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第二十二話 気付けば帰る道もなし

7月中に終われませんでしたorz

この後作者は最低でも半年程失踪します

「「……はい?」」

 異口同音にそう声を発した二人は、恵水と雨久だった。無理もない、実際対戦するのは自分たちなのだが、相手のことを知っているのは理渡だけなのだ。

「なんだいあんたら、そんな間抜けた声出して。もっと気合い入れらんないのかい?」

『ちょっと、理渡、どういう事よ? 前々回の武道会に、こんな人いなかったわよ?』

 当然情報収集の為に恵水は理渡に念話を編む。

『そう、いなかったのよ。当時相当な武闘派で、優勝候補の一人でもあり、“剣山の高嶺”の二つ名を持ってらっしゃるこのお方がね。もっとも、その二つ名がついたのはあの大会のすぐ前なんだけど』

『……裏がありそうね、面倒だわ』

『まあ、実際きな臭い話は無いんだけど、気を付けたほうがいいわよ。一対多の殲滅戦を得意とする面攻撃の達人だから』

『わかったわ。ありがとう』


「ほら、何ぼさっとしてるんだ。早く行くよ。そこから転移できるからついてきな」

 恵水が理渡と高速で念話を交わし終えるのとほぼ同時、美那はそう言いながら部屋の隅にある、常に開いているらしい転移陣の上に踏み込む、と、美那の姿が光と共に消えた。

「……雨久、あんた、大丈夫そう?」

「そういうお前はどうなんだよ?」

「そう言う余裕があるならまあいいか。さて、行くわよ!」

 気合一声、恵水が転移陣に飛び込む。

「ったく、面倒でも仕事は休みって思ってたら、こりゃあ命が危ないかもな!」

 悪態をつきながら雨久が続く。

「さて、私はもう帰りたいわね」

「多分駄目だと思うんだけど」

「……行きましょうか」

「……うん」

 少し肩を落とした理渡と、その後ろから枝子が続き、部屋にいた全員が転移すると同時に、術式で自動化された部屋の鍵がカタンと音を立てて閉まった。



「……ここ何処?」

「さあな」

 二人が転移してきた先は、およそ天界のどこかとは思えないような荒野だった。よく分からずに立っていると、後ろに理渡と枝子が転移してきた。

「ねえ枝子、ここ何処?」

「ああ、そりゃ知らないか。ここは……」

「天の裂け目。天界で唯一、下の下との繋がりが断ち切れなかった場所さね。そして……」

 下の下。天界で地獄を意味する、所謂隠語である。四人の背後、枝子の説明に割り込んだ美那は、視線が自分に向いているのを確認し、言葉を切って振り向いた。

「あたしら、天界防衛隊の主戦場さ」


 そこにあったのは、左右にどこまでも続くかと思われる城壁。堅牢な石造りの建物は一見傷一つ無いように見える。しかし、

「傷つかぬ城壁を装う石壁、と言ったところかしら?」

「相応以上に頑丈だけど、それでも傷つける輩はいるのね。敵ながらというか何というか……」

「随分遠いのによく気付くもんさねぇ。あんたらには見えるかい?」

「確かに違和感は感じますけど、さすがに裏までは見えませんよ」

「同じくです……」

 周囲には濃い戦闘痕がそこかしことあるが、それと比較して城壁の壁は綺麗すぎるのだ。もちろん天界でもなかなか見られない強度の石材を用いていることはいるのだが、度重なる魔物の侵攻に晒され徐々に傷ついている。

 今では定期的に大規模な補修を行っているほどで、その見た目の綺麗さは、相手に正しい城壁の形状を把握されないようにするためと、示威効果を高めるための演出として割り切られている。

「あの、試しに撃ってみても……?」

「駄目に決まってるさね。というかあんたよく見りゃ、“奏威の冬砲”じゃないか。そっちは“速演の春槍”さね?」

「あれ、ご存じで?」

 突然話題が変わり、恵水がその内容に驚いて聞き返す。

「ああ、例の前々回武道会で、結局誰が優勝するかと思って人づてに話は聞いてたんだ。で、初出場で馬鹿みたいに強い二人がいたって話聞いたんさ」

「「恐縮です」」

「で、行くのはあんたら二人かい?」

「恵水はそうですけど、私は行かないというか行けないので、今回は代わりにこっちが行きます」

 理渡が残念そうに言うと、

「おいこっちってなんだこっちって!」

 雨久は憤慨した。

「まあまあ落ち着きなさいよ。こちらは地動殿雨久、今回同行を頼んでいます」

「へえ、この二人に頼まれるってことは、腕が立つのかい?」

「そうですねぇ……、見た目よりはっていう程度ですけど」

 またしても理渡。

「お前なあ!!」

 雨久は激怒した。

「だから落ち着きなさいって」

 いつもと立ち位置が全く違うので少々苛立ちはじめた恵水がたしなめる。それを眺めながら、しかし我関せずという雰囲気で美那が一人ごちた。

「まあ、それなら別に腕は保障付きか……、でもまあ……」

「えっと、まだ何か?」

 それを耳聡く聞きつけた理渡が相槌を打つと、

「折角来たし、めったにない機会だからね。さ、予定通り仕合を始めるよ!」

 考えうる限り最悪の返事が返ってきた。


「……や、やるんですか、やっぱり……?」

「当り前さね。折角来たんだ、少しくらい楽しませておくれよ」

 さすがに声が引きつる理渡であったが、対する美那はさも当たり前のような顔だ。

「い、いや、別にその……」

「まあ、いいんじゃない、理渡? 元々やる予定で来たんだし、美那様が仰るなら、私に異論はないわよ。雨久は?」

「…………もう諦めたよ、色々と」

「はっ、言ってることとは違って随分気合が漏れてるようだけどね?」

 既に関節をほぐし始めている恵水の言葉にもう疲れたとでも言いたげな顔の雨久だったが、美那はすぐに見抜いていた。どうやら二人ともやる気満々である。


「じゃあ始めるよ! 枝子と……、」

「山雪姫 理渡です」

「じゃあ山雪姫、あんたらはちょっと離れてな」

「分かりました」

 ちなみに枝子は一応呼ばれたが既に避難済みだった。

「それじゃあ、」

「始めましょう!」

「ああ、加減は無しさね!!」

『それにしてもこの二人、息ぴったりだな……』

 雨久が恵水と美那に抱いたそんな感想は、以降誰にも語られることはなかったという。

 どうも毎度お久しぶりと言わざるを得ません穂桐です。

 今回の投稿で晴れて一周年なんて言ってるこの作品ですが、いや、この作品に限らず、今後最低でも半年間、大学受験のため活動を停止させていただきます。勝手ではありますがご了承ください。

 来年の春、もしまだ自分を覚えていて下さる方がいらっしゃいましたらまたお越しください。多分更新を再開していると思います。


ではまたいずれ。

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