勇気が出ない人へ
ここは様々な事情を抱えた人達が訪れる名前のない不思議な神社。
今日もまた1人参拝客が…
———まだ日が高い。今日もまた参拝客が訪れる。
鳥居をくぐってきたのはあまり整ってない服を着た男子。多分高校生くらい
「ようこそ」
彼は軽く会釈をしてゆっくり賽銭箱へ向かった。戻ってきた彼にいつものように声をかける
「ようこそ。ここは名前のない神社、悩みを持った人だけが訪れる少し不思議な神社です。あなたの悩みは何ですか?」
「…学校に行く勇気が出ない」
不登校か…それこそ私の生前の友人だってそうだった。直前まで普通を装って、いや装おうとして急に会えなくなった
不登校になる理由は色々あるが、話を聞くといじめがきっかけとなり数年前から人間不信で学校に通えなくなってしまったという
「高校は中学とはだいぶ離れたところを選んだから、いじめてくる奴はいない…だけど…」
「怖いよね」
「はい。それで最初の一歩でさえ踏み出せなくて」
「いや君はもう踏み出してるよ」
「えっ…?」
「だって今までにこうやって誰かに相談したりした?」
「して…ないですけど…」
「なら私とこうして会話できたのは第一歩だ」
「それに、別に初めから無理して周りに合わせようとしなくていい。初めは自分のペースで、それから少しずつ歩幅を合わせていけばいい」
「少しずつ…そうですね、少し勇気が出たかもしれません」
「それならよかったよ」
「初めの一歩を踏み出させてくれて、そこから進む勇気を下さってありがとうございました」
そう言って鳥居をくぐって離れていく彼の背中は心なしか初めよりも速い気がした。
勇気が出ない人へ、少しずつ歩幅を合わせて