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67 お宅訪問

「ふぎゃっ!」


 我が家に転移した途端、レヴィーリア様と繋いだ手が離れて変な声が耳に響いた。足元を見るとレヴィーリア様がぺたんと尻もちをついている。


 うっかり馬車の座席に座ったまま転移したせいだろう。ちなみに同じように座席に座っていた俺と伊勢崎さんはしっかり立っているんだけどね。慣れというヤツである。


 しかしレヴィーリア様は尻もちを気にする様子もなく、そのままの姿勢でゆっくりと辺りを見回した。


「ここが……マツナガ様とお姉さまが普段生活しておられる世界なのですか?」


「はい、そうです。これで信じてもらえたでしょうか?」


「いえ、それはまだ判断がつきませんが……。ここは、どこかの倉庫……いえ、作業場でしょうか?」


 レヴィーリア様が立ち上がりながら尋ねる。もちろん俺の家には作業場なんてものはない。転移した場所はダイニングキッチンである。


「違います。ここは俺の家でして、ここは食事を作ったり食べたりする部屋です」


「えっ? そ、そうなのですか? ……たしかにそう言われてみれば、とても清潔そうな場所ですし、食事するにはよさそうな場所ですわね。オホホホ……」


 取り繕うように笑ってごまかすレヴィーリア様だが、一般人の、しかも異世界のダイニングキッチンなんてわからないのが当たり前だしね。俺は気にしないよ。


「あの、お宅を見学してもよろしいでしょうか……?」


 レヴィーリア様がそわそわとあちこちに目を向けながら尋ねる。好奇心旺盛な人みたいだし、そりゃあ気になるか。


「もちろんいいですよ。あ、ですが先に靴を脱いでくださいね」


「あら、失礼しましたわ。……あ、あのお姉さま?」


 申し訳なさそうに伊勢崎さんに声をかけるレヴィーリア様と、くすりと苦笑を浮かべる伊勢崎さん。


「はいはい。レヴィ、あなたまだ一人で靴がうまく脱げないのね」


「ううっ、それは言わないでくださいまし……」


 レヴィーリア様が恥ずかしそうに答えると、しゃがみ込んだ伊勢崎さんがレヴィーリア様のブーツの紐を解き始めた。


「ふふ、この手際のよさ。やっぱりお姉さまですわ……」


 懐かしそうに目を細めてつぶやくレヴィーリア様と「ひとりで脱げるようになりなさい」と文句を言う伊勢崎さん。なんとも仲睦まじくて結構なことだよ。



 そしてお客さん用スリッパに履き替えたレヴィーリア様は、好奇心に目を輝かせながら元気に声を上げた。


「それではわたくし、マツナガ様宅を探検してきてまいりますわ!」


「お好きにどうぞ。伊勢崎さんもついていってあげて」


「はい、おじさま」


「お姉さま! わたくし、あの扉が気になります!」


「はいはい」


 二人は仲良く揃って、まずは俺の部屋へと突撃していった。


 ちなみに見られて困るような十八禁のブツは、パソコンの中にしかないので何も心配していない。


 俺は二人を見送ると、ひと息つけるためにお湯を沸かしてインスタントコーヒーを作ることにした。


 とはいえ、あまりのんびりしている時間はないんだけどね。


 ちらっと壁にかかった時計を見ると、時刻は夜の22時過ぎ。ここでの滞在は長くても30分が限度だろう。それくらいなら異世界の早朝前には戻れるはずだ。


 

 ――そうしてインスタントコーヒーを作り終えた頃、俺はいつまで経っても部屋から出てこない二人が気になり始めた。狭い部屋なので、すぐに出てくると思ったのだが……おかしいな。


 しかたなく俺は自室へ向かった。すると――


 伊勢崎さんとレヴィーリア様はモニターの前に座り込み、レトロゲームで遊んでいた。


 タイトルは「アイス◯ライマー」。雪山のステージを一人、もしくは二人で一緒に登っていくレトロゲームだ。ただいま二人プレイ中らしい。


 目を見開いて前のめりにモニターを見つめているレヴィーリア様が、突然大声を上げた。


「ちょっ、お姉さま!? これ以上先に進むのはおよしになって!」


「レヴィが遅すぎるんです! もうこれ以上は待ちませんよ!」


「ああっ、つららが、つららがーー!」


 自キャラにつららが当たってやられてしまい、ガックリと肩を落とすレヴィーリア様。いやいやいや……。


「なにしてんの、君たち……」


 俺のつぶやきに、レヴィーリア様がぐるんと首をこちらに向けて抗議の声を上げる。


「マツナガ様! お姉さまったら、酷いのですよ! まったく助けてくださいませんの!」


 だが伊勢崎さんはボーナスステージで自キャラを動かしながらしれっと答える。


「レヴィ……。アイス◯ライマーに協力プレイなんて存在しないのよ。これは対戦ゲームなのです。そして戦うからには負けるわけにはいかないの」


「くうう~! お姉さまのいじわるっ……!」


 レヴィーリア様はハンカチを取り出すと、悔しそうに噛みしめた。こういうシーンを実際に見るのは初めてだなあ、さすがは貴族令嬢。


 ちなみにアイス◯ライマーが対戦ゲームかどうかは個人の感想だと思うけど、伊勢崎さんは対戦ゲームで一切手を抜かない。だから手加減は諦めたほうがいいと思うよ。


 ……ところでコレ、どうやって収拾をつけたらいいんだろうね。

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ニコニコ漫画カドコミ
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― 新着の感想 ―
[一言] アイスクライマーが対戦ゲー……まあ、うん てかレトロゲーって事はswitch版じゃないのな
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