08
? 「死神でーす。」
悠 「…死神?」
死神 「正確には死神536741番になります。ゴミ虚しいで覚えてください。」
悠 「…時間切れって?」
死神 「この超過時間のことです。死んでからこの世界に居続けて時間を過ぎると消されちゃうんですよ。まぁ、俺らが消すんですけど。」
悠 「け、消すって…?」
死神 「まぁ、抹消ですね。魂を消すので、何というか存在が無くなります。だから…生まれ変わりとか無理ですね。」
悠 「えっ…」
死神 「ずっと探してたんですけど、なかなかすばしっこくて参りましたよ。」
悠 「…」
俺は動かなくなった澪を見て澪の葬式を思い出した。
悠 「…待ってくれ。俺、まだ澪に死んだ理由聞いてないんだ。」
死神 「それなら、私がお話しますよ。えっと、雨宮、雨宮…」
死神はメモ帳をペラペラ捲っていた。
悠 「ち、違う。そんな紙に書いてあるのを人伝に聞くんじゃなくて…何で死んだのかは直接聞きたい。」
死神 「…と言われましてもねぇ…こっちも仕事なんですよねぇ…」
悠 「…お願い。お願いします。俺、妹が何で死んだのかも分かんないで、どうやってこれから生きて行けば良いのか…」
死神は手帳をペラペラ捲りながら、あるページで手を止めて少し見てからこっちを見た。
死神 「…わっかりました。じゃあ、明後日の夜明けまでですよ。私も鬼じゃないんでね。クリスマスの贈り物としましょう。」
死神が指を鳴らすと死神と死神が持っていた棒が消えて澪が倒れ込んできた。
受け止めようとすると澪は俺の体を擦り抜けて地面に倒れた。
悠 「…死んじゃってたんだよな…澪…」
俺は、部屋を出て親父の部屋に行った。
親父はベッドに座りながら写真を見ていて俺に気づくと驚いて写真を落とした。
俺が写真を拾うと、それは火事の前に俺ら四人で撮った写真だった。
俺らが撮った最後の家族写真…
父 「な、何だ、勝手に。」
悠 「親父。今日の仕事、休んで。三人で過ごそう。」
父 「はぁ?できるわけないだろ。こんな急に…」
悠 「…頼むよ。三人で過ごせる最後のクリスマスなんだよ。」
父 「…」
親父は俺の真剣な顔を見て、部屋に飾ってあった母さんや澪の写真を見た。
父 「…分かった。」
悠 「ありがとう。澪と過ごせる最後の日だ。お互い、素直に行くぞ。」
父 「ま、待て。最後って?」
悠 「…最後だ。」
父 「…」
俺たちは少しだけ眠って、朝早くに三人でドライブに出掛けた。
澪 「どこ行くの?」
悠 「澪はどこ行きたい?」
澪 「んー、海が見たい。」
悠 「よし、親父、海だ。」
父 「分かった。」
俺たちは、澪が行きたい場所に次から次へと向かった。
海や展望台、遊園地に水族館、動物園。
気付けば夜になっていて家に戻った。
父 「…悠。澪を連れて先に戻っていなさい。少し、出掛けてくるから。」
悠 「えっ、いつ戻るんだよ。」
父 「すぐ戻る。」
家に入って親父と俺で澪に買ったぬいぐるみやおもちゃを一緒に見ていると親父はすぐに帰って来た。
父 「よし、今日は、パーティーするぞ。」
親父は、ホールケーキとごちそう、そしてプレゼントを買ってきていた。
悠 「…親父、やるじゃん。」
父 「さぁ、いっぱい食べろ!」
澪も楽しそうにケーキのろうそくを見たり俺らが食べる姿を見たりしていた。
十年以上もクリスマスなんて縁のない家族だったけど、その十年分以上のものを取り戻すくらい楽しい時間だった。
親父からもらったプレゼントなんて何年ぶりだか分からない…俺は楽しいのに自然と涙が出てきていた。
パーティーも終わり、親父と俺で片づけをして、澪はソファで小さなクリスマスツリーを嬉しそうに眺めていた。
父 「…悠。」
親父に小声で呼ばれ、俺は親父に近づいた。
父 「…澪はどこだ?」
悠 「ソファんとこ。楽しそうにクリスマスツリー見てる。」
父 「…そうか。買ってやって良かった。」
悠 「…親父。俺、澪が死んだ理由聞こうと思う。親父は聞きたい?」
父 「…お前と二人きりの方が澪も話しやすいだろ。後で聞かせてくれ。」
悠 「…分かった。あと、ありがとな。いろいろと。」
父 「…こちらこそ。」
親父は食器を片付けるとソファに向かった。
父 「澪?」
俺が親父をソファに座らせると、澪は親父の隣に座った。
父 「…いろいろと不甲斐ない父親ですまなかった。でも、澪とまた話したり過ごしたりできて楽しかったよ。澪。」
親父は泣くのを堪えながら澪がいる方向に手を伸ばして頭を撫でるような仕草をした。
澪は嬉しそうに笑顔で親父を見ていた。
父 「…じゃあ、先に寝るから。おやすみ。」
親父が部屋に戻ると俺は澪の隣に座った。
クリスマスの夜は終わり、日付も変わっていた。
残り時間は後少しだけ…




