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第十二話 境界での肩慣らし

 “冥土の渚”、此処は天界の武芸者なら遍く知る場所、というか、それらの為にとある天人が無理を言って造り上げた区画である。

 と言うのもこの場所、天界や天国の反対側にある冥界あるいは地獄と呼ばれる場所と軽度の接続がなされていて、地獄での苦行による苦しみなどが集まって生まれる魔物の中である程度以下の階級のものがここに飛ばされてくるのだ。

 当時は主に治安面での問題が懸念されたが、毎日のように誰かしらがやってきては鍛錬の一環としてそれらを討伐していくため問題は起こっていない。


「「さて、どういう編成にしようかしら」」

 ふとつぶやいた芽吹と氷張の言葉が一致した。二人は顔を見合わせて小さく笑う。

「それなんですけど、なかなかない組み合わせにすれば面白いんじゃないかと思ったので昨日考えてきました」

 と言ったのは理渡。

「別に何か考えてたわけじゃないし、それでいいんじゃない?」

「私もそれでいいと思うわ」

 二人の上司の了承を得て、特に問題なく理渡の案が採用されることになった。


 で、出来上がった組が、

 芽吹、理渡組

 恵水、涼華組

 氷張、留梨組

 の三組である。


「あんた楽そうね……」

「あら、どういう意味かしら?」

 恵水の発言が単に自分の組に上司を入れたことを言っているだけではないと気付いた理渡は少々不機嫌に返した。

「って言えばその子の実力が分かると思ったんだけど、どうやら想像以上みたいね。安心したわ」

「恵水に謀られた?!」

 舌戦で恵水に負けるとは思っていなかった理渡は大分動揺した。


「あら、理渡があなたを選ぶなんてね」

 氷張が芽吹の隣に向かいながら言う。

「何か企んでるのかしら」

 しかし芽吹はそちらには目を向けずに答えた。

「うちの理渡はそんなに胡散臭くないわよ。私は単に珍しいと思っただけ」

「へぇ。よかったわ、誰かさんに似なくて。それより留梨のことお願いね」

「最初のほうが気になるけど、まあいいわ。任せなさい」

 こちらは軽い皮肉の言い合いで済む。


「その、さ、山咲姫様ってどんな人?」

「えっと、得意な武器は薙刀で、基本的に前に出て戦う人……だよ?」

 普段から敬語だけで生活していると、逆に敬語以外が話せなくなったりする。今の留梨がまさにそれで、自分の言葉に疑心暗鬼になってしまっている。

「そっか。えと、氷張様は……何ていうかよくわからないけど、こう、何でもできそうな人」

「そうなんだ」

「……」

「……」

 お互いあまり接する機会がなかったため、どうにも気まずいというか慣れない二人であった。


「さて、じゃあ分かれて解散にしましょうか。とりあえずお昼までね」

「分かったわ」

「「了解です」」

「「分かりました」」

 こうして、広野での鍛錬が始まった。



 そんな頃、殺伐とした地獄の外れで、周囲とはあまり似つかわしくないものが歩き回っていた。

「キュー、キュー」

 一見すると灰色の毛玉のようなそれは、愛くるしい鳴き声を上げながら徘徊している。

 兎ほどの大きさで、丸く盛り上がった背、四足で歩く姿、よく観察するとその生物、いや生きてはいないから物体は、全身にふわふわとした毛の生えたやや大きめの亀であった。


「キュー……キュ」

 周囲にいるかもしれない仲間探しを早々に諦め、足をたたんでその場に体を下ろす。この亀は、ここにやってきた人間の魂から吐き出された怠惰や諦観といったものから生まれた一応魔物である。とはいえ、構成要素が怠惰や諦観では、対した力を持つはずもなく、せいぜい無駄に傷つきにくい程度の能力しかない。


「クゥ……クゥ……キュ?!」

 そのまま眠ろうとしていた彼(仮称)はしかし、何の前触れもなくのそりと立ち上がり、首を伸ばして必死に辺りを警戒し始めた。

 すると間もなく、これまた何の前触れもなく、彼はその場から消失した。



 場所は戻って冥土の渚。芽吹、理渡組。

「この辺りはあらかた片付いたわね」

「ですね。どうも歯ごたえがありませんでしたけど、他に取られましたかね?」

「みんなこんなものだと思うわ。大きな気配はないようだし」

「そうですか」

 この周囲の魔物たちは芽吹の幻影に踊らされた挙句、予想だにしない方向から飛んできた理渡の砲撃で蒸発するという最後を一様に迎えていた。

 芽吹の幻影は合計七人。その全員が舞を踊っており、また全員別々の動きをするため判別は非常に難しい上に、仮に本物を見つけても芽吹が併用している技“紅葉舞(くれはまい)”の効果によりその攻撃を悉くかわされてしまう。

「帰ります?」

「そう、ね。他もこの調子ならすぐに合流できるでしょう」


 今度は恵水、涼華組。

「酉の方向(左)、俯角一度、距離三十間(約五十八メートル)!」

「はい!」

 きびきびと指示を出すのは恵水、それに応じて狙撃を行っているのは涼華である。

 これは恵水の発案で、普通に現れた敵を倒すのでは鍛錬にならないので、恵水は遠距離索敵の訓練を、涼華は高速狙撃の訓練をそれぞれ行えるように考えた。

「……目的に命中、撃破確認!」

「所要時間は四秒……ずいぶん冴えてきたわね」

「次はまだいますか?」

「そろそろ打ち止めってところね。この調子だとそろそろ皆帰ってくるころかしら。今日は私たちも帰るわよ」

「はい!」

 こちらも帰途に就く。目的地はここからほど近い場所だ。


恵「あれ?足りなくない?」


留「呼びました?」


恵「そうよ留梨、あなたまだ帰ってないじゃない。今回本当にここまでなの?」


留「そうみたいですよ。私たちは次回です」


氷「そうよー。ちょっと用事ができちゃってね(意味深)」


留「氷張様!いつの間にいらっしゃったんですか?」


氷「さっき、ね」


留「…それはそうと次回は第十三話『拾い“もの”、新たな住民』です。乞うご期待!…って一回言ってみたかったんですよね」


氷「私体良く無視された?!」

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