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31 誰が悪いのか?

「ランカ様、ごめんなさい! ひどいことを言って!」

 シャーリーがランカに頭を下げながら叫んだ。


「シャーリー! いいって、私は巡回に出ていたから、ほとんど迷惑とか嫌な思いとかしてないし。

 家族を守らないといけないという理由があったんだし……」

「でも、でも、私、ランカ様が恵まれているって嫉妬して、そして、ランカ様をひどい目に合わせたいと、その、思って……」

「今は、もう思ってないんでしょ?」

「えっ? はい!」

「なら、いいよ。私は許す。聖女として、一緒に頑張りたいし」


「ブライトはどうなんだ?」


 フウライが声をかけたが、ブライトは苦しそうな顔をした。


「……わかった。シャーリーの事情は。

 でも、まだ心の整理がつかない。もう少し待って欲しい」


 シャーリーは頷いた。

「はい、許していただけるよう、これからは行動するのみです」


 アカリが口を開いた。

「私、さっきシャーリーと話したの。

 その時、お互いに嫉妬の感情に囚われていたって言われて……。

 私が何をこわがっていて、自分のふがいなさを……ランカに押しつけることで救われようとしていたことに気がついた。

 まあ、シャーリーに、そういう視点を教えられて……ということもあるけれど、自分で選んだことよ。

 ランカ、ごめんなさい。

 それから、サーシャ、フウ、カエン……。

 今までのこと、ごめんなさい。

 私、五聖家の光家の王女として、一番でいないといけないと思ってた。

 みんなは私を支えるための……。

 ごめんなさい。ひどいことを……。

 みんなが私にやさしくしてくれるのは当然だと、私のために動いてくれるのが、してくれるのが当然だと。間違っていたわ。シャーリーと話してわかったの……」


 フウとサーシャが顔を見合わせた。

「「アカリ……」」

 ふたりで名前を優しく呼びかける。


 フウが言った。

「私達もあなたに遠慮し過ぎた。

 もっと友人として接すればよかった。

 言い合って、時にはぶつかって……。

 これからね、そうしていこう」


 サーシャも前に出て話そうとした時、カエンがサーシャの後ろに支えるように立った。


 サーシャが驚いた表情をしてカエンを見たけれど、まっすぐアカリを見ている。

 サーシャもアカリを見た。


「アカリ、私はフウみたいに強くないから、あなたとぶつかることはできないかもしれないけど……、本当に友達になれるなら、なりたい」


 サーシャの言葉の後、カエンも言った。


「アカリ、僕は……アカリのことは友人だと。

 そして守るべき王女だと。でもそれは仕事、だと思ってて、それ以上の気持ちはない。

 僕が、これから守っていきたいのはサーシャなんだ。

 今回のことで気がついた。

 これからはサーシャと一緒にアカリの友人として支えていけたらと思う」


 サーシャは頬を染めて、カエンに寄り添った。


 アカリは俯き、ため息をついた。


「うん、言ってくれてありがとう。

 うん……、うん……。そうよね。わかるんだけど……。

 ああ、寂しいような、うれしいような……」


 シャーリーが立ち上がり、アカリのところへ行って抱きしめた。


 アカリがポロポロ涙を流し、声を押し殺し泣いている。


 テラス席でその声を聞いていたローズは居たたまれなくなって席を立ち、食堂に入るとシャーリーからアカリを引き取るように抱きしめた。


「アカリは私が責任を持って預かります。

 最後まで話し合いを続けなさい」


 ローズはアカリを連れて食堂を出て行った。


 水家の主、炎の主、そして王がテラスから食堂に入ってきた。


 ブライトが苦笑いする。


「さっきから……、何人も。もしかしてずっとテラスにいて、聞いていた?」


 王が答える。

「ああ、聞いていたよ。

 ブライトの良いところも悪いところも……。

 アカリはこれから聖女として頑張ることで償っていくだろう。

 お前はどうする?」

「私は……、何も決められなかった。

 公平であろうとして、決めることから逃げていた……」


 王は頷いた。


「そうだな……、まあ、それでこうなってしまったわけだが……」


 その時、使用人が騎士を連れて食堂へやって来た。


「報告します! 神殿に五聖家の解体を求める貴族達が集結しています。

 神殿の中で、集まった貴族と、巻き込まれた神官や神殿の騎士達で戦いが起きているようです!」


 フウライとシャムザが飛び出していこうとして、炎家のオウカにつかまる。


「おいおい、俺達を置いて行くな」

 王は「私も行こう。ラッシュ、来い!」と言った。


「そうか!!」とオウカが応じて続けた。

「ミナモも来い!」

 スイレンは「サライ、行くぞ!」と声をかける。


 ランカが「私も行きます!」と叫んでミナモに寄り添った。


「そうだな。いいだろう」

 オウカがニヤリと笑う。


「シズク! カレンと一緒に王城の守りを頼んだぞ!」

 スイレンの言葉に「お任せ下さい!」とシズクが答え、ラッシュに向かって微笑んだ。

 ラッシュも頷いて微笑み返す。

 

 食堂から、神殿に向かう一行が出て行ってしまうと、ブライト、シャーリー、フウ、サーシャ、カエンとカレンとシズクがそこに残された。


 シズクが「王城の扉や窓を閉じるように! 守りを固めて!」と使用人に指示を出した。


「ブライト様、フウ、サーシャ、カエン、シャーリー!

 アカリ様とローズ様のところに合流して!」

 カレンが言って、上の階の部屋に移動するよう促した。


 シャーリーはシズクの元に駆け寄る。


「カレン……、シズク……」

 ブライトが呟いた。


 ふたりにはもう、その声はもう届いていなかった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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