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悟られ済みの自殺劇

作者: シルフィア

なんとなく書きました。

また、性懲りもなく源良さんが出ています。

波が立っていた。

海風が冷たくて、無意識に目を閉じる。


「風に当たって、何を考えているんだ?」


後ろから声を掛けられても僕は振り向かなかった。

その人はため息をつきもせずにまた、僕に問いかけた。


「そんなところにいても寒いだけだぞ? 家に帰ろう」


優しく声を掛けられて、僕は……


「はい、良さん」


また振り向いて、答えてしまったのだった。


「死ねなかった……」


僕は毎日、死ぬために海へ行く。

ある時は朝、まだ誰も目覚めていない頃に。

ある時は昼、みんなが昼食を食べている頃に。

ある時は夜、誰もがね寝静まった頃に。


どんな時に海に行っても、必ず良さんが僕を迎えに来る。


みなと、帰るぞ」


今日も、断崖絶壁から青い海へ飛び込む少し前に良さんがやってきた。

いつも振りかえらないようにと思っているのに、どうやっても逆らえない。


「はい、良さん」


今日もまた、僕は死ぬことが出来ない。


「どうしてここにいることが分かったんですか?」


「だってお前、いつもここにいるじゃないか。だから、いないと思ったらここに来るんだ」


良さんは綺麗に笑う。

それが造られた笑顔のようで、気に入らない。


「探しに来なくて大丈夫ですよ。僕ももう子供じゃないんですから。ひとりで帰れます」


僕も作り笑いで良さんを見る。


「でも、探して欲しいんだろう?」


「え?」


「大丈夫、ここに来たばっかりの奴らは大体そうなるんだ。お前だけじゃない」


「は? え?」


僕は意味が分からなくて良さんを見返す。


「気にするな。いつでもいなくなっていいんだぞ、オレが見つけ出してやるからな」


その時、初めて良さんの本当の笑顔を見た気がした。

でもそれは満面の笑みではなく、全てを見通した悪戯な笑みだった。


「さあ、帰るぞ。みんなが待ってる」


「……はい」


これは僕が、まだ源湊みなもと みなとになって間もない頃のこと。

孤児院、ファイリートルゥーにきてまだまだなれなかった頃のこと。

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