同業者
「きっ……如月、君!?」
「葵子ちゃん!?」
あまりにも突飛な再会に2人とも目を見開いて立ち尽くす。
そしてしばらくそうしていると、ルチアが公園に飛び込んできた。
「ん、いたいた! ……お? 同業者?」
「ル……ルチア! おい、同業者って、どういう……もしかしてモルテは、俺だけじゃないのか……?」
「ごめんね言い忘れてた! そうそう、そっちの子もモルテだね」
「は……?」
雅臣が絶句しても、ルチアは淡々と続ける。
「雅臣……アルバニアが一体世界に……日本に何匹いると思ってんの? とても君1人で捌ける量じゃない。不幸なことに日本には未練を残して死ぬ人が多くてね」
「如月君も……モルテ、だったんだね……!」
葵子は喜々とした様子で雅臣の手を取り上下に振るが、雅臣は未だに状況が読み込めていないのであった。
今でもたまにアルバニア関係の事件がTVにて放送されているが、あくまで『たまに』程度の頻度なのだ。そこから、アルバニアの数はそこまで多くはないと、自分1人でこの世界を救えると、雅臣は勝手に思っていた。だがその考えは今この瞬間、音を立てて崩れたのである。
モルテが自分だけではないという事は、他にもモルテがいるということを表している為、相対的にモルテに駆逐されるアルバニアの数も増えていく訳で。日本がそんなに恐ろしい事になっていたなんて、予想だにしていなかった。
そんな事を思っていると、葵子が口を開く。
「わたし……なんだかんだで1年くらいモルテをやってきたけど、まだアルバニアは3匹しかやっつけてないんだ……血、苦手だし、遠くから狙うときも手が震えちゃってうまくできないの……」
苦しそうに、虚しそうに言葉を紡いでいた葵子は、ここで区切ると、今度は顔色を少し明るくしてこう言うのだ。
「でも……でも今は、如月君を、守りたいって思ったの……!今日はじめて話して、優しくて面白いひとだなぁって、話してると楽しくて……これからも、仲良くしたいな、って……そう思ったら! ──これを倒せたのは、如月君のおかげ、だね」
白い歯を見せて無邪気にはにかむその顔は、敵とはいえどもさっきひとつの命を奪った後になんて見えない、眩しすぎるものだった。
そして葵子は、自分を過大評価しすぎている。と雅臣は思った。『優しい』だなんて、アルバニアへの憎悪を原動力とする今の自分には相応しくない言葉だ……。
──けれど、葵子に貰ったその言葉はとても暖かくて、身を委ねたくなるほどに心地良いものだった。
女の子に守ってもらうなんて情けないな、なんて思いながら、
「うん、──ありがとう」
雅臣は、色々な意味のこもった感謝を口にした。