第十七話 特別な武具
お久しぶりです、穂桐です。
テストとかあると執筆はかどりますよね(笑)
見つけた市場に向かっていた恵水が駆けていた足を止めたころ。
「到着ー」
「待ちなさい。ここはただの店じゃないわよ」
ようやく理渡が追いついた。
「んー? 何だ、客か?」
「あ、はい。って、あなたは!」
「あ? お前、来たことあったっけか?」
大袈裟に驚いた恵水に、出てきた店主はいぶかしげに尋ねた。
「いえ、私が上がってくるときに確か……曇守様、ですよね?」
「ああ、まあ今はお役御免みたいなもんだ。しかし覚えてる奴はいるもんだな。俺は覚えてないが」
「お久しぶりです。曇守様」
ここで理渡が会話に加わった。
「おう、山雪姫じゃねえか。何だあんたの連れかい」
「ええ、少し先走り癖があるので」
「ちょっと。まあ否定はしないけど」
「で、何の用だい。冷やかしなら帰んな」
『ねえ理渡、ここって『武器屋よ。それもとびきり上級の』……それはまた』
「そうですね、薙刀って置いてます?」
恵水がこう言ったのは単に良質な武器に期待していたからではない。いや、あるのは分かっていたが別にそっちが欲しかったわけではないというのが正しいところだろう。
「……ああ。こっちだ」
恵水の含みのある表情、特に目を注視してから曇守は吐き出すように言った。
「ここだ」
「やっぱりあの木はここでしたか」
「なるほどな。あんときはおかしいと思ったんだ。で、あれはどうしたよ? まあ大体予想はつくがな」
「あはは……、多分予想通りだと思うんですけど、あれ、砕けちゃいました」
「だろうな。てっきり山雪姫が稽古にでも使うんだろうと思って、あまり作り込みのよくないのを選んだんだ」
「え?」
驚いたのは当然理渡である。
と言うのも、以前恵水と留梨が戦ったときに恵水が使った薙刀、あれはここで購入したもので、頼んだのは
『特別頑丈な薙刀』
のはずで、まさかそれに対して曇守が比較的低級な品を出してきていたとは夢にも思わなかったからだ。
「理渡、あなたあれ買うとき何て頼んだ?」
「特別頑丈な薙刀って言ったけど」
「「それじゃあだめね(だ)」」
「え……?」
異口同音に言われた。そもそも依頼が悪かったらしい。
そもそも理渡は普段近接戦はしないし、近接用の武器を買うこともほとんどないから仕方がないのだが。
「あのなぁ山雪姫、頑丈な奴って言うとウチ位の武器屋じゃ稽古用のことなんだよ」
「武器は堅いことよりしなやかであることが重要、堅いだけの武器は……型稽古には向いてるけど実戦には堪えないわね」
「そうなの。まあ、これからは恵水が来るなら私がその類を買う必要はないし、頭の片隅に入れるくらいにするわ」
恵水がこの場所を知った以上、わざわざ理渡が恵水の使う武器を買いに来ることは確かにもうないだろう。
「そうね。でもまあ、一応ああいう時は……」
「ああいう時は?」
「『一番いいのを頼む』、この一言に尽きるわね」
「……何それ?」
「……」
どうやらあまり伝わらなかったらしい、何が伝わらなかったのかはさておき。
「「お邪魔しました」」
「結局冷やかしじゃねえか、まあいい。あんたらに何言っても無駄そうだ。さっさと行け」
「は、はい」
あれからしばらくして、二人は追い出されるように店から出て行った。
その頃。
「そろそろ来るかね」
「出るんですか?」
「まあな。同格の癖に出迎えないと怒るから、あいつ」
「……」
「ん? どうかしたか?」
「いえ、別に」
この時従者の彼が何を思っていたかは言わずもがなだろう。
“彼”は出発の支度を始めた。
「そろそろ着くわよ、恵水」
「ここって」
「そう、流転界」
流転界は、恵水たちのいる季節界とは別の仕事を受け持っていて、その内容は、季節に関係のない気象創造から大規模な天変地異まで多岐にわたる。
「今回は比較的暇な奴に頼んであるわ。もう出てきてると思うけど」
「あれじゃない?」
見れば、門の柱に寄りかかっている青年然とした男が一人。
「あれね。じゃあ、ちゃっちゃと合流しましょうか」
「了解」
そう言うや否や、二人は突然猛烈な速度で駆け出した。
「来たか、防盾“長城”」
二人の気配を察知した彼は、とりあえず大規模な障壁を展開する。
「障壁?」
対する二人のうち、恵水は少々面食らった様子で呟いた。
「ええ、挨拶みたいなものね」
「どうする?」
「私が抜いてもいいけど、折角だし恵水がやったら?」
「あら、譲ってくれるの? なら遠慮なく」
そう言うと、恵水はさらに加速し、
「ただの薙刀じゃ刃渡りが足りないか。なら!」
気で展開した薙刀の刃を上に向け、それを驚くほど長大に変化させた。
そして、
「大刃“破界斬”!!」
碌な抵抗も見せず、障壁はあっけなく両断され、消滅した。
「術式剣とか聞いてねえよ……」
障壁が意味を成さなかったのは、恵水が振るった大刀の刃に展開した術式のせいだったのだが、説明はまたいずれ。
「それじゃあ今度こそ」
「ええ、さっさと行きましょう」
こちらはもう何もなかったかのように目的の青年に向かって歩き始めた。
毎度どうも、穂桐です。
ここ数話ほど全然話が進んでませんね(汗)
進めたいとは思ってるんですが、思いつきで色々盛り込むとこんな感じです。
こっから先もこんな具合が何話か続くと思いますが、しばらくお付き合いいただければ幸いです。
では予定通り次回予告です。
恵「関守市から出発した私たちは一路待ち合わせ場所に向かう。しかしその先に待っていたのは?! 次回『万里の長城』、乞うご期待!」
理「どことなく違う気がするわね。次回の副題は『異業者との合流』よ。お楽しみに」




