3話:魔法のイメージー②
二人で練習を重ねるうちに、ミラは少しずつ魔力のコントロールができるようになってきた。
「だんだんコツが掴めてきた気がする!」
「確かに、暴走も減ってきたな……」
ピクルは腕を組みながら、素直に感心していた。
「ぴーちゃんのおかげだよ~。教えるの上手いよね!」
「まぁ、お前のクセはよく知ってるからな」
少し照れくさそうに目を逸らすピクル。
その様子に、ミラも嬉しそうに目を細める。
「それにね、これも上手くなったんだよ!」
ミラが手をひらりと振ると、足もとの草が光り、次々に花が咲いていく。
――花を咲かせる魔法。
今まで魔法を形にできなかったミラにとって、唯一“成功した”魔法だった。
「……これは、もういいだろ? もっと上級魔法を練習しろよ」
花を咲かせる魔法は、もともと“ある”ものを成長させるだけの〈加工魔法〉。
火や水といった“何もないところから生み出す”〈創造魔法〉に比べれば、下級魔法と呼ばれる。
「え? ぴーちゃん、もう蜜吸わないの?」
しゃがんで花を見ていたミラは、驚いて顔を上げる。
「当たり前だろ。今は普通の食べ物も食べられるんだぞ」
「そっか……」
ミラはしょんぼりと肩を落とし、咲いた花を指でつんとつつく。
けれど、どこか名残惜しそうにその花を見つめる。
「でもさ、不思議だよな」
ピクルはふと呟く。
「これだけは昔から上手くできてた。
いくら下級魔法っていっても、他は全然形にならなかったのに」
その言葉に、ミラの脳裏に懐かしい光景がよみがえった。
幼体の小鳥だったピクルは、花の蜜が大好きだった。
ミラが魔法で花を咲かせるたび、嬉しそうに羽をばたつかせ、蜜を吸う。
その姿を見るたび、胸が温かくなった。
ーー自分の魔法で誰かを笑顔にできるなんて。
(あのとき、ぴーちゃんが喜んでくれたから……やっと役に立てたって思えたんだ)
その気持ちを、ただ真っすぐに魔力へ込めていた。
どうやったら喜んでもらえるか、どうしたら花を咲かせられるか――
その全部をイメージできていたから、力が自然に流れたのだ。
今ならわかる。
魔法は“イメージ”がすべて。
だから、これだけは最初からうまくできたんだ。
ーー今のぴーちゃんにはもう必要ないかもしれないけど……
「私が初めて使えるようになった魔法だもん! もっと上手くなりたいんだよ!」
「そうだったな……ま、他の魔法もちゃんと練習しろよ」
ピクルは呆れた顔をしつつ、どこか少し嬉しそうだった。
「わかってるって!」
ミラも笑顔で返す。
その笑顔の奥には、少しの寂しさと、でもそれ以上の誇りが光っていた。




