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9話:いざ入学試験へー②

 試験がすべて終了し、会場に緊張と静寂が漂う。


「それでは、個別試験の合格者を発表する」


 校長の声が響き、候補者たちは息を呑んだ。

 次々に合格者が発表される中ーー

「ミラベル・アーデン、合格とする」


 その名前が呼ばれると、ミラは一瞬目を見開き、次の瞬間、自然に笑みがこぼれた。

 周囲からも小さな驚きと拍手が湧き上がる。


 ピクルは胸に誇らしさを抱きつつも、目元にわずかな影が差し、寂しさを押さえきれなかった。

(……これからは、もう別々の道なのか……)



「よく頑張ったな。おめでとう」

 ピクルはミラに近づき、声をかける。


「ありがとう、ぴーちゃん!」

 嬉しさのあまり、ミラは勢いよく飛びついた。

 ぎゅーっと抱きしめ、胸に顔を埋め、潤んだ瞳でピクルを見上げる。


「全部ぴーちゃんのおかげだよ……」


「……だから距離近すぎるんだって……」

 ピクルはいつものように笑おうとしたが、うまく笑えない。

 胸がきゅっと締めつけられ、言葉にならない思いが込み上げ、手のひらがわずかに震えた。


(これでこいつともお別れか……寂しいけど、仕方ない)


 その時、現実に引き戻されるように試験会場の係員が近づいてきた。

「あ、君合格者だよね? この書類に記入してね」


「はい!」

 ミラが意気揚々とペンを取る。


 すると、係員がピクルにも書類を差し出した。

「君、この子の使い魔だよね? 君はこっちの書類に記入して」


「は? 俺は関係ないだろ?」


「何言ってんの、ぴーちゃんも入学するんだよ!」


「……どういうことだ?」


「魔法使いと使い魔は一心同体、常に一緒でしょ? 使い魔も一緒に入学するのが条件なんだよ」 

 ミラは当たり前のように答えた。


 ピクルは一瞬、頭の中が真っ白になった。

(……え? な、何を言ってるんだ……?)


 言葉が出ず、しばらく立ち尽くす。

 胸がドクドクと高鳴り、衝撃が体中を駆け巡る。  

 ようやく息を整えて、口を開いた。


「え、お前、入学したら”離れ離れになる”って言ってたよな?」


 ようやく言葉が追いつくと、衝撃が全身を駆け巡った。


「だって、寮に入ったら、ぴーちゃんと別の部屋になっちゃうでしょ! 一緒に寝れなくなるんだよ!」

 ミラは頬を膨らませ、真剣に不満を訴えるように言った。


「はぁ!? なんだよそれ!? ややこしい言い方すんなよ!!」

 思わず膝から崩れ落ち、頭を抱えて叫ぶピクル。


 でも、ふとミラの真剣な表情を見ると、苦笑せずにはいられなかった。

(通りですぐに切り替えたはずだよ……つーか……)


「……そんなくだらないことで、行くの迷ってたのかよ!? まじでありえねぇ……」


「そうだよ。だってずっと一緒って約束したでしょ?

 別々の部屋になっちゃうなんて、大問題だよ!」

 呆れ顔のピクルをよそに、ミラは当然のことのようにきっぱりと言った。


(……覚えてたのか……)

 ピクルの胸に、ふわりと温かいものが広がる。

 ミラは前を向いていて、昔のことなんて忘れているのかと思っていた。


「まぁ、一緒に寝れないのは我慢するよ……チューはしてもらえるからね」

 ミラはにやりと笑い、無邪気にピクルを見上げる。


「あれは最後だと思ったからだ! 毎日会うなら必要ねぇよ!」

 ピクルは顔を真っ赤にして否定する。


「えー!そうなの〜?」

 ミラがしょんぼり肩を落とすと、ピクルは思わず吹き出した。


「まったく……ほんと、お前ってやつは……」

 呆れながらも、胸の奥にゆっくり温かさが広がるのを感じた


「まぁ、これからも、よろしくな」

 少し照れくさそうに言いながらも、言葉には重みが込められていた。


「うん。これからもずっと一緒だよ」


 二人は顔を見合わせ、自然に笑い合う。

 何気ない、でもとても幸せな時間――

 未知の魔法学校での新しい日々が、静かに、でも少しわくわくした気持ちで始まろうとしていた。


 ――こうして、ミラとピクルの魔法学校での冒険が幕を開ける。

 山の村を離れ、未知の世界〈インペリアル〉へ――。

 そこには、ふたりを待つ新たな出会いと試練があった。


 ― 第一部 完 ―






 ここまでお読みいただきありがとうございました!

 この第一部の終わりで、ひとつの物語としては一旦完結となります。


 現在、二部「魔法学校編」を執筆中です。

 時期は未定ですが、完成次第公開予定です。


 ここまで読んでくださった皆さまに、心からの感謝を申し上げます。


 ありがとうございました。

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