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27 情報と捜索

 風家の屋敷には風家の主アラシ、砂家の主サーベイがすでに集まっていて、そこにフウライとシャムザとサライが合流した形になった。


 神殿に出入りする貴族ハイリネンについて調べることにする。

 風家と砂家は五聖家の文書係のような仕事をしていて、文書から情報を調べることに長けている。


 貴族から、神殿から、同時進行で調べ始める。


 まず貴族の名簿からハイリネンのことがわかった。


 コレオドール・ハイリネン

 地方貴族であり、領主であったが、神殿に納める花の栽培と供給で契約する神殿を地方から増やしていき、今では多くの神殿に花と布製品を治める大きな商社にまでなっていた。

 商会長であり、当主のハイリネンは王都に進出し、数年前に王都の貴族院の議員になっていた。

 王都の貴族の仲間入りを果たしたというわけだ。


「元は地方貴族か……。

 神殿と結びつきが強く、王都でも神殿の後ろ盾で貴族院議員となったのだろう」

 風家の主アラシが呟いた。


 砂家の主サーベイが地図を指差しながら言った。

「ハイリネンの屋敷は神殿そば……、ここだな。

 聖女シャリーの実家は、ここだ」

「何で知っているんですか?」

 フウライが驚く。


「シャーリーが王城に上がる時に調べたからな」

「じゃあ、家族の居場所も?」

「両親はまだここに住んでいるはずだ。

 神殿から金が出ているはず。

 確か、兄弟が……。市場の通りの事故で……、弟か!

 弟が貴族の厚意で教育を受けられるようになったと、どこかヘ預けられたと聞いたな……」


 フウライが言った。

「両親が知っているのでは?」


「いや、まず神殿に入ったそうで、両親はそこまで細かく話を聞いていないようだった……。

 待てよ。教育なら……。

 シャムザ……。王都の学校の転入生、しかも寮にというのは考えられないか?

 王立学院、王都学園の名簿を探せ!

 弟の名前……。姓はフローレス。よくある姓だな。名がわかれば……。

 確か、シャーリーの弟は市場の通りの事故に遭って……、あの事故の記録があったはずだ。

 王都の事故報告……、いや、聖女に関する報告か?」


 サーベイは風家の机の上のファイルを勝手に漁り始めた。


「おいおい!」

 アラシが苦笑する。


「きちんと整理しとけよ!」

 サーベイが積み上げられたファイルを記憶を頼りに色で探そうとしながら、アラシに文句を言っている。


「整理しなくても、だいたいわかるんだよ!

 私の頭の中にどこに何があるかのはだいたいわかっている。

 それはたぶん私の記憶だと事故報告だ。ここにはない、こっちだ」

「お前の頭の中は他人には見えないんだよ。

 こっち? おい! この積んでる量……、せめて背表紙が見えるように立てろ!」

「書類は立てられないだろ?」

「だから、書類は書類入れに整理するんだよっ!

 せめてファイルぐらいは……。

 確か、暗い色のファイルで……、あ、あった! これだ!」


 サーベイはファイルを引っ張り出し、めくり、指を滑らせていく。


「馬車の事故、テオドア・フローレス!

 転入生にいないか?!」


「ちょっと待って! 調べてる!」


 シャムザが書類に目を走らせ「いた……」と呟いた。

 名簿を掲げて叫ぶ。

「ちょうど事故の1週間後! 王立学院」


 フウライが苦笑いした。

「保護すると言っておきながら、両親には金を支給して放置。弟は学校の寮に丸投げか!

 まあ、おかげで保護しやすいが……。

 サーベイ様、お見事です。

 書類に全部目を通しておられて、内容もよく覚えていらっしゃる……。

 父と私だけなら、そこまで調べるのにもっと時間がかかったでしょう」

 そのまま、立ち上がりすぐにでも出ようとする。


 サーベイが止めた。

「待て! 明日の朝にしたらどうだ?」


 フウライが首を振る。

「いえ、こういうことは早い方がいい。

 砂家に両親の保護を頼んでいいですか?

 同時に押さえた方が良さそうだ。

 この屋敷で保護しましょう。

 庭の離れを使っていいよな、親父?」


 アラシがすぐ答えてくれる。

「わかった。私とフウライで学院の寮に迎えに行こう。

 確かに人を訪ねるにはちと遅い時間だがな。

 人の命でもあるのでね。

 砂家に両親の保護を頼みたい。できるだけ内密によろしく頼む」


 アラシは風家の執事に庭の離れに人を泊めるための準備を頼んだ。


「シャムザ、ハイリネンには十分気をつけろ。

 こちらの動きはまだ気取られていないと思うが……」


 フウライの言葉にシャムザが短く返事をした。

「わかった。お互い気をつけよう」


 サライは「ハイリネンに会ったの?」と聞く。


「ああ、神殿で見かけた……。

 挨拶まではしなかったが、神殿長とは親しそうだった……」


  風家の主と砂家の主は、それぞれの息子を従え、夜の王都へ出て行った。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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