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頑張った人へ

ここは様々な事情を抱えた人達が訪れる名前のない不思議な神社。

今日もまた1人参拝客が…

———境内が月明かりに照らされる。今日もまた参拝客が訪れる


鳥居をくぐってやってきたのは制服を来た男性、俯いていて顔は見えないが、高校生くらいだろうか


「ようこそ」


私が声をかけると彼は少し驚いたような顔をしたが会釈だけしてさっさと賽銭箱まで向かう


参拝を終えた彼に私はもう一度声をかける


「お悩みはなんですか?」

「…悩みなんてないです」

「あなたにも悩みがあるはずですよ。ここは名前のない神社。あなたのような悩み事を抱えた人だけが訪れることのできる少し不思議な神社なのですから」


数秒の静寂の後、彼は答える


「少し疲れちゃって」


話を聞くと現在受験期で大学受験に向けて勉強をしているらしい


「模試のたびに周りは点数が上がっているのに僕はずっと変わらず…それでいて親からは期待ばかり向けられる…少し疲れちゃいました」

「そっか…その気持ちは私にも分かるよ」


きっとこの子には労ってくれる人がいないのだ。

だから自分の中で何かが欠けたかのようになって疲れる

その辛さはよくわかる。生前の私がそうだったから

だから私は一言だけ


「お疲れ様」


数秒後、彼は顔をあげて答える


「僕、もうちょっと頑張ってみます。」

「疲れたらきちんと休むんだよ」


鳥居の前で彼は振り返って

「受験が終わったらまた来ます」

「もうここに来ることはないよ」

「え…でも…」

「ここは悩みを抱えた人だけが訪れる不思議な神社。大丈夫きっと見ているから」

「…ありがとうございました」


そうお辞儀をしてから彼は鳥居をくぐる。

今度は顔をあげて

頑張った人たちへ、心の底からお疲れ様

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