表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/39

8 恋人達

 ランカとミナモはテーブルではなく、少し離れた木陰に立ち、ふたりきりで話をしていた。


「これ……」

 ミナモが小さな箱を差し出す。ランカが受け取り「開けても?」と聞く。

 頷かれたので箱を開けたランカはにっこりした。


「素敵! これを私に?!」


 緑と青の石を組み合わせた、ペンダント。

 吉祥文様のひとつである雲がデザインに取り入れられている。


「これをミナモが……?」

 ランカがくすっと笑って続けた。

「見立ててくれたのは……、シズク?」

「あー、一緒には選んでもらったけれど、最終的にこれを選んだのは、俺!」

「ふふっ、そうなんだ。うれしい、ありがとう!

 ミナモの青い瞳と……、私の緑、だね」

「ああ、そういう気持ちを込めた。

 雲にしたのは水と炎を思わせるかなと……。

 俺もここに付けてる」


 ミナモの左手首に同じデザインのブレスレットが付けられていた。


「お揃い?! とってもうれしい! 婚約の贈り物みたい……」

「つけてやる」


 箱からペンダントを出すとミナモがランカの首に手を回した。


「どのくらいの長さ?」

「調節できるんだ?! じゃあ、この服に隠れないようにだと、これくらい?」

「そのまま、いい位置に押さえていて。む、うまく……」

「髪も上げようか?」

「う、頼む」


 ランカは左手を自分の首の後ろに撫でるように滑り込ませ、腕も使って髪を持ち上げた。

 その仕草が意外にもとても色っぽくて、ミナモが赤くなりながら、チェーンを調整してやっとつけ終えた。


「はあ、緊張した……」

「なんで?!」


 ふたりで笑い合って……。


 遠くからそんなふたりの様子を微笑んで見ていたシャーリー。


 その姿はカレンとシズクには違和感として映った。

 そしてもうひとり、シャムザもシャーリーの笑顔は仮面のようだと気がついていた。


 そこへラッシュとサライがやってきて、仲間に加わった。


 シャーリーはラッシュにもにっこりと微笑みかけた。




 ◇◇◇




 巡回の聖女、王妹のローズ。

 結界の聖女、王姉のシャイン。


 今のこの世界の人の世を支えている聖女ふたりだ。



「話が違います!!

 次の巡回が終わったら、私は王都に留まって、聖女としての務めさえ果たせば、自由にしていいと!

 アカリが成長してきているからと!

 それに聞きました。アカリより年長の聖女がふたりも発現したのでしょう?!」


 王は妹で聖女であるローズに話しかけた。


「事情が変わったのだ。

 確か次代の聖女は3人となった。

 しかし、砂家に対しての不遇が続いてしまっている。

 聖女であるお前が砂家に嫁いでくれるとありがたい」

「私は、王家から四家に与えられる褒美なのですか?!

 兄様に、王にお仕えして、長年、巡回の聖女をやってきました。

 それは後悔はしていません。

 でも、結婚のことを言われるのなら……、私だって結婚したい方がいました!」


「聖女に結婚は禁止ではない。

 姉のシャインは結界縁の領地を任せている将軍と結婚しただろう。

 ローズも結婚しても良かったのだぞ」

「何を御冗談を!

 あなたが風家のソヨカ様を王妃とされたから、私とアラシの結婚がなくなったのでしょう!!

 まだ、風家当主となったアラシの後妻にという話なら……。

 なぜ砂家?!

 私は物ではないのですよ!」

「すまぬ、砂家にしてやれることが……」

「砂家のサーシャとラッシュ王子でも、婚約させればいいじゃありませんか!」

「いや、ラッシュは別の家の姫を望んでいる……」


「自分のお子の希望は聞くのに、自分の姉妹である私達には王家の、五聖家の都合を押し付けるのね!

 本当に信じられない……」

「すまん、ローズ。

 次の巡回には新しい聖女を引継ぎのためにひとり必ずつける。

 砂家の当主はいい男だ。縁組を考えてみてはくれぬか?」


 ローズがここまでの会話の中で初めて戸惑いの表情を見せた。


「それは私も知っています。

 彼は友人ですから……。考えるだけなら……」


 聖女ローズは後ろも振り返らず、王の部屋を出た。


「今さら、後妻に入れと?! 38になる私に?!

 砂家もこんな行き遅れの聖女を押し付けられて、褒美にすらならないだろうに……」


 つい独り言を口に出してしまうローズ。

 砂家のサーベイは別に嫌いではない。友人だ。

 

 そして、ローズの恋人であった風家のアラシの親友のサーベイ……。

 いい人だとはわかっている。

 けれども、そうなると風家の当主であるアラシとまるで過去などなかったのかのように会い続けなくてはならない。


「冗談じゃないわ。

 シャインだって、選択肢がない中で、近くいる将軍のプロポーズを受け入れただけ。

 たまたまそこに愛が育って、いい結果になったけれど……」


 王は誰を巡回の聖女と結界の聖女にするつもりなのだろう。

 3人ということは王都に残る神殿の聖女もいるということだ。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ