【1・東シナ海上空】そして戦地へ 2
『麗からの返信』
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To Kanzaki From Urara
Subjekt ひどいよ
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どうして「いってらっしゃい」ってひとこと言わせてくれなかったの?
黙って置き去りにするなんて、寂しすぎるよ
あれからずっと、電話もつながらなかったし、
すごく寂しかったんだからね
でも……どうしよう
会う前は、有人さんがいないのを我慢出来たけど、
今はもう、日本にいないんだって思ったら、
気がおかしくなりそうだよ。どうしたらいいんだろう……
たすけて。こういうのって、禁断症状?
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「く……。麗から、もう返事が……」
神崎は手短に返事をした。
『神崎から送信』
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To Urara From Kanzaki
Subjekt 僕もです
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僕もヘリで帰るあの時、断腸の思いだった。本当に身を切られるような、
とてもつらい気持ちでした。
電話の件はごめんなさい。電話の仕様が違うので、
しばらく繋がらなかったんだと思います。無論今も使えません。
恐らく、この先、ゲームにもしばらくログイン出来ないと思います。
電話も繋がりにくくなるかもしれません。
メールの返事も、なかなか返せなくなると思います。
でも、出来るだけ早く君の所に戻れるよう努力するから、
待っていて下さい。ごめんなさい、今はそれしか言えません。
愛しています。僕を信じて。
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現場とのやりとりの合間に、神崎は麗へメールの返事を送ったが、はっきり言って不安要素しかなかった。
多分、恐れていた事態に発展するだろう……。
甘やかしすぎたツケが回ってくる。
多分、彼女をとても苦しめる結果になる。
どうして、よりによってこんな時に事態が急変するんだ?
まだ彼女には、自分が必要だというのに。
あんな形で無理矢理引き離すことになるなんて……。
皆、自分のせいだ……。
神崎は、自分を激しく責めた。
「しかし、このままじゃ向こうも全部手遅れになるぞ」
それもまた然りだった。
たった今も、多くの社員とスタッフたちが敵の攻撃による危険に晒されている。現地に戻ってから対策を講じていたのでは、後手に回ってしまう。状況は想像したよりもかなり悪い。
(本社に支援要請をするしかないな。予算が下りるのなんか待ってられない)
神崎はまず、いま出来ることから着手した。
――先方の能なし国防大臣に、至急増援要請を本社に出してもらう旨打電、そして、先んじて補充要員の選別と武器の補給リスト作成をしなければ。――
現状ですぐに動かせる、近隣国に散らばった社員のリストが必要だった彼は、
(少々キツイが、時間が惜しい。――やるか)