【1・キミが君でなくとも】ネトゲ彼女と交際します 5
――やはり、触れてはいけなかったのだろうか……。しかし……。
だが数秒後、彼女は答えた。
===== ===== ===== =====
Flaw:
そうです。ずっと入院してます。
Alphonce:
そうなんだ、教えてくれてありがとう。もしそうなら、もっと負担をかけないようにしないとな、って思ってたんだ。最近、結構ぶっ通しでレベル上げとかしてたから・・・
Flaw:
心配してくれてたんですか?
Alphonce:
そりゃあね。俺が引っ張り回しているようなもんなんだから、フラウさんのコンディションとかに気を配るのは、PTリーダーとしては当然だと思ってるんだけど。
===== ===== ===== =====
(どの口が、PTリーダーとして、なんて言ってやがるんだ。この嘘つきめ……)
彼女の依存度が日増しに上がっているのは入院していることと無関係ではないだろう。自分も彼女に依存している。だが、あくまで保護者のように振る舞ってもいる。
……俺は、卑怯だ。自分を慰めるために彼女を利用しているんだ。
神崎は己の偽善者ぶりに、嫌気が差してきた。
===== ===== ===== =====
Flaw:
ありがとうございます
Alphonce:
ううん。こちらこそ気遣ってあげられなくて、ゴメンね。
Flaw:
私、
Flaw:
自由にいろんな所に行ったり、野原を走り回ったりとか出来るのって
Flaw:
ここしかないんです
Alphonce:
ここ・・・だけ?
===== ===== ===== =====
「マジかよ……」
正直ショックだった。
神崎は胸が締め付けられた。そんなに長期間入院しているのか、と。
――自由な場所が、こんな陳腐な箱庭しかないなんて……。
連れ出してやりたい…………。
彼は強い衝動に襲われたが、必死にそれを押さえ込もうと努めた。
「カタリかもしれないじゃないか……落ち着け、有人」
言い聞かせても、気持ちは自分の都合のいい方へと、どんどん流れていく。己の意思とは全く関係なく。
===== ===== ===== =====
Alphonce:
俺も、自由になれるのは、ここしかないかもしれない。
Alphonce:
身内や肩書きの問題で、どこに行ってもしがらみがついて回る。だから、誰も俺のことを知らないここでだけ、俺は俺でいられる。だから極力ここに来てる。
===== ===== ===== =====
(どうしたってんだ……こんなこと語るつもりもないのに)
===== ===== ===== =====
Flaw:
そうなんですか・・・わたしなんかより、ずっと大変そうですね。かわいそうに
Alphonce:
へ?俺が?・・・そ、そう?そうなの?
Flaw:
だって、体が病気だとか不自由だとかっていうのは、なんていうか「不便」なだけなんで、そのうちそれが日常になって慣れるけども、
Flaw:
心が縛られてたりとか、不自由だとか、ホントの自分を見てもらえないのって、慣れっこないし、ずっとくるしいままじゃないですか。わたし絶対耐えられないと思う
===== ===== ===== =====
神崎は愕然とした。
『心が不自由な方が、耐えられない』
彼女のその言葉に、一瞬頭が真っ白になった。そして、腑に落ちた。
――そうか、それが、呪いか。