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39 元第1王子の?

 朝、フウライが水家を訪れるとシズクが眠そうな表情で現れた。


「フウライ、いらっしゃい……」

「どうしたんだ?」

「一晩中、ランカが生まれてからのことを……」

「えっ?」


「……大変だったんだからね! ランカを今世に引き戻すの!

 でも、エステル率はかなり薄まったと思うわ」

「……なんだ? そのエステル率って?」

「……あなたのダーシー率はどんな感じ?」


 フウライは話の意味がつかめたようで、頷いた。


「そういうことか。私はもうフウライ100%だ」

「本当? 

 ミナモとランカは眠気冷ましに庭へ出たけど……」


 そこでシズクはあくびをした。


「少し寝させてもらうわ……」


「えっ? 来いって言っておいて?」

「それはミナモでしょ」


 水家と炎家の人間は、まったく……。


 フウライは庭へ出た。

 庭の中を進んで、座れそうな場所を見て回る。


 庭の四阿あずまやでミナモとランカがもたれ合うように座って寝ている。


「まったく……」

 そう言いながら、フウライの表情はやさしい。


 シズクの言った言葉を思い出す。

『大変だったんだからね! ランカを今世に引き戻すの!』


 フウライは微笑んでランカの頭を撫でた。


「ううーん?」

 ランカが伸びをして目を開けた。


「あれ? フウライ?

 わっ! フウライ?!

 ミナモ、起きて! フウライがもう来てる!」


 ミナモがランカにゆっさゆさとゆすられて、ぶつぶつ言いながら目をしばしばさせた。

 やっと目を開けると、急に話し出す。


「フウライ、昨日のことは伝えた」


 フウライは少し笑って「ありがとう、で?」と聞いた。


 ランカが少しぼーっとした顔でふにゃっと笑った。

 幼い頃のランカを彷彿とさせる笑顔だった。


「私は前世を思い出す前から、ミナモが好き。

 そうして、フウライも、思い出す前から、私をかわいがってくれてたよね。思い出したよ。

 ありがとう……。

 フウライは五聖家が大きな家族なら、長男みたいな……、とっても頼りになる……」


 フウライは微笑んでまたランカの頭を撫でた。

「じゃあ、これからは……、家族としてよろしくな」

「うん!」


 ランカの頭を撫で続けるフウライにミナモが「もういいだろ?」と言う。


「いいじゃないか、ずっとランカに避けられてて、私は寂しかったんだから……」

「……なんか、ちょっと俺が嫌だ」


 ランカがまたミナモにもたれて寝てしまう。


「どんだけ無理させたんだ?」

 フウライの言葉に「無理なんてさせてない!」と言いながら赤くなるミナモ。


「ははっ、無理させたのはシズクかっ!」

 フウライが大きな声で笑い出した。



 テオドアが王都学院の寮に戻ったのをきっかけに、カエンとサーシャも王都学院に通学することになった。

 王と四家の主達が話し合い、もっと広く視野を持ち、五聖家以外の家との繋がりや人間関係を持つことをさせたいとなったのだ。



「私も学院に行ってみたかったな」

 フウがカエンとサーシャの話を聞きながら羨ましそうに言った。

 

 ここは王城の庭。四家の子ども達が久しぶりに会って話をしている。

 

 王都学院は16歳で卒業なので、フウとサライは通ったとしてもすぐ卒業になってしまうため見送られたのだ。


 ランカがフウに言った。

「なら、神殿に遊びに来れば!

 勉強というか……、地方からの報告が来るからそれを読むのも面白いよ。

 それに私達と同じくらいの貴族や平民の女性が奉仕活動というか、たくさん来てるよ!」


「……それはブライトのファンクラブだろ?」

 サライが苦笑しながら言った。


 ブライトは神官見習いとして神殿で働き始めた。


 元王子であり、光魔法と風魔法も使え、さらに将来は神殿長になることがほぼ約束されている。

 

 憧れる女性は多い。


「まあ、ブライトには良かったかもな」

 シャムザが笑った。


 サーシャが「アカリはどうしてる? 手紙が来たのでしょう?」とランカに訪ねた。

 ランカは頷いて微笑んだ。


「うん、アカリ様は元気だよ。

 シャイン様の所で聖女として修業中。頑張ってるって!」

「ふふふ、シャイン様ってどんな方なんでしょうね!

 今度ランカは会いに行くんでしょう! 楽しみね!」

「今回はシャーリーとローズ様が巡回に行って下さっているからね」


「うふふ」

 カレンがフウと顔を見合わせて笑った。

「サーベイ様がローズ様の護衛で、フウライがシャーリーの護衛、なんてねぇ……」


「あ、私が次に行く時は、お父様と風家のアラシ様も来るんだよね?!」

 ランカがミナモに確認するように聞くと、ミナモはむすっとして言った。

「護衛、俺だけで大丈夫なのに、さ」


「あはは、お父様達は辺境で魔物狩りをする気なんだよ。

 アカリ様の様子も見たいってこともあるだろうし。

 シズク! ラッシュ! お疲れ様!!」


 ランカがこちらに向かってくるシズクとラッシュを見て、手を挙げて呼びかけた。

「王と王妃の教育、ご苦労様!」

 

 シズクよりラッシュの方が疲れている様子。

 ミナモとシャムザが椅子に座らせ労わっている。


「頭がパンクしそう……」

 泣き言を言うラッシュにシャムザが答える。

「大丈夫、何度かくり返せば覚えられるから」


 シズクが「午後はシャムザやカレンも一緒に復習しましょう!」と微笑んだ。


 ラッシュが「サライ、ミナモも一緒に!」と言うと、ミナモが「あー、午後はランカと神殿に行くんだ」と笑う。


「てめー、逃げるのか?!」

 サライの言葉にフウが「サライ! 口が悪い!」と注意している。


「じゃあ、私達はもう行くね!」

 ランカがミナモの肩をポンポンと叩いて促して立ち上がってから、みんなを見回してふふふっと笑った。


「何? ランカ? 何で笑ったの?」

 カレンに問われてランカは答える。


「第1王子がなかなか婚約者を決めてくれないから、みんなであんなに悩んで……、さらにそこに付け込まれて、暴動や反乱まで起きちゃってさ。

 大変だったけど……。

 でもさ、そのおかげで、じっくり考えることができたから。

 みんな、自分の気持ちとか……。

 どうしたいかってことがはっきりわかったんだな……って」


「……そうね。元第1王子ブライトのおかげ?」とシズク。

「えー、あんなに悩まされたのに、ね」とカレン。


 ふたりは顔を見合わせて笑った。


 ラッシュとシャムザがふたりをやさしく見ている。


「ランカ、行こう!」

「うん、ミナモ!」


 ミナモの差し出した手にランカは手を伸ばし、しっかり握り合うと微笑んだ。



 ◇◇◇ 完 ◇◇◇

最後まで読んで頂き、本当にどうもありがとうございます。

最後までブックマークをし続けて下さった2名の方、途中で評価をして下さった方。

本当に励みになりましたし、うれしかったです。ありがとうございます!


五聖家は西洋風な家と中華(和)風な家がありという世界観で楽しく書きました。

特にランカは戦うことにも興味があるので袴のような馬にも乗りやすい服装をイメージしてます。

聖女の服も動き回ることが多いので布地がたっぷりなスカートに見えるけどズボンでもあるという感じ。

シズクやカレンなどの登場人物にはお好きな服装を自由にイメージしていただけたら!


全員が主人公というか、みんなの気持ちを書きこむことができて、書いてて楽しかったです。

なのでいくつかの話が同時進行で進むというちょっと複雑な構成にも挑戦してみました。

タイトルの軽さのわりにもっと重い話になっちゃうかな? と思ったのですが(実はカレンが怒りと悲しみで魔力暴走を起こすとか、フウライももっと悪役にするとか構想段階では浮かんでました)、なんだか登場人物達がすごくやさしくて。

特にシズクやラッシュ、サライが暗く重くなりそうなところを助けてくれました。

人の心の複雑さを書きながら、やさしさもある、私にしてはかわいい話になったかなと思います。


今まで、『一人称』の作品が多く、『登場人物の気持ちを一切書かない見たまま三人称』(ギルティなギルロッテ)に続いて、『その時のメインの登場人物の気持ちに触れつつ三人称』という文体にも挑戦してみました。

どうだったでしょうか?

感想や評価を頂けたらとてもうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

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