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35 前世と今世

 シズクとカレンが城に戻ってきたみんなを迎えてくれた。


「シズク、カレン、王城の守りをどうもありがとう」

 王は丁寧に礼をされ、それを受けてふたりは微笑んだ。


「お役に立てて良かったです」とシズク。

「四家の者として、すべきことをしただけです」とカレン。


 ラッシュがシズクに歩み寄り、お互いに微笑み合う。


 オウカがスイレンに『見ろ!!』とばかりに肘でつついてニヤリとした。


 スイレンが小さい声で言った。

「カレンはどうするんだ?」

「カレンは自分で決めると思うぞ。炎家の女だからな」

「ブライト様か、それとも?

 まあ、3人姉弟、一気に決まりそうだな。

 炎家はめでたいな」

「それを言うなら水家もだろ?!」


 そう言い返しながら、オウカは少し寂しげな顔をした。



 それぞれ部屋で休むことになり、フウライとミナモが戻ってきたら、王から話があるということになる。


 シズクとラッシュがランカのそばに来た。


「どうしたの? 何かまだ心配なことが?」

 シズクがランカの表情を見て言う。


「……ミナモも、前世のことを思い出したの……。フウライと……、兄弟だったと」


 シズクは驚いてラッシュと顔を見合わせた。


「でも、悪いことではないだろう……」

 ラッシュが慰めるような口調で言った。


「そうなんだけど……。

 前世で、エステルとエルラドは、お互いを守り合おうとして、取り返しのつかないことを……。

 エルラドを助けるためとはいえ、私はエルラドを裏切ってダーシーと……。

 そんなことまでミナモが思い出しているとしたら……、それは、辛い……」


 ランカの瞳に涙が盛り上がり零れ落ちる。


 シズクがあわててランカの肩を抱き寄せた。

「それは前世の時の話でしょ! もう終わったこと!

 ミナモだって、そうわかっているわよ」

「そうかな……、実際、私は……、フウライを許せていなかった……。

 わかっていても、納得できないこととか、忘れようとしても忘れられないことが、あるから……」


「ミナモは前世のことも含めて、全て、今のランカのことを愛しているから、心配するな」

 ラッシュが言った。


「前世もすべて……」

「ランカだってそうだろ。

 エルラドのこと、のこのこ自分を助けに来て死んだバカな男だと、嫌いになったか?」

「……ううん、それはない!」


「今のランカもミナモも同じだと思うな。

 それにミナモは、そんな小さなことにこだわる男じゃないと思うけど」


 ラッシュの言葉にランカは頷いて涙を指で拭うと微笑んだ。

「ありがとう、ラッシュ……。なんだか、気持ちが楽になった」


 サライが「どうしたの?」とやってきた。


「ううん、大丈夫。ラッシュとシズクと話して落ち着いたから。

 サライもお疲れ様」

「ミナモのこと?

 フウライと屋敷の方に行ったんだっけ?

 心配なら、迎えに行ってこようか?」

「大丈夫! サライはラッシュのそばにいて。

 ミナモなら大丈夫。

 そういえば、アカリ様は?」


「ローズ様がついていてくれて、途中からフウとサーシャとカエンも一緒に。

 さっき、シャーリーも行ってくれたわ」

 カレンがシャムザと一緒にこちらに来ながら教えてくれた。


「だから、ランカは少し休め」

 シャムザも微笑んでくれる。


 ランカが周囲を見回すと、王と父達四家の主はもう違う部屋へ移動してしまっていた。


「申し出が出ていたミナモとランカの婚約について決めるって言ってたよ」

 ランカの表情に気がついてシャムザが教えてくれた。


「そうなんだ……。

 ブライト様はどうするんだろう?」

 ランカの呟きに、シズクがさらにランカを抱きしめる。


「もういろいろ気にしない! ミナモとの幸せのことだけ考えときなさい!」



 フウライとミナモが王城に戻ってきた。

 その報を聞いて出迎えたランカには、ふたりがまるで前世の時のような……、最初にダーシーと会った時に感じた、仲の良い兄弟のように見えた。


「ランカ!」

 ミナモがまっすぐランカのところに来て抱きしめてくれた。


「御無事で……、おかえりさない」

 ランカもミナモに抱きついた。


 フウライがゆっくりとふたりの方に近づこうとした時、オウカとアラシが現れた。


「おう、ご苦労さん!

 広間に集まってくれ! 決まったことを発表するから!」


 オウカに言われてフウライが苦笑する。


「……本当に人使いが荒いなぁ。

 私とミナモ、少しは休ませて下さいよ!」


「話聞きながら休めばいいだろう。

 俺達だって話し合いしてたんだぞ」


 オウカの言葉にアラシが言った。

「人の息子をそうこき使えるのは、お前の……、何だろうな?」

「何だと言われても……、そうだな、人徳か!」


「お父様……、違うと思いますよ」


 ランカが笑った。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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