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26 繋がろうとする思い

「シャーリーと話せたの?」

 カレンが驚いて言った。


「ああ、急いでハイリネンからシャーリーの家族を保護しなくてはならない。

 炎家が動くと目立つか……、風家でそれはやります。砂家も協力してくれるか?」

 フウライの言葉にシャムザとサライが頷いた。


 フウライは言葉を続けた。

「だから、保護できるまでは現状維持だ。

 ランカ、そういうわけだから、神殿にはしばらく行くな。

 アカリが神殿に行くのを、聖女として働くことを拒否しているそうだ。

 ランカのせいにしてな。

 神殿の仕事はシャーリーがしている。ローズ様も帰ってきたし、そっちは大丈夫だろ。

 ミナモ、ランカを守れよ」

「言われなくても!」

 ミナモが間髪入れずに答える。


 フウライは下を向いてふっと笑って、立ち上がった。

「では、ハイリネンの方を……、シャムザ、サライ、行こう」


「あっ、待って!」

 カレンが言ってシャムザに訪ねる。


「シャーリーのマナーの講師は?」

 

 何事かと構えていたシャムザが脱力した。

「なんだそんなことか!」

「そんなことじゃないわ。

 ブライトは私と約束したのよ!」


 シャムザが表情を引き締めて、言った。

「今は誰もついていないが……。

 正確にはシャーリーとアカリに一緒にマナーや常識のようなことを学ばせようと王城にいたマナーの生き字引みたいなメイド長に頼んだりしたんだが、1回講義を受けるとアカリが癇癪を起して……、もう講師の伝手がなくなった」

「……なんてこと?!」

「だから、ブライトは、自分で教えてるよ……」

「えっ?」

「ブライトはカレンとの約束は、一応破っていないと思うよ」

「……そ、そう」

「うん」

「……シャムザ、気を付けてね」

「ありがとう、カレン」


 サライもフウと何か言葉を交わし、そして3人は出て行った。


「フウライ達の方が上手くいかないと、しばらくは動けないな……」

 スイレンが言って、オウカが頷いた。


「父はなんと?」

 ラッシュが主ふたりに聞いた。


 スイレンが目を伏せて返事をする。

「王はアカリとブライトのことはあきらめてきているようだ。 

 とりあえず、これ以上外部に醜聞が広がらないように王城内に閉じ込めるという対応を。

 彼らは気がついていないがな……」

「……あきらめる? 我が子を?」


 オウカがニヤリと笑ってラッシュに言った。

「ラッシュは兄と妹をあきらめたりしないだろ?!」


「はい、アカリには少しきついしつけが必要かもしれませんが、ブライトは、気がつけば自分で立ち直れる人だと思います」

「ああ、俺達もそう思う。そのためにも、五聖家で努力しましょう」



 夜、シズクの部屋に泊めてもらうことになったランカは、窓から外を眺めていた。

 王城の夜景が遠目に美しく見える。


 シズクの部屋にラッシュとミナモが訪ねてきた。


 ラッシュが言った。

「ランカ、ミナモ……、このことが終わったら、フウライとちゃんと話をしてみないか?

 私には、フウライが、ランカやミナモを傷つけようとして動いているとは……、思えない」


 ミナモがランカを見ると、ランカはじっと俯いていたが、小さな声で言った。


「もしかしたら、シャーリーみたいに、何か、理由があって、させられてた?

 エルラドとエステルが死んだ後にも何か話が、ダーシーにも真実の話があったの……、かも?」


 ミナモがランカの手を取った。


「聞くときは一緒に。

 俺は記憶を思い出してないけれど、フウライのことは嫌いじゃないよ。

 ランカを、いや、エステルにダーシーがひどいことをしたと聞いた時は血が逆流したような思いをしたけど。

 うん、ランカと一緒に、話を聞いてみたい」


 ランカは頷いて、ミナモの胸に頭を預けた。


 シズクがラッシュの手を引いた。

 ラッシュが驚くと、シズクは左手の指を一本、口の前に立てて、ドアを見る。


 ラッシュが頷き、静かに黙って、ドアから廊下へ出た。


「いいのか?」

 ラッシュが少し赤くなって小さな声で言った。


 シズクはそっとドアを閉めてから微笑んだ。


「いいのいいの、ずっとふたりにしてあげられてなかったし!

 応接室にでも行きましょ」

「いや、その、こんな夜に、俺と、そのふたりで……、シズクはいいのか?」


 シズクがびっくりした顔をして言った。

「まずかった?

 それなら、カエン達の所へでも行く?」


 歩き出したシズクの手をラッシュはつかんだ。


「応接室に行こう。ふたりで話したいことがある」


 シズクは頷いて先に立って歩き出した。


「こうやって手を繋いで、小さい時も屋敷の中をよく探検しましたよね。

 こっちにミナモ、こっちにラッシュ様。

 両手にかわいい弟達でした!」


 シズクの昔話にラッシュは笑わなかった。


「今は? 今でも、俺の手は弟の手?」


「えっ?」


 シズクがラッシュと繋いでいるというか、ラッシュにつかまれている手を見た。

 顔が赤くなる。


「……その表情は、弟とは思っていない?」


 ラッシュの言葉にシズクはさらに赤くなり、もう耳まで真っ赤だ。


「ちょ、ちょっと待って?!

 その、ラッシュ様は私より年下だし?!」


 あわてるシズクをリードするかのように歩き出すラッシュ。


「もう、どこに応接室があるか、俺は知ってるよ。

 シズク、俺はシズクが好きだ。

 ブライトが決めるのを胃が痛くなるような思いで待っていたけど、もういい。

 俺はシズクと結婚したい!」

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

今作は後書きでいろいろ言わないように気を付けているのですが、今回は言わせて下さい!

ラッシュ、頑張った!

君の恋が一番どうなるのか、本当に心配だったんよ! 良かったー!

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