【3・裏目】彼女が壊れたら俺のせいだ 2
前日から、国境周辺での攻撃が活発化しており、現状では消耗戦の様相を呈している。
負傷者が出れば、それだけ戦力も削がれる。ジリ貧なことは間違いない。
先だって神崎が調達をした武器弾薬は切れ目なく届いてはいるが、それを運用するための人員や車両などが目下不足している。
ちらほらと各国から招聘した武装社員が集まってはいるが、間引かれた側の部隊にだって都合はある。元々ムリに間引いているのだから、多少時間がかかるのは仕方がない。
こんな稼業だから、誰もが不本意な事も理不尽な事も、覚悟の上で契約し、仕事をしている。だが、今回の事態は、契約よりも会社の都合が優先されているのだ。
一応、帰りたい者を募りはしたが、誰一人として立ち去る者はいなかった。皆、文句も言わず神崎の指示に従っている。それが彼にとっては心苦しかった。
国軍は、新司令官のおかげで一人たりとも兵を出す様子はなかった。せめて、今あるだけの戦力でもいいから出してくれれば、と誰もが呪わずにはいられなかった。
せめて、増員が到着するまでは踏ん張らなければ。
「神崎司令、内部的な不満がかなり噴出しています。このままでは士気が維持出来ません。なんとか国軍の支援は得られないのでしょうか」
現在、有能な副官として仕事をこなしているレイコが、報告にやってきた。
「え――、そうなの? みんな会社のために頑張ってくれてると思ってたのにー」
「そんなこと考えてるの神崎さんだけですよ。お金のために決まってるじゃないですか」
「そうなん? うーん……、マジで?」
「マジです」きっぱりとレイコは言った。
「そんなにこの仕事ってギャラ良かったっけ?」
「一応面倒な案件ですし、会長のメンツもかかっていますから、割り増しされてますよ」
どうやら、なんとかいっていると思ったのは、神崎の勘違いだったようだ。
(やっぱり麗のことで、判断力がひどく鈍っているようだな……空気も読めないなんて)
「そらそうだよな……会社の都合に付き合ってもらってんだからな。創業者一族としては、ひどく申し訳ないと思ってるんだよ? これでも」
しばし思案をする。――これしかないか。
「よし、単純な方法だか……向こう一ヶ月間の、ギャラの五十%アップを周知しろ」
「了解しました」
これで多少はがんばってくれるといいのだが。
こちらとて、ムダ死にさせたいと思っているわけじゃないんだ。
でも、もう少しだけ……。




