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アレッタ・ラ・モルテ  作者: 小林錯弥
7/10

日常

 そして落ちかけていた太陽は沈み、先程まで部屋を包んでいた夕焼けの柔らかな赤は、怪しげな月光に変わる。非日常を経験しすぎた雅臣は、布団に入ったはいいが眠れないでいた。

 ちなみに血塗れだったシーツとシャツ、パーカーは共働きで帰りの遅い親が帰ってくる前に丁寧に洗ってなんとか目立たない程度にまで血を落とすことができた。


 ──アルバニアとは何なのか。モルテとの関係は?そもそもモルテとは何なのか……自分が何者なのかも雅臣にはわからないでいる。

 宇宙から来たのか、または地球以外の惑星(ほし)から来たのか、もしかしたらみんな元は自分のように人間なのかもしれない、なんて正解の見つからない自問自答を繰り返すうちに雅臣のあがりきっていた(まぶた)はだんだん重みを持って降りてくる。

 そうしていつからという訳でもなく雅臣は意識を手放した──


 いつも通りの朝日が差し込むいつも通りの部屋でいつも通りの目覚ましの声に起こされ雅臣は目を覚ます。

 いつも通りの朝だ。

 ……本当に何もかもが平凡すぎて昨日のことはそう、すべて突飛な夢だったんじゃないかと思えてくる。


 けれど──目を凝らすと干してあるシーツがほんのりと桃色に染まっているのがわかって、すべて現実だと思い知らされると同時に大量の血を浴びた記憶が雅臣の頭にフラッシュバックする。

 ……清々しい朝に考えることではないと首を軽く左右に振って頭の中を渦巻く思考を追い出すと、雅臣は1階のリビングへ降り朝食をこしらえている母親に「おはよう」とだけ言うと食卓についた。

 そしてテレビをつけ、ニュースを見ることにした。どうやら昨日は近所で祭があったらしい。子供達が楽しそうに神輿(みこし)を引いている。微笑ましい様子にすこしだけ和んだ。


 出された朝食を胃袋に詰め込み、一応雅臣は17歳──高校2年生であるので、通っている市立鵜ノ森(うのもり)高校の制服である詰襟の学生服に袖を通すと、鏡を見て軽く身なりを整え家を出た。自宅から高校までは自転車で15分程。

 雅臣は冷たい朝の空気に満ちた誰もいない教室の雰囲気が好きなのでいつも早めに学校へ着くようにしている。

 今日も独りきりの教室で充実した時間を過ごそうと思いドアに手をかけると──鍵が開いていた。鍵を取りに行く手間が省けた、なんて思って中に入れば、なるほど女生徒が1人、既にいたのだ。

 

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