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32 暴動と反乱

 ランカは父の馬の後ろに乗り込む。


「ミナモの方に乗りたいだろうが、まだ王に婚約のこと、うんと言わせてないから、悪いな。

 これが終わったら決めてやるからな」

「はい! お父様の馬に乗るのもいいものです!」

「おうおう、言うようになったな。

 ミナモより私の方が荒っぽいぞ。何しろ炎家なんでな!」

「私も炎家ですよ!」


 出発しようとした時、シャーリーが駆けつけてきて、フウライに言った。

「私も連れて行って下さい!

 ここにはローズ様がいるから大丈夫!」


 フウライは一瞬迷ったが、シャーリーの真剣な表情に「乗れ!」と手を差し出し、自分の後ろに乗せた。



 フウライとシャーリー、シャムザ、ラッシュ、ミナモ、サライと馬が駆けていく。


「むっ、やはりフウライは早いな。さすが風家!」

 ランカの耳に抱きついている父の声が背中越しに響く。


 この父が認めているフウライは、やはり悪い人ではないのか?

 今世のフウライだから? それとも……?


 ランカは頭を振って、考え込もうとするのをやめるとミナモの後姿を見つめた。

 

 今は少しでも早く、怪我人を少なくこの暴動を治めなくては!!

 そのことを考えろ!


 フウライは後ろにシャーリーを乗せているのに早い!!

 ランカは父に叫んだ。


「フウライの隣につけて!

 光の防御魔法を発現させるから!!」

「よしきた!」


 荒っぽく加速するオウカの背中にしがみつくランカ。

 ぐんぐん他の馬を追い抜き、フウライの馬と並ぶ。


「光の防御をかける!

 シャーリー!! 結界の補強の仕方と似ている!

 行くよ!!」


 ランカが片手を上へ突き上げると柔らかい光が広がり、その光をくぐった人や馬にはその光がまとわりつくように輝いた。


 シャーリーがランカをまねて、結界を補強するように彼らの上の方に覆うように輝いている部分に光魔法を注ぎ込んだ。


「ありがとうシャーリー!

 しばらくは矢などの飛び道具の威力も落ちる。

 シャーリー、時々交互に補強してかけ続けよう!」

「はい!!」


 神殿が見えてきた。

 ランカは神殿から矢が飛んでくるのを見て、さらに強力な防御を前方に展開させた。


 矢が光に触れると同時に失速する。

 オウカが矢に向かって炎を発した。


「お父様! 火はだめ! 街の中だから!!」


 ランカの言葉にフウライが水を含んだ風魔法で炎を消しながらその矢を安全な場所に落とす。


「フウライ! 神殿前に陣取るぞ!」

「はい!!」


 オウカとフウライはみんなを先導しつつ神殿前の広場へたどり着く。


 ランカとシャーリーで広場全体に防御魔法を張っていると、ラッシュも到着し、一緒にかけてくれた。


「さあ、どうする? 王よ!」


 オウカが楽しそうに王に話しかけると、スイレンが笑った。


「楽しそうだな、炎の!」

「おう、娘と一緒に戦えるなど、絶対にありえぬと思っていたからな。

 親父としていいところを見せたいところだ」

「ああ、その娘の未来の夫にもか?!」

「わはは、その通り!」


 馬上の王とラッシュが並ぶと、自らの発現する光をまとった効果もあり、威厳がたっぷりだ。

 その脇を水の主、炎の主。

 風の主、砂の主に劣らぬ存在感を放っているフウライとシャムザ。

 聖女のランカとシャーリーまでこちらの陣営にいる。


 その姿を遠目に見ただけで、神殿に立てこもろうとしていた反乱軍の大部分は戦意を喪失していた。


 王が呼びかける。


「五聖家に対する不満があるなら、このようなことをせず、訴えてくればよかろう!

 王都の民や神殿の信者、神官などこれ以上巻き込むな!

 話し合いではなく、武力でと言うなら、五聖家で有無を言わさず叩き潰すまで!

 戦う意志を失くした者は投降するがいい。

 五聖家とやり合いたいものは残れ!

 30分待とう!」


 フウライが「王、ひとこと付け加えてもいいですか!」と言った。


 王は頷き、フウライが馬を少し前に勧めた。


「そちらの反乱の首謀者は神殿長と貴族議員ハイリネンだということはわかっている!

 ふたりは聖女シャーリーの家族を人質としていたが、すでに五聖家で保護している。

 神殿長とハイリネン以外の者は、このことをよく考えるんだな!」


 

 神殿の方で動きがあり、門が開いてこちらに出てこようとする者と引き留めようとする者、それにその隙に逃げてこようとする神官達と揉めている姿が見えた。


 ランカが逃げようとしている者が傷つけられないかハラハラして見ている。


 その様子に気づいたオウカが「出るか?」とランカに声をかけた。


 フウライとミナモがその言葉にぎょっとしている。


 ランカが頷いて「迎えに行こう!」と言い、ミナモがあわてた。


「待て! ランカ! 前に出るのは危険だ!」

「大丈夫だよ。お父様と一緒だから」


 何も心配していない様子で答えるランカを見てオウカが笑う。

「おう、俺の防御魔法で……」

「ダメ! お父様は使わない!! 

 炎じゃ逃げてきた人達がびびるから!」


 オウカが不満そうな顔をする。


「私も出よう。風なら大怪我にはならない」

 フウライが言い、シャムザが「私も出そう」と言った。


 ランカが笑う。

「わー、砂の防御? それともあの攻撃魔法?! 楽しみ!

 お父様、出よう!」


「わ、ランカ! 待て! 俺も出る!」

 ミナモがあわててオウカとランカに続いて馬を降りた。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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