【2・自己顕示欲】国家を玩具にする男 2
「クソッタレ!」
神崎は司令部の建物を出ると、自分の乗って来た装甲車両のタイヤを蹴り飛ばした。
――今すぐにでも首を刎ねてやりたい。八つ裂きにしてやりたい。
司令官たちのクズさ加減に彼の腑は煮えくりかえっていた。しかし、今は耐えるしかない。
空港内の指揮所に戻った神崎は早速、おにぎり友達の元副司令アジャッルの居場所を探した。今回の騒動の顛末を聞き出すためだ。
居場所はすぐに分かった。彼は場末の基地に左遷されたのだという。神崎は副官のレイコに指示を出し、急ぎ元副司令の元へ迎えを送った。
指揮所のブリーフィングルームでは、各小隊の隊長を集め、神崎が緊急対策会議を開いていた。
空港施設に適当な広さの部屋がないので、今は大型テントを使用している。パイプ椅子に座った各小隊長を前に、神崎が現状の包括的な説明を始めていた。
「現在我々が直面している危機的状況は、敵勢力の行動の活発化だけではなく、クライアント側による身勝手な行動が引き起こしたものだ。
本来であれば、契約不履行を盾に撤退することも可能だが、今回は日本政府の意向や、親会社が受注した復興事業や開発事業などとの絡みがあって、実質上、撤退は不可能だ。会長に代わって謝罪する」
場内がざわざわと騒がしくなった。
この会社の唯一にして最大の弱点、親会社とのしがらみについて知らぬ者が少なくなかったためか、社員たちに動揺が広がっている。
「最初に説明したが、この国の防衛はいま、臨時大統領兼司令官の悪ふざけが原因ででボロが出た状態だ。そこを、今までビビリ上がって大人しくしていた旧来勢力が、大国のテコ入れを受けて息を吹き返した。
私は会長より、この国を、親会社の経済活動を死守せよ、という勅命を受けている。何としてもこの現状を打破し、受注した事業を成功させなければならない。
急ぎ増援の手配をしているが、それまでは各自の努力に期待したい。私も諸君らの生命を第一に考え、この戦況を立て直していくつもりだ。どうか私を信じて欲しい」
自分を信じろなどと、どの口が言っているのか。
神崎は、ひどく不愉快だった。
己に対して腹を立てていたのだ。
この偽善者、詐欺師め、と。