておる。だがな、やはりいくら中身がよくてもある程度の美貌がなければ……」
「おい、いいのかお前。あんなこと言われてるぞ?」
「いいんです。もう慣れてますから……お父様も私のことに関しては頑張ってくれてるんです……」
「ふぅん、大変なんだなお前も」
シクシクと涙を流すフィーリアに、エドガーは同情した。
「それに、エドガー様とお姉様ならお似合いですし……」
残念そうに笑いながら、ぎゅっとエドガーを抱きしめるフィーリア。少しでも長く、こうしていたいと思った。
「どうでしょうかエドガー殿。是非とも考えては頂きませぬか?」
「もう、お父様ったら。エドガー様、気にしないでください。ですが、エドガー様が望むなら私は……」
「んー、本当にありがたい話だが、俺はまだやることがあるからな。一箇所に留まる訳にはいかねぇんだ。悪いな」
「そうですか。それは残念ですな」
「ええ、本当に。ですが、私はエドガー様ならば構いません。エドガー様のやることが終わって、落ち着いて暮らしたいと思ったのならば、いつでも構いませんので私と――」
「あと、もし貰うんだとしても、どうせならフィリス殿よりフィーリアの方がいい」
『えっ?』
「えっ!?」
三人は唖然としてエドガーを見た。
フィーリアは顔を真っ赤にしてエドガーを見た。
固まっていたクレイドは、作り笑いを浮かべて言う。
「……エ、エドガー殿はフィリスよりフィーの方がお好みで?」
「どちらかと言えばな」
「そ、そうですか。いや、エドガー殿が良いのであれば喜んでフィーを差し上げましょう。なぁ、アルナ?」
「ええっ! エドガー様がフィーを貰ってくれるならこれほど喜ばしいことはありませんわ!」
クレイドは引き攣った顔をしていたが、アルナは目を輝かせていた。不出来とはいえ、長女と同じく自分にとっては可愛らしい娘だ。将来を心配していた母親としてはこれ以上喜ばしいことはない。
そして、それはフィリスも同じだ。可愛い妹に好意を持ってくれているなら、嬉しくないはずがない。ないのだが……。
「よ、良かったわねフィー。エドガー様にそう言ってもらえて。正直羨ましいわ」
「あ、あわわわっ! エ、エドガー様? ほ、本当に……?」
「あくまで例え話だよ。本当に貰う気はないから安心しろ」
「そ、そうですか。でも、それでも嬉しいです……」
口元を綻ばせ、えへへとフィーリアはエドガーを抱きしめる。そして、エドガーは気持ち良さそうにそれを受け入れていた。
なんともお似合いの姿だ、とフィリスは思う。そう思っている、はずなのに……なんなのだろう、この胸のざわめきは?
「本当に気に入って頂けているようですね。差し支えなければ、なぜフィーの方がいいのかを聞いても?」
間を持たせる世間話であったが、純粋な興味が湧いたクレイドの問いだった。
んー、と。エドガーは特に深く考えず答える。
「まぁ、単純にフィーリアの方が好みかなって話だな」
「そうなのですか。ですがその、こう言ってはなんですが、美貌で言えばフィリスの方も負けておりませんが」
クレイドの言葉に、フィリスはコクコクと頷いた。別に主張するつもりもないが、それは事実だと思っている。
負けていない、とは控えめな言い方だ。それどころか、美醜で言えば圧倒的にフィリスの方が勝っている。だからこそ、いまひとつ得心がいかない。
「まぁ、フィリス殿は美人だと思うぜ。それは間違いない」
「でしたら、何故?」
「美人だが……美人過ぎてなぁ」
「は?」
「あまりに綺麗に整いすぎて、美人を見ているっていうより、なんというか芸術品を見ている感覚になるんだよな。それが恐れおおいというか、異性を見る感覚にならないんだわ。エルフの美的感覚はフィーリアから聞いたから知っているけど、あくまで俺の感覚にそぐわなかったという話だな」
「あ、ああ。なるほど。そういう話ですか」
「その点、フィーリアはエルフの美的感覚から外れてるらしいが、俺らからすりゃ愛嬌のある美少女だからな。可愛いって思うのは間違いなくこっちだわ。あとはまぁ、下世話な話だがスタイルも、な」
「スタイル、ですか? 失礼ですがフィーは、その、女としては少々ふっくらとし過ぎているかと……」
「俺、痩せてて胸と尻はでかい方が好きなんだ。こいつは中身はともかく、外見は完璧。見た目だけなら、正直こいつより良い女を俺は見たことがないぜ」
「そ、そうでしたか。それなら仕方ないですね……」
価値観の違いが出てしまったという話だ。こればかりはどうしようもない。
そう、どうしようもないと分かっているはずなのに……フィリスはなんとも言い難い気持ちに襲われていた。
幼い頃から、美しいと讃えられてきた。里で一番と言われ、鬱陶しくも誇らしい気持ちがなかったといえば嘘になる。
だがそんな他人の評価など、なんの価値もないとフィリスは思う。他人からどう思われようが関係ない。それよりも大事なのは、自分が好いてもらいたいと思う相手に好かれることで……。
いえ、いえっ! 駄目よ私! そんなことを思っては駄目っ! 可愛い妹が幸せになれるかもしれないのだから、そんなことを思っては駄目!
ちらりと、フィリスはフィーリアを見た。顔を真っ赤にさせて、あわあわと慌てている。なんと可愛らしいのだろう。こういう可愛いところがあるから、いくら周りからなんと言われようと、フィリスは妹を愛おしく思ってきたのだ。この子の良さを、誰かに分かってもらいたいと思いながら。
そう思えば、フィリスは自然と柔らかい笑みを浮かべていた。
「良かったわね、フィー。エドガー様に気に入ってもらえて」
「えっ――!?」
フィーリアは半ば混乱状態にあった。
憧れの兎人族の男性に、美少女と呼ばれる。これはフィーリアにとって、夢のような出来事だった。それも、里で一番の美女と呼ばれる敬愛する姉を差し置いて。
それはなんとも誇らしくもあり、嬉しくもあり……それでいて、申し訳ないような気持ちだった。
自分と同じく、姉がエドガーに好意を持っていたのは分かっていた。それなのに、自分が喜んでしまってもいいのか分からなかった。
喜びよりも、むしろ遠慮や恐縮の方が大きかった。そんな複雑な気持ちだったからこそフィーリアは――引き攣った、ぎこちない笑みを浮かべることしか出来なかった。
「えっ、えへへっ……」
「——————ッ!」
それはまるで、相手を小馬鹿にするような、余裕の笑みに見えた。
ドロドロと煮込んだような真っ黒な感情が、フィリスの胸の内で蠢いた。
気持ちのすれ違いとは……かくも悲しいことである。
「なっ、なんなのかしらこの気持ち……? こんなこと、今まで一度も……駄目っ、駄目よ。フィーは可愛い妹なんだから……ちゃんとおめでとうって……!」
「ね、姉様? あの、私……!」
「駄目っ! 今は駄目よフィー! お願いだから何も言わないで!」
「姉様ーっ!」
どうやら、無自覚に美しい姉妹愛に致命的な亀裂を植えつけてしまったらしい。なんとも罪深いウサギである。
「なんだかなぁ。余計なことを言っちまったかな?」
「ま、まぁ娘達も年頃なので。ところで、エドガー殿はこの森には何をしに? どうやらこの里を尋ねに来た、という訳ではなさそうですが」
「ああ、そういや本題がまだだったな。いや、実はな――」




