表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/18

2話:落ちこぼれ魔法使いー③

「そろそろ家に帰ろっか」

「あぁ……」


 ミラが声をかけるが、ピクルの反応は鈍い。 

 ふと顔を見ると、少し青ざめていた。


「ぴーちゃん!? 大丈夫!?」

「大丈夫。まだこの体の調子が掴めてねぇだけだ」


「そうだったんだ……ごめん……」


(ぴーちゃんが無理してたの、気づけなかった……羽化したばかりなのに……)


 ミラはぐっと拳を握り、勢いよく顔を上げた。

「よし! ぴーちゃんはそのまま寝てて! 私が魔法で家まで送ってあげる!」


「お、おい、そんなのお前には無理だろ?」

「大丈夫! さっきなんとなく掴めたから!」


 ミラが手をひらりと振ると、柔らかな光がピクルを包み込み――

 次の瞬間、ピクルの体がふわりと宙に浮かんだ。


「……おい、すごいな。ほんとに浮いた……」

 ピクルが驚いて目を丸くする間もなく、ミラは嬉々として叫んだ。


「よしっ、このまま家まで――ひとっ飛び〜っ!」


 光が一気に加速する。

 風が唸りを上げ、景色が瞬く間に流れ去った。


「やめろ!! 速っ! 速すぎる!! 死ぬ!!」

「わ、わ、わーっ!? ごめんごめん!!」


 練習場を一周したところで、ようやく光が止まる。

 ピクルは青ざめた顔で地面に降り立ち、ふらつきながらも息を整えた。


「マジでやめろ……心臓止まるかと思った……」

「えへへ、ごめーん」


「少し休めば歩けるくらいには回復するから。普通に歩いて帰るぞ」

「はーい」



 魔法の練習の帰り道。

 村の子どもたちは、ピクルの姿を物珍しそうに見つめていた。


 村にいるほとんどは子供。しかも大きくても十五歳ほどだ。

 普段見かけない“大人の男”が歩いていれば、気になるのも無理はない。


 ピクルは、じろじろと向けられる視線に気づき、鋭い目で睨み返した。

 その一瞥に、噂話をしていた子どもたちは一瞬で青ざめ、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


「チラチラ見やがって……むかつく」

 ピクルは軽く舌打ちしながら、足を速める。


「まぁまぁ。もうちょっと笑った方がいいよ〜。笑顔笑顔」

 ミラが苦笑混じりに宥めるが、ピクルはそっぽを向いたままだ。


 ふと、その視線が止まる。


 道の先――木立の向こうに、焼け焦げた小屋が見えた。

 壁は黒く炭化し、屋根の一部は崩れ落ちている。

 風が吹くたびに、灰がふわりと舞い上がった。


「……火事か? ここって何の小屋だっけ」


 ピクルの問いに、ミラの表情が一瞬だけ強張る。

 けれどすぐにいつもの笑顔で答える。


「たぶん、前から壊れてたんだよ〜」


 ピクルは首を傾げながらも、それ以上はも言わず、ミラの隣を歩き出した。


 夕暮れの風が二人の間をすり抜けていく。

 焦げた匂いだけが、どこかにまだ残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ