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33 五聖家とは

 ランカが移動すると、光の防御魔法を神殿前の方へ広げる結果となる。

 手薄になる広場の辺りはラッシュとシャーリーが補強する。


 シャムザが砂魔法を発動させる。

 小さな、砂を含んだ小さな竜巻のようなものがいくつか立ち上がり……、人の形になる。


 その砂の人型は素早く移動して行き、揉み合っている人と人の間に入り、その隙に逃げようとする神官や騎士はこちらに走ってくる。


「逃げる者はそのまま広場へ走れ!」

 フウライの声が響いた。


 神殿から矢の追撃があったが、光の空間に入ることで失速し、ミナモが水魔法と風魔法を組み合わせて重い風で撃ち落とした。


 砂の人型ごと斬られそうになった神官を助けようと、フウライが強い風をピンポイントで打ち出した。

 剣を振り上げた貴族の全身と顔に風魔法で崩れた人型の砂がべったりと張りついた。

 声にならない呻き声のような悲鳴を上げ、貴族が砂を顔から払い落とそうとのたうち回る。


 ランカとミナモがそれを見てマネし始める。


「おい! ちょっとやめろ! 私のゴーレムを武器扱いするな!」

 シャザムはそう言いながらもなんだか楽しそうだ。


「俺の出番はあまりないな……」

 オウカがつまらなそうだ。


「……お父様がここで炎魔法を使うと火事になっちゃうよ。

 最初の矢だって……、フウライが水を含んだ風にしてくれたから良かったけど……」

 ランカがオウカを諫めるように言った。


 広場のこちらの陣まで逃げて来られた者は保護され、サライとスイレンが対応し武装を解除させ記録を取って後方の騎士達に引き渡された。

 シャーリーが怪我をした人達の治療をしている。


 馬上からその様子を眺めてた王が、隣のラッシュに笑いかける。


「五聖家の結束は素晴らしいな!

 ……この結束を危うくしたのは……、私とブライトとアカリが……壊すところだったのか……。

 いや、私がもっと強く言っていれば……、いや……」


 王の声が少しずつ歯切れが悪くなり、小さくなった。


 ラッシュが静かに微笑んで答えた。

「時には五聖家としてより自分の考えを大切にしたいと思う者がいてもいいのでは?」

「それはブライトのことか? それとも……」


「うーん、どう言えばいいのかな。

 ブライトが……、第1王子が婚約者を決められなかった。

 それにより、周囲にいる私達は自分の思いを隠さなくてはならなくて大変な思いをしましたけど……。

 でも、愛すること、共に生きることをじっくり考えることができた。

 ブライトが、カレンとシズク、どちらでもいいという気持ちで選んでいたら、俺は兄の選択を待っていながら、許せなかったでしょう。

 待っていた期間は辛く苦しいものでしたけれど……。

 俺は……、私は五聖家ということを越えた感情で、シズクに、自分の気持ちを伝えることができました」


「そうか……」


 オウカやランカ達がこちらに戻ってくる。逃げてきた人、投降してきた人の保護は終わった。

 ラッシュが時計を確認して言った。


「王、30分経ちました」


 その時、神殿の方で叫び声が上がり、門からふたりの人物が走り出てくるのが見えた。

 後ろからシャムザのより大きなゴーレムが追うように現れた。


 王が微笑んだ。

 オウカとスイレンが挨拶するように手を挙げた。

「おう! 中の様子はどうだ!」


 オウカの言葉に「制圧完了だ」と言いながら、ゴーレムの影から現れたのは風家のアラシと砂家のサーベイだった。


 アラシはオウカに笑って声をかける。


「オウカ! 全然物足りなさそうだな!」

「ああ、炎は街の中では使っちゃだめだって言われてな……、つまらなかった……」

「これが落ち着いたら、ランカの巡回についていって、魔物退治でもしようや!」

「おっ! それいいな!!」


 スイレンが苦笑いを浮かべて「無駄話もそれぐらいにしとけ」と言った。


 王の前にゴーレムに追われて出てきた神殿長とハイリネンが連れてこられた。

 彼らを守ろうとする騎士や部下はもういない。


 ミナモはハイリネンを見て……、表情が硬くなった。

 何か……、初対面のはずなのに、何か、覚えている。


 ランカがミナモの手を握った。

 ランカの表情も強張っている。


 フウライがそんなふたりの様子を少し離れたところから心配そうに見ている。


 王とラッシュが座りこんでいる神殿長とハイリネンの前に立つと声をかけた。


「五聖家と……、王である私に何か言いたいことがあったのだろう?」


 ハイリネンが顔を上げ叫んだ。


「生まれつきの五聖家というだけで、我々の上に立ち続けて行くのは、不公平ではないのか?!

 貴族、平民、そして神殿。

 我々だって、もっと力を持ってもいいはずだ!」


「なるほど。

 確かに五聖家といえども、神ではないからな。

 しかし、我々は生まれつき力を持っているが故に、自分を律し、民のために生きることを考えて実行している。

 そしてその戒めが崩れないように、お互い協力し、見張り合っている……」


「……城で五聖家の子ども達だけを囲って、ままごとのような恋愛ごっこをさせて、他の血族を排除するやり方をか?!

 それこそ五聖家でなければと驕って、自分達の利益や力を他に渡すことがないようにと必死になっている、浅ましい姿ではないのか?!」

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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