【3・まちぼうけ】ネトゲ恋愛と公共事業 3
浅い呼吸をしばらく繰り返した後、ノートPCから短いベルのような音が鳴った。
――ショートメッセージの着信音だった。
「えっ?」
彼はガバっとベッドから跳ね起きて、慌てて枕元に広げたノートPCの画面を覗き込んだ。着信したメッセージは一件。恐る恐る開封をしてみる。
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(▼ショートメッセージを確認)
From:Flaw
Title:無題
Alphonceさん、こんばんは。私のメッセ届きましたか?
いまログインされているのを見つけて、メッセ送りました。
港にいるってことは、今日もあの池で釣りですよね。
私はこれから、実家に帰ります。
釣りのスキル上げがんばって下さいね。
それでは。
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「へ? ちょっとマテ。今どこだ?」
神崎は、慌てて彼女の居場所をサーチした。
……なんだ、同じ場所じゃないか。
――実家に帰るって、まさか、ここから?
実家とは、プレイヤーのスラングでPCの所属国、ホームタウンを意味する。彼女のレベルでは、自分が使用した定期便には乗船出来ない。きっとダチョウの如き騎乗鳥で、陸路を長々と往くつもりだろう。リアルでも三十分はかかる、正にロングドライブだ。
(なんてこった……。俺のせいで、国に帰らせるようなもんじゃないか! こりゃうだうだヘコんでる場合じゃないぜ! 追いかけないと)
「でも……、何で念を押すように、メッセ送ってきたんだぁ?」
うーん、と唸りつつ、向こうもログインしているならメッセなんてまどろっこしいことはせず、リアルタイムでの通信を試みようと考えた。自分のPCは現在、海底洞窟への入り口付近で放置中だ。
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Alphonce:
こんばんは! メッセありがとうございました。ちゃんと届いてますよ!
Flaw:
こんばんは(^^)/お声掛けありがとうございます♪今日も釣りですか?
Alphonce:
いや・・・それよりも、フラウさんに、お詫びをさせて欲しい。
Flaw:
え?なんでですか?別に謝られることはなにもないと思いますけども?
Alphonce:
自分のお節介で、気を悪くされたようなので・・・申し訳ないです。
Flaw:
え???あのー・・・ほんとになにもないですよ。もしかして、かんちがいをさせるような事を書いちゃった、とかでしょうか・・・だったら、かえってごめんなさい
Alphonce:
本当に何もない? 俺の方こそ、気分害していません?
Flaw:
害してなんていないですよ。どっちかと言うと、私の方が。昨日も帰りに気分悪くさせてしまったみたいで・・・
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「え。ちょっとマテ。それどういうこと?」