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生きる希望を失った人へ

ここは様々な事情を抱えた人達が訪れる名前のない不思議な神社。

今日もまた1人参拝客が…

———空が暗い。今日も参拝客が訪れる


鳥居をくぐってきたのは制服に身を包んだ、どこかデジャヴを感じる女子高生。


「ようこそ」

「…」


彼女は自分を無視するように賽銭箱まで気力無く向かう。戻ってきた彼女にもう一度声をかける


「ようこそ。ここは名前のない神社。悩みを持った人だけが訪れる不思議な神社でs…」


彼女は気にも留めず私を遮るように進んでゆく。

あぁ…どこかで知っている気がしたのはそういうことか…


私は彼女の手を掴んで引っ張る


「…なんですか…」

「もう少し生きてみて」

「えっ…」

「あなたは失ったり見放されたりして身を投げ出そうとしているんだと思う。自分がいなくなったって誰も悲しまないと思ってるかもしれない。でも、あなたがいなくなって悲しむ人はどこかに必ずいるんだよ」

「そんなわけ…」

「私が辛いんだよ。そんな顔してここまできて何もできずに、あなたがそのまま死ぬのは見捨てたみたいで辛いんだよ」

「なんでよ…あなたと私は面識もないのに…なんでそんなこと思えるの」

「私がそちら側の人だったから」

「え…」

「私が助けを求めた側の人だったから、助けを求める人に何もできないのは辛いんだよ」

「あんたになにが分かるの!」

「わからないよ…でも、少なくとも辛かったのは分かる」

「ッ…!」

「あなたに生きる希望がないのなら私が希望になる。私はあなたに生きて欲しいと願う」


彼女は崩れ落ちるように座り込む


「わたし…まだ、生きてていいかなぁ」

「うん…生きて」


私は涙を流す彼女を慰めることしかできなかった。


泣き疲れて眠ってしまった彼女の頭を膝に置いて空を見上げる。


先ほどまで曇っていたのが嘘のように星空が広がる。


「ん…」

「おはよう…でいいのかな?」

「私寝ちゃってた…」

「もう直ぐ夜も明けるから」

「ありがとうございました」


そういって鳥居をくぐる彼女の背中を見送る

生きる希望を失った人へ、あなたには生きていて欲しい

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