霊の叫び
怯えている犬達の前に堂々と立った一際凛々しく見える犬。
その犬はケタルと対話をしていた。
「ケタル、そいつの言っていることがわかるのか?」
「フットさん、その人がもう一人の勇者のようです」
村人達は驚く。
「な、なんだって!?」「勇者様が村を襲うなんて」
ケタルはフットやざわめく村人達を諌めた。
「待ってくださいその人にも何か事情があるはずです」
村人が静かになったところでその野犬のボス、チイチイは言った。
『ケタルはん、ラーの鏡でウチを人間に戻してくれへんか?』
「ラーの鏡って今は水川ファミリーと言う極道一家が持っている財宝!?」
水川ファミリーとはとある有名な極道一家だった。
その一家が財宝として保管しているらしいのだ。
そもそもラーの鏡とはラー名家が持っていたが気の弱い男で血は途絶え、水川ファミリーが奪う形となってしまっていた。
「おいおいマジかよ…」「でも行くしかなさそうです」
と多少なりとも戸惑う二人。
元社交場のその廃墟。
今は毒の沼地に染め上げられ、何者も近づけないようにされている。
一人の亡霊の呪いによって…。
そしてチイチイが一喝。
『勇者なんやろシャキッとせんかい!!』
「ひえぇっ!」ビビるフット。
「勇者だからしっかりしろと言ってるようです」と苦笑いしながらケタルは答える。
『勿論やあんさん達は勇者、そしてウチは一刻も早く人間に戻らなあかん。その為にはラーの鏡で人間、もとい勇者に戻らなあかんのや』
「そうですね、じゃあ行きましょう水川ファミリーのアジトへ!」
そして水川ファミリーのアジトに向かう道中の途中で廃墟を見つける。
その廃墟には毒の沼が地面に立ち込めていたがそこから悲しい残留思念をケタルは感じた。
「この廃墟に哀しい気配を感じます」
「正気かよ入るのか?」
ケタルは入ろうとするがフットはやめとけと振る舞う。
「心配いりませんその人は悲しんでいるだけです無害な人は襲いません」
ケタルは微笑んで言う。
『ウチもそいつからラーの鏡と関連するものを感じるねん。対話してみたらどうや?』
チイチイはケタルに言った。
そしてフット達はその廃墟に足を踏み入れる。
その薄暗い廃墟はかつては立派な社交パーティーの場であったらしい。
しかししかしある日を境に毒の沼地が広がり使われなくなってしまった。
ケタルはその悲しい残留思念を感じとり対話を始める。
『誰かいるのか?私には何も見えぬ何も聞こえぬ…』
と霊が訴える。
「貴方の悲しい気配を感じてきました。貴方は男性の霊のようですね?」
『そうだ私はとあるラーの名家の紳士。私は寡黙で心優しい男だった。しかし家宝であるラーの鏡を奴に取られたのだ』
「なんと!」
チイチイは犬だからかその言葉が聞こえていた。
『そいつが水川ファミリーと言うやつか?』
そしてチイチイが口を開く。
『そうだ。私は優しい性格だが声が大きく高慢な男の方に女達は慕いだし、私は悔しさの余り呪いでこの場を毒の沼地で染めた』
「可哀想に…」ケタルは言うが『何が可哀想やねん』とチイチイが漏らす。
『何故寡黙で心優しい私が虫ケラのように踏み潰され、あんな傲慢な男が女達をはべらせ、ラーの鏡まで盗み出すのか!』
男の霊は怒りの声を上げた。
「うわぁっ!」振動が起きてフット達が飛び上がる。
「お鎮まりください!そのラーの鏡を水川ファミリーから取り戻せば貴方は成仏出来るのですね!?」
ケタルが諌める。
『そうだ私は地縛霊の為ここを動けぬ。頼んだぞ勇者達…』
と静かになった霊はそう言いそれ以降声は聞こえなくなった。
さっきから置いてけぼりだったフットは「な、なあ何を話してたんだ?」
「ラーの鏡を取り戻せば霊は成仏出来るのだそうです行きましょう水川ファミリーに!」
そしてフット、ケタル、そして犬勇者チイチイは水川ファミリーのアジトからラーの鏡を取り返しに向かった。




