少女が泣いた後の世界状態
それぞれのタイトルにある「世界」とは何かを考えてお読み下さい。
「よく頑張ったな」
「……うん」
キルが消えた。あの日の数日前に聞いた真実。柱を直す代わりに死ぬ、と。オードとはそういう者たちのことだ、と。わたしは受け止めた。本当はいやだった。いってほしくない。投げ出したい。でも、後戻りはできないから。ここまで来てしまったから。だから、わたしは受け止める。
そう伝えたときのキルは嬉しそうだった。キルの存在理由は、それそのものと言って良かった。柱のためだけの存在。無数にある「世界」で活躍する一族。
「キルがね、笑ってた」
「……そうか」
「すごく、きれいだった」
「……そうか」
「……ずっと、笑ってた」
「……そうか」
「うん、笑ってた。ずっと笑ってたんだ。ほんと、ひどいよね。わたしはこんなに泣いてるっていうのに。それなのに、笑ってたんだ」
「……そう、か……」
「ねえ、お父さん。キルが言ってたんだ」
「ん……?」
「×××、×××××××。だって」
「……」
これは、少女の物語。長い月日の後にやっと知った真実。
おもいっきり泣いたあとに、父に伝えることが出来た。
あの日の、キルの言葉を。
「ボクは、すごく幸せだよ」
物静かで、ときに熱い父が泣いていた。
少女は強かった。