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閑 第五半話 “力を伸ばす”ということ

 時間的に無理して何とか書き上げました(苦笑)


 こうやってペースを守るのも一つの修練かと思い始めた今日この頃です。

 恵水が部屋に籠ってしばらく経ったある日のこと。

 いつものように突風の訓練と庭木の手入れを終え、桜が舞う庭の中央に目を閉じて佇む留梨の姿があった。

「……」

 以前豪から受けた訓練で見出した“流れを視る”境地。これをさらに昇華させ、見るのではなくその流れを“感じる”ことによって視覚に頼らずに戦えると考えた留梨は、それを実践すべくこうして黙っている。


 そしてそのまま数分が経ったある瞬間、

「!」

 目にも止まらぬ速さで突き出された右腕、その先の手のひらを開くと、中には舞っていた桜の花びらが一枚握られていた。

「一枚目だけでこんなことじゃ、まだまだだなぁ……」

 はぁと溜息をつきながら留梨はそう呟いた。周囲の流れをつかむのに時間がかかりすぎているのだ。これでは到底実戦では役に立たない。

 とはいえ、始めた当初は目を開いた状態でもほとんどつかめなかった桜の花びらを、見ないで一枚ごとに狙ってつかめるようになっただけでも相当の進歩である。

 ここまで確かに進歩を続けているのは明らかであるため、留梨はそれほど焦ることもなくその日はそれまでにして家事に戻った。


 その日の晩。

「そういえば、そろそろ頼みにいかないと」

 何をと言えば、恵水が出てきた時の鬱憤晴らしの付き合いという、およそ受ける側には利益のない話であるが、芽吹を呼び戻すことも難しく、自分では恵水を抑える自信がない留梨には他に選択肢がないのも事実である。

「はぁ、毎年毎年、そろそろ心苦しいというか……」

 恵水がいないこともあり、色々と本音が表に出てしまいがちな留梨であるが、恵水が出てくるとすぐに切り替えられる辺りは、意外に世渡り上手なのかもしれない。


 でもって次の日。

「さて、行こうかな」

 自分だけなので、特に必要な支度もなく、程よく日が昇った時点で館を出る。

 歩いていくのは、既に慣れきった冬の館への道だ。


 到着すると、まるで待っていたかのように玄関に涼華が立っていた。

「あ、どうもこんにちは、山染女さん」

「すごい、本当に来た」

「はい?」

「あ、いえすみませんこっちのことです。中で理渡様がお待ちですよ」

「あ、はい」

『来るってお伝えした覚えはないけど……』

 どこか釈然としないものを感じながら、留梨は冬の館に入って行った。


「やっぱり来たわね」

 開口一番の理渡の一言に、留梨は自分の記憶が間違っていないことを確認した。『やっぱり』ということは、ここに来ることはあくまで理渡の予想の範疇だったということだからだ。

「申し訳ないです」

 来る日まで予想されているのだ、その理由は言わずもがなだろうと思い、留梨は早速本題に入るべく謝意から入る。

「まあ仕方ないわね。私が困ることでもないけど、桜がないと困る人は結構いるものね」

「今では桜もただの売り文句になってしまっているみたいですけどね」

 本題を切りだしてすらいないのに結果が先に出てくるあたりは恒例行事(?)ともなればまあ当たり前であるが、それを頼みにやってくる日まで予想するとはどんな勘なのだろうか。


 と、そんなことを考えながら理渡と世間話をしていた留梨の背筋に悪寒が走ってから、留梨が飛び退いたその元の場所の床に苦無が突き刺さるまでわずか一瞬。

「何が?!」

「あら、思ったよりずっといい反応」

 身構えた留梨の横で楽しそうに呟いたのは他ならぬ理渡である。すると、先程留梨が座っていた側の襖が開き、申し訳なさそうな顔の涼華が現れた。

「す、すみません、その……」

「いえ、大体わかりました。でも、何故ですか?」

 とりあえず涼華の謝罪を流した留梨は、真剣な顔で理渡に向き直る。

「一人きりの鍛錬でどこまで伸びるものなのか見ておきたくて、ついね」

 理渡はばつの悪そうな顔で応じる。

「と、言いますと?」

「目指すものが明確に見えているということはないものだけれど、指標となる誰かとか、負けられない相手とか、そういうものが身近にいたほうが上達は早いものよ。そうでないのに伸びるというのが逆に珍しいくらいにね」

 留梨はゆっくり頷いた。とりあえず言いたいことは伝わったらしい。尤も、それが理渡の遠回しな気遣いだと気付くのは難しかっただろうが。


 そのあとまた適当な雑談をして帰ろうとした留梨であるが、理渡が帰り際に、

「そっちの館の倉庫に殺陣鏡(たてかがみ)っていうのがあるはずだから、探してみるといいわよ」

 と言ったので、

「何ですか?」

 と聞いたところ、

「恵水が一人でも遊べるように作った作品よ」

 と言われ、ますます訳が分からなくなった。恵水の作品とは一体何なのだろう。


 帰ってから倉庫を探すと、それらしきものが出てはきたものの、使い方が分からなかったため結局そのまま倉庫の中に置き去りにした留梨。この鏡はこの後しばらく留梨からは忘れ去られることになるのだが、ある時再び取り出され……と、この話はまたいずれ。


 こんにちは。いつもお世話になってます穂桐です。


 今回は実は留梨がすっごく成長してたよって話です。2話と9話の留梨の力の差があまりに大きかったのでその理由を補完できればと思いまして。

 今回で一応この章の閑話は終わるのですが、今度はエピローグが書きたくなっております。どんどん収拾がつかなくなっていきますね(笑)


 今のところ時間的な制約以外は特にないので、遅くはなっても更新が完全に切れることはないと思います。ですので、遅れても温かい目で見ていただけると嬉しいです。


 ではいずれまた。

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