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第十五話 遍く見れば穴も見つかる

お久しぶりです、穂桐です。


ようやく戻って来れましたが、ストックはほとんどたまってません(汗)

「最近暇でしょうがないから、館の大掃除でもしましょうか」

 時期でもないときに恵水がそんなことを言い出したので、現在春の館は大掃除の真っ最中である。

「思えば去年は冬前に掃除しませんでしたもんね」

 ふと思い出したように留梨がつぶやいた。

 春の館では、大掃除の時期である年末は基本的に仕事期間中なので掃除ができないことが多い。それを見越して通常は冬になる前に掃除を始めるのだが、去年に限って忘れていたのだ。


「あれ、そうだっけ? 通りで埃がたまってると思っケホッケホッ」

 余所見をしたところに埃が舞い上がり恵水が咳き込む。それが更なる埃を舞い上げてさらに状況が悪化する。

「ちょ、恵水様、何してるんですか?!」

 埃塗れの恵水を見れば留梨でなくてもそう言いたくなる。というかせっかく掃除をしていたというのにさらに散らかしてしまえば元も子もない。


「あーもう面倒くさい! 創象“旋風(つむじ)”」

「……え?」

 目の前の光景を見て留梨は唖然とした。まあ無理もない。そこら中に舞っていたそこそこ量の多い埃が、今やすべて恵水の手の平の上、高速回転するつむじ風の中に取り込まれているのだ。

「何ですかそれ?」

「見ての通り、つむじ風で周りの埃を集めてるんだけど、こういう風に使うにはちょっと風が強すぎるから、無理矢理圧縮してこの大きさ。中途半端な硬さだと近づくだけで粉砕するわ」

「それってつまり、一番大事な隅の掃除には使えないってことですよね」

「そうよ。だから使ってなかったんじゃない」

「それもそうですね」

 我ながら上手く突っ込んだと思った留梨だったが甘かったらしい。そう思って少しへこんでいると「でも、」と恵水が言った。


「組み合わせれば使えるものよ。創象“微風(そよ)”」

「え? 待ってくださっ、もう、防盾(ぼうじゅん)箱入(はこいり)”」

 恵水が前触れもなく部屋中の埃を舞い上げたので、留梨はやむなく障壁を展開して身を守る。

「……よし、この部屋の分はこれで片付いたわね。さあ、どんどんやるわよ!」

「あ、ちょっと待ってください!」

「留梨はそっちの部屋をお願い。分担したほうが効率いいわよー」

「あ、はい。分かりました」

 こうして埃集めは恙なく、あくまで恙なく進んでいったのだが、この後一つ問題が。


「結局無駄なものの整理が全然終わってないです」

「そう、ね。どうしようかしら?」

「地道にやるしかないでしょう」

「……そうね」

 結局のところ、掃除は地道にやるのが一番である。



 その後、何とか使用済みの物品の廃棄や使用中の物品の整理を終わらせた二人は、次に最も整理が面倒な場所、春の館の蔵の前に来ていた。

「一回全部出して虫干しね」

「どうせ中で片付けようとしても収拾がつかなくなりますし、そうしましょう」

 手間がかかるのは承知の上、どうせなら徹底的にやってしまおう、というのがほぼ毎年の流れである。それほど使うこともないはずなのだが、毎年、少なくとも留梨は見たことのない物が増えている。


 で、早速蔵に入ったはいいが、出したものを置く場所もないので庭に行こうとすると、

「キュー!キュ、キュキュキュウ、キュー!」

「あ、珠。どうしたの?」

「気になって出て来たんじゃない?」

「キュ!」

「うーん、もしかしてこれが気になってるんですかね?」

 留梨は視線で自分と恵水が抱えている荷物を示しながら言った。

「そうかもしれないわね。一応封魔環の効果でこっちの気に当てられることはないけど、元は魔物だからこういう宝具なんかは本能が危ないって言ってくるんでしょう」

 ちなみに春の館の蔵に収められているものの大半は術式や概念を内包し、気力を与えることで特殊な効果を発揮する宝具と呼ばれる道具が占めている。そのほとんどは由来ははっきりしないが効果は全て恵水のお墨付きであるため、使いたいときに使えないことはまずない。

『ま、大概は私が作ったから間違いないしね。留梨には黙ってるけど』

 おっと、こちらの電波を受信していただき恐縮です。


「大丈夫よ、珠。今のあなたに害はないわ。ただ、しばらくここを借りてもいいかしら?」

 珠といる時の留梨はいつにもまして柔和である。まあ、自分で可愛いと思って連れてきたわけだから当たり前と言えば当たり前だ。

「キュー」

 少々嫌そうな声を出しつつも珠は素直に木の下に入った。留梨たちに場所を譲ることにしたらしい。

「じゃあ、珠の機嫌が悪くなる前にやっちゃいましょう、留梨?」

「はい、急ぎましょう!」

 こうしていつになく元気に動き回った留梨の活躍で、蔵を空けるのにかかった時間は例年よりやや短かった。


 しかしその時、空になった蔵の中から一人の叫び声が響いた。

「夢見が、私の夢見がいない!!」

 それは珍しく悲嘆をあらわにした恵水の叫びだった。


「どうしたんですか?!」

 恵水があまりに大声を出したので、驚いた留梨は庭からすぐさま蔵に走って恵水の様子を確認した。すると

「蔵で寝かせてた刀があったんだけど、見なかったわよね?」

「刀は、そういえば去年はあったような気がしますけど、今回は見なかった気がします」

「やっぱり……」

「あの、その刀って?」

 さすがにこの情報量では恵水がどうしてこれほど落胆しているか分からない。

「あれは“人格武器”の一つで、天界広しといえども対の姉妹刀以外で右に出る刀はないと言われた名刀なのよ」

「え、ええええ?!」

 “人格武器”とは、天界で作られる武器の中でも特に貴重なもので、武器に人と同様の自我が内包された高位武装である。人の姿を取ることもでき、使用者との心のつながりによってその能力を何倍にも上昇させる上に、その宝具としての基本的な価値も飛びぬけている。もちろんそれがなくなるというのは非常に重大な事態である。

「どうしよう」

「私にはわかりかねますが、芽吹様なら何かご存じなのでは?」

「そうは思うんだけど、処置なしって言われたら怖いじゃない」

「その気持ちは分からないでもないですが……、そうですね、では最初に山雪姫様にご相談なさってみては?」

「理渡かぁ。それが無難そうね。そうしてみるわ、ありがとう、留梨」

「いえ、私では何もできませんので、せめて発想のお手伝いでも」

「その考えに頭が下がるわ。じゃあいってくるわね」

「いってらっしゃいませ」

 こうして恵水は転移陣で冬の館に向かった。


 その後に残された留梨が、

「……あ、こっちの荷物どうやって仕舞おう?」

 と諦めにも似た溜息をついたのは余談である。

前書に続きお久しぶりです、穂桐です。


今回1か月休稿してましたが、結局1か月投稿分はたまりませんでした。元々間に合わなくて休稿したので当たり前ではありますが。


そこで、この後ちゃんとお知らせは出しますが、これ以降の投稿は月1~2程度の不定期更新にしたいと思っています。勝手ではありますが何卒ご了承お願いします。


それでは、遅ればせながら皆さんよいお年を

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