17 我儘を直すには
フウが前回のことを話すとカエンがすぐに反応した。
「ごめん! あの時のことか!
確かに僕もサーシャから話を聞かずに……、それはごめん。
……僕達、アカリに気を遣い過ぎてたのかな。
僕はアカリの友人の中で唯一の男子だし、一応アカリの護衛的な立場だと思ってる。
だから、できるだけ王城内ではアカリと行動を共にするように、心がけなくちゃいけないのだと。
で、サーシャとフウには友人として甘えてたところがある。
アカリの対応に疲れても、サーシャとフウならわかってくれると思って……」
「アカリに……、疲れる?」
ブライトが呻く。
フウがブライトに向かって真剣に言った。
「そうなんです。
私達はアカリの友人として、でも、アカリ王女を守り支えるということも四家として思っています。
でも、アカリの私達への……、特にサーシャへは、友人というより……、アカリの失敗や都合の悪いことは全てサーシャのせいにされてきたことがあります。
利用されているというか……。
今回のことというより、積もり積もってという感じ……」
カレンがカエンに聞く。
「カエンは、アカリ様と仲が良さそうに見えたけど?」
「うーん、仲がいいというか、アカリが早いんだよ。せっかちなところがあるのかな?
サーシャやフウを置いてどんどん行っちゃうんだ。
仕方なく、僕が追いかけたり、一緒にいる感じ?
仲が良く見えるのは、僕がアカリに合わせているからだね、きっと。
もしかしたら、それがアカリの我儘を助長させたのかも……、しれない……」
「つまり、王女を守るという役目のことも考え、友人になりきれなかったということか?」
ブライトの質問に、カエンら3人は頷いた。
「なんでだ?
シャムザ、私やラッシュと何が違う?」
シャムザは苦笑いした。
「まあ、王子と王女じゃ……。
アカリ様は唯一の聖女候補の王女で、将来が大変だろうからとみんなで甘やかしてきちゃいましたからね。
確かに周囲に対する気遣いとか思いやるとかそういうものを知らずに来てしまったかもしれません」
ブライトがサーシャに言った。
「すまん、サーシャ。
確かにあれは我儘で周囲が見えていない時があるが……、大切な友人にまでそんな態度を取っていたとは。気づかずに申し訳ない」
頭を下げるブライトにシャムザとサーシャがあわてる。
「ブライト! わかったから、頭を上げてくれ!
何とか、アカリ王女に人の気持ちをわかってもらうように私達も働きかけることにしよう!」
「……ありがとう。そう言ってもらえると助かる……。
アカリの相手は私がしばらく引き受ける。
シャムザ、カレン、力を貸してくれ。シャーリーも手伝ってくれるだろう……。
サーシャ、カエン、フウは少し王城に来るのを休みなさい。
私達から話をする」
「私も一緒にお話しします!」
フウが言うが、ブライトが首を振った。
「アカリは……、フウにはきっと我儘を言うのだろう。
落ち着くまで離れた方がいい」
サーシャはこのまま砂家にいて、カエンとフウが砂家に通い、一緒に勉強をして過ごすということが決まった。
ブライト、シャムザ、カレンが王城に戻る馬車の中。
カレンがブライトに話しかけた。
「アカリ様とシャーリーの仲はどうなのでしょう?」
「シャーリーは気さくでやさしいし、アカリともうまくやっているようだ。
アカリにしてみればシャーリーは幼馴染ではない聖女仲間ということもあるのだろう。
そういえば、カレン。
君のシャーリーへの苦言というか注意というか、もう少し寛容な目で見てやってくれないか?
確かに彼女は平民で、貴族や王族のマナーやルールに疎いところがある。
しかし、それはそれで、私達に気づきを与えてくれることもある。
どちらの視点からも物事を見ることができれば、素晴らしいと思わないか?」
カレンの表情が強張る。
シャムザがカレンの代わりに返事をする。
「ブライト、ここは王城だ。そしてシャーリーは聖女。
確かに元平民だけど、すぐに完璧に五聖家レベルまでとは言わないが、このままでいいとは私も思えない。それにこのままだと困るのはシャーリーだよ」
「……平民らしさというか、シャーリーがシャーリーらしくいられるようにしてやりたいんだ。
平民として生きてきて、急に聖女だと言われ、家族と離れて、生活も変わり、不安や心配なこともあるだろうに……」
シャムザがカレンを気にして言う。
「カレン、君も嫌なら王城に来るのを休む?
嫌な思いをしに来ることはない」
「どういうことだ?」
ブライトがいつになく険しい顔で聞き返す。
「わからないのか?
シャーリーがわざと無邪気さを装って、カレンに注意されそうなことをしてきているのが?!」
「わざと?」
「ああ、シャーリーはわざと演じてる。
平民出身の無邪気で明るく、いつもニコニコしている健気な女の子を!」
カレンはシャムザを止めた。
「いいの、シャムザ、ありがとう……。
ブライト様、すでに私はシャーリーに対してかなり寛容に接しています。
これ以上、今のままを許したら、シャーリーは聖女として、笑い者になってしまいます。
マナーのなっていない聖女なんて……。
私に注意をするのをやめろと言うなら、彼女にきちんとした指導係をお付け下さい」
「……わかった。そうしよう」
「ありがとうございます。
それなら、私の役目はもう必要ありませんね。
明日から王城に参るのはやめさせて頂きます」
「カレン? いいのか?!」
シャムザのあわてた声にカレンは笑った。
「シャムザ、あなたが言ってくれたんじゃないの。来ることはないって」
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