04
バイトを終わらせ駆け足で家に帰って俺は前に買ったカレーの材料からカレー粉の箱の説明書きを見ながらカレーを作った。
でも…もう夜の十時半…
ぜんっぜん帰って来ない…
悠 「ったく…門限決めとくんだった…」
俺が家に帰るときには澪はいつも帰宅していて夕飯を作ったり勉強したりしていた。
机に座って冷めていくカレーを見ながら俺はずっと待っていた。
十一時半を周り俺がコートを着て探しに行こうとすると澪は帰って来た。
悠 「っ、遅い!」
澪 「えっ…ご、ごめん。」
悠 「中学生が何時まで出歩いてんだよ。あぶねぇだろ。」
澪 「中学生って言ったって、もう死んでるんだけど?」
悠 「…そ、そういう問題じゃない。」
澪 「この匂い…カレー作ったの?」
澪は俺を擦り抜けてリビングに向かった。
悠 「ったく、あいつ…」
澪 「カレーだ!凄い!」
悠 「…」
リビングに行くと澪は嬉しそうに跳ねながらカレーを見ていた。
澪 「食べて!おいしそう!」
悠 「…温めてからな。」
電子レンジでカレーを温めて俺は澪の前にもカレーを置いた。
澪 「…お兄ちゃん?」
悠 「いただきます。」
澪 「…美味しい?」
悠 「美味しいよ。」
澪 「…食べたいなぁ。私も。」
悠 「…」
澪 「…」
俺が食べ終わるまで澪はずっとカレーを見ていた。
悠 「…で、どこ行ってたの?」
澪 「あっ、警察署。見てきたの。あの火事を調べた資料。」
悠 「えっ、物に触れられないのにどうやって?」
澪 「まだ調べてた刑事さんが居たの。ってか、私が死んだからもう一度調べ直してたっていうのが正しいのかな。」
悠 「…何か分かった?」
澪 「警察の人は事件と事故、そして自殺の線で調べてた。でも、気になったのは身内や知り合いの犯行じゃないかって強く主張した刑事さんが居たみたい。」
悠 「えっ、何で?」
澪 「お母さん、火事の少し前に警察署に相談に行ってたんだって。変な手紙が来るって。」
悠 「えっ?そんなの見たことないんだけど。」
澪 「その手紙の中に身内しか知らないような内容も書いてあって、お母さんは身内の誰かが送って来ているんじゃないかって。」
悠 「…あいつは知ってんのかな。」
澪 「今日、分かったのはそれくらいかな。」
悠 「そうか。何で、捜査のために出掛けたのに行先言わなかったんだよ。」
澪 「んー、心配すると思って。」
悠 「…心配はするけど。まぁ、今度からは俺も行くから。」
澪 「お兄ちゃんは入れないでしょ。」
悠 「外で待ってる。一人で行かせらんない。」
澪 「…まぁ、良いけどさ。」
それから二日後、親父が帰って来て俺は親父を机に座らせた。
父 「何だ、帰って来て早々。」
俺は、親父の前にカレーライスを置いた。
父 「…何の真似だ?」
悠 「良いだろ、今日くらい。」
俺は、自分の前にもカレーを置いて食べ始めた。
親父も首を傾げながら食べ始め、澪は俺の隣で見ていた。
悠 「…聞いても良いか?あの火事のこと。」
父 「っ、何だ、急に。」
悠 「母さんの火事。覚えてんだろ?」
父 「…当たり前だ。」
悠 「…母さん、誰かに恨まれてたのか?」
父 「さぁな。でも、俺の身内は皆嫌っていた。」
悠 「っ、何で?」
父 「…あいつの家系が気に入らなくてな。」
悠 「家系?」
父 「…如月家。お前は知らないと思うが、母さんは如月家の出身でな。如月家は数年に一度生贄を神様に捧げていた。しかも、生贄は女性に決まっていて母さんもその候補の一人だった。」
悠 「…ちょ、ちょっと意味が分からない…」
父 「…俺も最初聞いたときは意味が分からなかった。でも、あの火事の少し前から手紙が届き始めたんだ。差出人は不明。誰かが自分で家のポストに入れていた。手紙の内容から身内の人間が送って来ているって母さんは言っていた。如月家関係者であることは伏せていたが警察にも相談していた。」
悠 「その手紙、残ってないの?」
父 「…燃えちゃっただろ。何もかも。それに、残っていても俺が燃やしていた。」
悠 「っ、何で?」
父 「…次は、澪が危険になる。そう思ったんだ。だからあの火事の後、すぐに遠くに引っ越して行方も分からないようにした。」
悠 「…そういうことか。あの頃、野菜配達のトラックがあの辺をうろついていたって聞いた。母さんも頼んでいたのか?」
父 「野菜?あいつは料理があまり得意ではなかったからな。野菜を頼むなんてことしないと思うし、そんな話も聞いてない。」
悠 「そう…」
父 「…あの件にはおそらく如月家が絡んでいる。如月家は手段を選ばずに人を消す。野菜配達員を名乗って家に近づいたとしても不思議じゃない。」
悠 「…」
父 「…もう良いか?ごちそうさま。」
親父はカレーライスを全て食べ切って立ち上がろうとした。
悠 「待って。俺らの身内で腕に火傷の跡みたいなのがある奴って居る?」
父 「…腕か。如月家の連中は知らないが、俺の家系には居ないはずだ。」
悠 「…分かった。話してくれると思わなかった。」
父 「…久しぶりに手料理を食べた。なぜか、澪のカレーライスと同じ味だった。」
悠 「…ふっ、最後に一つだけ聞いて良いか?何で、そんな血縁関係のある母さんを選んだんだ?」
父 「…それ以上に好きだったからだろ。んなこと言わせるな。」
悠 「…分かった。ありがとな。」
親父の言葉に無意識に顔が緩みそうになったけど、俺は必死に堪えた。
悠 「…あんたも自殺じゃないと思ってんの?」
父 「…あの頃、澪もそう言ってた。でも、長く引っ張れば引っ張る程、如月家が怪しいと感じてな。お前たちのこともあったし、さっさと手を引いて身を隠すことが一番だと思ったんだ。でも…あいつは自殺はしてない。するような奴じゃない。あのときも、澪の誕生日を心待ちにしていたんだ。」
悠 「…そうか。」
父 「…お前、この件に首を突っ込むのは止めろ。如月家が絡んでいる可能性がある以上、危険だぞ。俺は、お前たちを守るために全てを捨てたんだ。」
悠 「…あぁ。ご忠告、どうも。」
親父が部屋に行くと俺はカレーライスの残りを食べて食器を片付け、部屋に戻った。




