声出して行こう
結局、ニコニコ一家との戦いでまともに戦えたのはチイチイだけだった。
ケタルははかぶさの剣を早速使おうとしたが思うように扱えず、フットは友香のピンクタイフーンで混乱に陥りチイチイに気絶させられるに至り、武具を奪われたハーキは一方的に遊ばれるだけだった。
「チイチイ様に最後まで助けられっぱなしでした…上手くはかぶさの剣さえ使いこなせれるようになれれば…」
「私も…ニコニコ一家にはまるで太刀打ち出来なかったし武具も奪われて何も出来なかった…」
二人とも見るからに沈んだ感情が伺えた。
「いててあれ終わったの?」
フットがそんな時痛む頭をおさえながら起き上がった。
「目覚めたか」チイチイが呆れ突っ込む。
二人は不安を感じていた。
こんな調子で大魔王マドンと戦えるのか…と。
特にハーキは武具そのものが奪われてしまったので戦えない。
強くなったつもりでいたがやはり自身も兄がいないと何も出来ない。
今回の件でそれを実感してしまった。
「強くなりたいよ…」
「僕もだ…せめてはかぶさの剣を上手く使いこなせれるようになりたい…」
涙する兄妹。
その涙に応えるように1匹のネズミが現れた。
「ネズミさん…」「え?」
ハーキが先にネズミの存在に気づきケタルも目にする。
『ケタル様にハーキ様、私は潤実です覚えていますか?』
ネズミは言った。
「あの時のネズミさん!潤実さんだったの!?」
目を輝かせるハーキ。
『そうです。そしてそして勇者達。時間がありません早く強くなって魔王マドンを倒さなきゃならない時です』
「わかっとるけどウチ以外の奴が足手纏いでしゃあやいねん」
「にゃんだとう!?」
フットが口答え。
『喧嘩はよしこさん。精霊の城で修行してきなさい』
と潤実。
「精霊の塔ってあそこか?」
「あそこ?」
「とにかく行こうや」
チイチイ達は精霊の城に行き着く。
「何も無いじゃんかよ?」とフット。
『歌に反応します。ハーキさんは歌うの好きでしたよね?』
「な、なんで知ってるんですか?」
ハーキの顔が真っ赤になりだす。
『ベリアルの屋敷で自分を励ます為に歌っていたではありませんか』
「いやん恥ずかしい!」
ハーキが恥ずかしがる。
「恥ずかしがる事ないよ歌ってたじゃないか」とケタル。
「しかしあまり見知ってない人に歌を聞かせるのは恥ずかしいのよ!」
「俺も聞いてみたいぜ!」とフット。
「歌わんと精霊の城が現れんみたいや。ここで歌歌えるんはハーキだけやしあんさんが頼りや」
チイチイもこう言う。
頼りにされるのに弱いハーキは「仕方ないなぁ」と赤面しながら咳払いをした。
『演奏は私がします。さあ歌ってください』
潤実は楽器を持ち出しハーキを導く。
「う…うん」ハーキは息を深くしてから歌いだした。
声出して行こう(原曲:ドラクエ2果てしなき世界)
目指して行こう 山の向こう
越えていこう 海の向こう
飛んでいこう 空の向こう
声出して行こう 私の心。
だって 気持ちがね。どうしても落ち込んだ時は 何も出来なくなるけど声を出してけば 雨の後でも虹が見える。声出して行こう♪
挫けない 私は勇者
辛くない お兄ちゃんもいる
弱くない フットと比べたら
へっちゃらよ チイチイ様も一緒
だから 私はね どこまでも進んでいける 幸せな勇者として どうしても辛くなった時は声出して行こう
声出して行こう♪
ーーー♪
すると虹が現れだし少しずつだが城の姿も見えた。
「お、おお!」
目を輝かせる勇者達。
そしてなんと潤実が人間の姿になった。
「ありがとうございますおかげで私は人間になれましたそしてそして精霊王がお待ちかねです」
潤実が導く。
精霊王はケンノエ。彼は一度は死んだが白鳥として生まれ変わり、徳を積み精霊の城を作る。
以来精霊王となって地上を見守っているらしいのだ。
そしてスイーツ世界を作ったチイチイ父とも親密な関係にあると言う。
そして玉座に座るは見目麗しい青年。
「よくぞ来た勇者達よ。私はケンノエ。精霊王である」
精霊王ケンノエは言った。
チイチイ、ケタル、ハーキは恭しくひざまずくがフットは立ったままの姿勢でいる。
「おや?」「こらフットお前も膝をつかんかい!」
チイチイが頭を掴んでフットを倒す。
「痛い何するんだよ!」
「精霊王やぞチイチイ父の次に偉いんやぞ!!」
チイチイとフットがやり合う。
「はっはっは良い良い顔を上げよ」
ケンノエは笑いながら二人を宥めた。
そしてそしてケンノエは勇者達に話す。
「ケタル殿ははかぶさの剣を操れるようにならなければならないしハーキも武具を奪われ新しい装備が必要な時じゃ。しかしそれらを使いこなすには厳しい修行が必要である。覚悟はできているか?」
ケンノエは兄妹に聞き出す。
「はい覚悟は出来ています」
二人はこう答えた。
「うむでは精霊の塔を用意しよう。思いきり修行するのだ」
ケンノエは塔を開放した。
「ついでにコイツも修行させたってもらえませんか?」とチイチイはフットを掴んで指差した。
「なんで俺までっ!」
「あんさんは学習能力ないしいつも呪われるからや!修行して立派な勇者になれ!」
二人が言い合いを始めるとケンノエは咳払いして黙らせた。
「良いだろうフットも立派に修行するのだぞ」
「冗談じゃないっスよ!」
「ウチもついてくるから安心せえ!」
チイチイはフットを強制的に修行させることにした。
また自分も修行に付き合うと。
フットはそれはそれで不安が増すのであった。




