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アレッタ・ラ・モルテ  作者: 小林錯弥
6/10

嗚咽

 雅臣の斬撃は確実にアルバニアの腹を切り裂く。腹から上を失ったアルバニアは切断面から(おびただ)しい量の血液を噴き出し絶命した。

 後に残るは、天使(アルバニア)(むくろ)と静寂のみ。


 そんな光景を間近で見ることになった雅臣はこみあげる吐き気をなんとかこらえるが、吐瀉物の代わりか口からは嗚咽が漏れた。

 俯くと返り血に染まった自分のパーカーが見えて、余計に『とんでもないことをしてしまった』ということを思い知らされて吐く息の震えが止まらない。

 中のシャツも自身の血で汚れている。今日はどれだけ血を浴びれば気が済むのだろうか──


「……うっ、ふぅ……ッ、これで、いいのか……ッ?本当にこれで……!もう、怖い……自分が、怖いんだ……」

「ごめん。なにもできなくて……ごめん……。」


 絶望を貼り付けた顔で嘆く雅臣に、ルチアは謝罪をした。

 ついさっきまでごく普通の生活を営んでいた人間にいきなり酷いことをさせてしまった負い目を感じている為だ。

 『逃げる』という選択肢もあったはずだが、闘うことを決めた勇気は賞賛に価する。

 ──けれど今は小さく肩を揺らして(むせ)び泣く雅臣の背中を優しくさすることしかルチアには出来なかった。


 そして雅臣は、脳内で鮮明に残る肉を切り裂く感触、骨を砕く音、生暖かい鮮血が自身に降りかかる感覚に心を病んでいた。

 当然ながら今までに人を──いや、人程に大きな生き物を(あや)めたことなんて無い。思い出したくもないような事に限って記憶に残りやすいというのは本当で、もういっそ俺の記憶を奪っていってくれ、とアルバニアに懇願しても良いような精神の有り様だった。

 これからも自分は死神(モルテ)として、この大鎌を振るい血の雨を降らせ続けなければならないのだと思うと雅臣の心に得体の知れない恐怖が湧いてきて無意識に呼吸は浅く、早くなる。


 ──だがそんな雅臣を前に、ルチアは何故か安心したような表情を見せていた……

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