勇者の対立
「野犬は餌を求めてここにやって来るんだ。野山に餌となる実を植えれば野犬はやって来ない!」
ケタルはそう村人達を諭すが、そこで一人の少年が啖呵を切ってきた。
「やいやいやい!そんな平和的なやり方で野犬対策になると思ってんのか!野犬なんてなみんな蹴散らせちまえば良いんだよ!!」
その大声の持ち主はフット。ケタルと同じく勇者だ。
「なんだアンタ呪文も使えないくせに!」
「何が勇者だこの野郎この野郎!」
村人達は呪文が使えないからとフットを詰ってきた。
「喧嘩はよしこさん!フット君、君も勇者なら血走ってないで僕とどう野犬と共存出来るか考えようよ」
ケタルは冷静に宥めるがフットは更に罵る。
「あぁ?なに平和ボケしてんだ!?こっちの実家は農家で山の中なんだよ!うちのとこに野犬が襲ってきたらおかん達が大変なんだよ!」
「でも野犬だってみんな悪いやつじゃない。平和的に対策だって出来るはずだよ」
しかしフットはケタルのそう言った紳士的な対応に育ちの違いを感じ苛立ちが絶えない。
「アンタの良い子ちゃんぶった態度が気に入らねえってんだ。俺とお前の考え方がどっちが正しいかサシで勝負しろ。俺は呪文は使えねえが腕っぷりなら誰にも負けねえ!」
フットはそんな彼に剣を差し向けてきた。
「そう言うなら…」
ケタルも勇者たる者申し込まれたこの戦いを引くわけにはいかないとばかりに目を険しくさせて剣を抜いた。
「ちょっと喧嘩してる場合かい?」
と女性が止めようとするが「剣も相手を納得させる方法です」とケタルが止めた。
「へえわかってんじゃないお坊ちゃん」
とフットが更に煽る。
ケタルが細身の剣をフットに向けて構えを取る。
隙は無くそこそこ剣の訓練は積んだと見える。
「へえ剣には自信ありってか?呪文が使えても俺の剣には敵うまい覚悟!」
フットが先攻をしかけてきた。
ガチイン!ケタルはフットの剣を受け止めるがその攻撃力にケタルは押されている。
(あの小僧やるかも知れない…)
村人達はフットを見直そうとするがケタルが呪文を放ってきた。
「受け流し!」
「くっやりやがったな…っ!」
ケタルの反撃にフットの顔は僅かながら歪む。
「上等じゃねえか石つぶて!!」
フットが石を投げつける。
「こなくそ。ホイミ!」ケタルは呪文で傷を癒した。
「はぁはぁ…」
「流石に息が上がったか坊ちゃん」
フットも息は上がっているが呪文が使えるケタルをここまで押すとは流石俺だなと自画自賛していた。
「休んでんなよ坊ちゃん!!」
ガキインガキイン!!
フットが矢継ぎ早に剣を振り回してケタルを牽制。
ケタルは死に物狂いで受け流すが体力も切れ切れだった。
ケタルの脳内が勇者になるまでの経緯の回想に移っていく。
ーーー教会。
ケタルは教会で祈っていた。魔王から人々が守られますようにと。
その時『勇者よ』とケタルは神の声を聞く。
「神よ!チイチイ父よ貴方ですか!?」とケタルは上を向く。
ケタルの前には立派な体格の男性が翼を生やし宙に浮いていた。
『ケタルよ。お前は生まれついての勇者や。実は先代の勇者がおってな。ワイの娘なんやが魔王マドンに打ち取られて犬にされたんや。それでお前を勇者と見込んでチイチイを救って魔王マドンを倒してほしいんや』
とチイチイ父は告げた。
「僕が勇者…」ケタルに使命感が湧き起こる。
「わかりました!僕は勇者となって勇者チイチイ様を救い、魔王マドンを討ち取って参ります!」
と立ち上がった。
「よく言うた!銅の剣と50Gや。修行と思ってこれを使え!」
「はいっ!」
そしてケタルは勇者となって魔王マドンの討伐に出た。
その途中で犬の群れに襲われているこの村にたどり着いたのだ。
ーーー
「何故…僕は呪文を使えないこの人に敗れそうだなんて…」
とケタルが挫けかけていたその時だった。
村人が叫んだ。
「野犬だ!野犬が来るぞーーー!!」
なんと野犬となったチイチイが他の犬を率いれて村を襲ってきたのだ。




