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3 新たな聖女

 ブライトとフウライは本当の真剣を用いて試合をしていた。

 ブライトの金髪とフウライの明るい茶の髪が陽射しに美しく輝いて躍動している。


 ラッシュがそばで観戦しているので、ミナモはそちらに合流した。サライは兄シャムザのとランカの方へ行き、3人で魔法を小さく出してぶつけては真剣な表情で話をしている。


「ランカは本当に魔法や剣に興味があるんだな」

 ラッシュが3人の方を見て微笑んだ。


「女にしては強くなり過ぎですよ」

 ミナモがこぼすように言うが、表情は笑っている。

 そんなミナモを見て、ラッシュがさらに笑った。


「それはうれしいのか?

 ランカは昔からミナモについて剣や魔法の練習に参加してきてたけど、それはランカもミナモのことが好きだからなのだろう?」

「……それはどうでしょう?

 最近はランカの考えていることが……、それに、はっきりしないと……」

「それは、兄のことか……、確かに、だが……」


 鋭い金属音が響き、何かが空を飛んでくる音がした。叫び声。

 話をしていたラッシュとミナモは事態を把握するのにほんの少し遅れ、気がついた時にミナモが見たのはこちらにまっすぐ飛んでくる剣!


 ミナモがラッシュに覆い被さるように倒れ込む。


「ミ、ミナモ?!」


 ラッシュの声に弾かれたようにそこにいた者達が集まる。


 ラッシュはへたり込むように地面に座った状態でうつ伏せ状態のミナモを抱えている。

 ミナモの背に剣が突き刺さっていた。


 シズクとカレンが「アカリ様を呼んで!」と指示しているのがテラスの方から聞こえる。


「ミナモ!!」

 ランカが傍らに跪き、ミナモの手を取り叫んだ。

 

 シャムザとフウライが協力して剣を抜くとサライが布を押し当て止血する。

 ミナモが咳き込んで血を吐いた。


「ミナモ!! 死んじゃやだ!」

 ランカが叫んだと同時に、光が発現した。


「光魔法?」

 フウライが信じられないという感じで呟き、ランカから発現した光はミナモ、ラッシュ、サライを包んだ。


 他の者はただ見ているしかできない。


 まもなく光は小さくなり、中の4人の姿が見えるようになった。

 サライが恐る恐る止血していた布を外した。


「傷が塞がっている? おい! ミナモ!」

 サライの呼びかけにミナモは目を開けた。


「い、息が楽に……、背中もそんなに痛くない? あれ……、うっ」

 ミナモは動き出そうとして目をつぶり呻いた。


「まだダメ! 傷は塞がったけど、血はまだ戻ってない! 寝て、私と手をつないでて!」


 ランカの言葉に、皆はランカとミナモの繋いだ手がまだ光っていることに気がついた。


「あ、出血量が多かった?」

 シャムザの言葉にランカが頷く。


「うん、そうみたい。なんでかわからないけど……、そうなんだって」


 ランカはまだ心配そうな表情でミナモを見た。ランカのその手が、身体が微かに震えている。

 ミナモはランカの手をぐっと握り返した。


「ありがとう、ランカ。大丈夫だ」

「……良かった。でも、もう少し手を握っていよ。私の頭の中にまだって出てるから!

 ミナモ、死んじゃうところだった……、本当に本当に怖かった……」


 泣き笑いのような表情のランカにミナモが微笑む。


 シズクが水家の使用人を連れてきた。

「ミナモを動かして大丈夫なら、家へ!」


 ブライトがあわてて「王城でも?!」と言うが、シズクが首を振った。


「水家で療養させます。ランカも一緒に来て」

 

 ランカはこっくりと頷いて、ミナモの肩に空いている手を添え、抱えるようにミナモを支えてくれていたラッシュと一緒に助け起こした。


 王城内にいたアカリ達があわてて駆けつけてくるのと入れ違いのように、シズクとミナモとランカが水家の使用人と王城の使用人の手を借りて移動して行く。

 ラッシュは心配そうな表情だが、ミナモに「大丈夫」と言われ、シズクにも「王城でお待ち下さい」と声をかけられたことでサライと一緒に見送っていた。


 ランカとミナモの後姿を見ながらフウライが言った。

「あれ、光魔法だよな?」

「たぶん」

 シャムザが頷く。

 ブライトがカレンを見て言った。


「カレン、炎家の主に伝えてくれ。ランカはミナモの治療のため水家に行ったと」


 カレンは頷き、その場を立ち去った。


「ランカは『聖女』ってことになるのか?」

 サライが呟いた。


 みんな、心の中でこれからのことを考えていた。




 ◇◇◇




 神殿でシャーリーは保護され『聖女』としてこれからどうするかの説明を神殿長から聞かされていた。


「これから君にはここに住んでもらい、王城に通ってもらう」

「私の家族は? 私が働かないと!」

「それは、この方が良くしてくださるよ」


 神殿長がシャーリーの後ろで空いたドアの方を見た。

 背が高く威圧的な雰囲気を持った黒髪の貴族らしい男性が入ってきた。


「話は聞いた。シャーリーという名だったか?

 私が君の家族を保護しよう。

 私は貴族であり、神殿とも繋がりがある……。ハイリネンだ。

 できれば君の後見人となりたい。どうだろうか?」


 シャーリーは顔をしかめた。


「それは……、私が断れるものなのですか?」

「……ふん、頭の回転は速そうだな……、それに容姿も平民にしては美しい……。

 そうだな、断ることはできないだろう。断れば君の家族が路頭に迷うことになる」

「ならば、私に聞かないで下さい。

 私に何をさせるおつもりですか?」


 ハイリネンが不敵に微笑んだ。


「君は聖女として王城に行き、王子の婚約者となるのだ。

 初めての四家以外からの王妃、あるいは側妃でもかまわん、とにかく、平民出身の聖女であることを存分に生かし、五聖家の中に喰い込むのだ」

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

3話までの連続投稿できましたので、明日からは1日1投稿で進んでいきたいと思います。

9話で人物紹介を入れる予定です。

少しでも面白いな、先が気になるなと思って頂けたらブックマークをよろしくお願い致します!

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