28 本当の私
その日の夜中には、シャーリーの両親と弟のテオドアを保護した。
砂家によると、隣家の家族が神殿から見張りを頼まれていたらしく、連絡を一日遅らせるように工作してきたという。
「工作? 買収とかではないのか?」
アラシが面白そうに言い、サーベイが頷いた。
「ああ、シャムザとサライを両親の代わりにね、置いてきた。
ふたりを元からいた住人に見誤るような防御系の砂魔法をね。
私達が訪ねた時も魔法で遮断したから、気づいていないはずだ。
とりあえず、明日の朝までは時間を稼げるだろう。
シャーリーが王城に出てくるまでは」
フウライがほっとしたように言った。
「ありがとうございます!
すっかりそのことを失念していました。
学院の方は父が、五聖家に関わることでテオドアを四家の方で預かることになったと話をしてくれ、後見人であるハイリネンへの連絡は明日の午前中の遅めの時間にしてくれると……」
離れにはシャーリーの両親とテオドアに休んでもらっている。
聖女シャーリーが家族の心配をして、五聖家に保護を願い出たという説明をしていた。
次の日の朝、水家にテオドアを移動させる。
テオドアは学院をやめなければならないのかと不安がっていたので、アラシとフウライで交渉し、四家で保護する間はこちらで教師をつけて勉強させるので、学院に籍を置いておいてもらうこと、振替で出席していると認めてもらうことを約束した。
その約束のため、水家のカエン達と合流させ、そちらで勉強させることにしたのだ。
フウライは王城に行き、シャーリーが登城して来るのを待った。
無事にシャーリーが現れ、ほっとする。
フウライはシャーリーに挨拶し、一緒に歩き出した。
「昨夜、御両親とテオドアは保護した。四家で保護している。
御家族はこの3人で大丈夫?」
フウライの言葉にシャーリーはぱっと顔を輝かせたが、すぐ不安そうになった。
「急に自由にしていいと言われても、どうしたらいいのか、わからない。
神殿に刃向かう?
神殿とハイリネンに加担して、ブライト様とアカリ様をここまで苦しめてしまった……」
黙り込んだシャーリーにフウライが言った。
「ブライトはわかってくれるよ。
神殿というが……、神殿長の一存だから、このことを公にすれば、神殿長はその立場を追われるよ。
今日の午後、風家、砂家、水家の子ども達を呼んで、みんなで話し合おう」
「……ランカ様は?」
「炎家はどうだろう?
自主的な登城禁止って言ってたっけ。
ランカとカレンに謝りたい?」
シャーリーはこくりと頷いた。
フウライは微笑んで、シャーリーの頭にぽんと手を乗せた。
「何とかしてみるよ。
それから、口止めしていたとしても、他の方向から君の家族がいなくなったことがそろそろ神殿やハイリネンに伝わる可能性もあるから……。
君は今日は風家に来ること。御両親が待ってるからね」
「今日の午後……」
シャーリーは呟いてため息をついた。
「もう、悪女を演じなくて大丈夫だよ」
シャーリーは首を振った。
「いえ、演じていたのか、本当の私だったのか……、なんだか自分でよくわからない。
アカリ様とランカ様を貶めたのは、私の嫉妬からだったような……」
「もう過ぎたことは悔やんでも仕方がない。
これからどうしたいか、考えろ」
「これからのこと」
「立派な聖女になるんだろ? それには、ランカとは?」
「……お互いを認め合って……、高め合う存在、になれれば……、なりたい……」
フウライは頷いた。
「ランカなら、謝って、そう伝えればわかってくれるんじゃないかな」
午前中、シャーリーはアカリと一緒に庭へ出てお茶に付き合った。
ブライトとアカリを離して、休ませたかったから。
アカリがランカが帰ってきたらどうするかという話を続けている。
「罰として『結界の聖女』をやってもらうのはどうかな。いい考えでしょ!」
シャーリーは首を振った。
「ランカ様は……、その能力から、王都にいるか、各地に巡回をされる方が、この国のためにその力を発揮できると思います」
アカリがシャーリーを信じられないという表情で見た。
「ランカを認めるの?!」
「前から認めています。ランカ様は私達の中で、一番優秀な聖女です」
「でも、でも、王女である私から、聖女が受ける名誉や称賛をランカは奪ったのでしょう!」
「私は、視点を変えれば、そのようにも見えるという話をしたのです。
アカリ様はわかっているのでしょう?
聖女の仕事がどれだけ人々にとって大切なことで、アカリ様自身が、そのための力を持ちながら、努力されてないことを……」
「だって!! 努力したって! シャーリーやランカには勝てない!!」
「そんなことないと思います。
それにやらずに諦めるんですか?」
「シャーリーやランカみたいに、最初から強い力を発現できた人にはわからないわよ!
ずっとコツコツやってきた。
少しずつ少しずつ、できることが増えてきて、褒めてもらって、たったひとりの聖女だから、がんばらなくちゃって!
でも、突然、私よりすごい力を持ったふたりが現れて……」
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