105 観光案内
後書きにお知らせがあります。
俺たちが『次元転移』で到着した先は、これまでにも何度か利用した薄暗い路地裏。
ここは町の中心部のわりに人気が少なく、『次元転移』の中継場所として便利なんだよね。今回も伊勢崎邸のように誰かと鉢合わせることなく、無事に転移することができた。
そんな路地裏から少し歩き、大通りに面した繁華街へと抜ける。歩道に足を踏み入れた瞬間、レヴィーリア様が辺りを見渡して声を上げた。
「ふわあぁ……! キラキラと輝いていて、とても美しい光景ですわね! ねえねえお姉さま、これはどのようなパレードの最中なのでしょうか!?」
興奮したように声を弾ませるレヴィーリア様。
しかし残念ながらパレードが行われているようなことはなく、ただ日が暮れた街並みに街灯やショーウインドウの明かりが灯り、ヘッドライトを点灯した車が道路を行き交っているだけである。
そんなレヴィーリア様が微笑ましく映ったのだろう、伊勢崎さんが優しい笑みを浮かべながら答える。
「うふふっ、違うわレヴィ。この辺りではこれが日常の光景なのよ?」
「ええっ、そうなのですか? ですがなんと豊かできらびやかな街並みですこと……」
歩道沿いに連なるショーウィンドウをうっとりと眺めながらつぶやくレヴィーリア様。
会社帰り学校帰りの人々が行き交う歩道にはタバコの吸い殻やお菓子の袋なんかも捨てられており、俺からすれば特に美しいとは思えない街並みである。けれど異世界ではこの時間帯は人通りも少なく、通りも薄暗いのが常識なのだ。
だから俺にもレヴィーリア様が感動する気持ちは理解できるし、水を差すつもりもない。ひとまずはそんな彼女の好奇心の赴くままに行動してもらおうと思った。
「レヴィーリア様、目的地は決めませんのでご自由に見学なさってください。それでなにか気になった建物があれば言ってくださいね。入れそうな建物なら中に案内しますから」
「まあっ、それは楽しそうですわね! それではさっそく参りますっ!」
レヴィーリア様はふんすと気合を入れ、意気揚々と足を進めた。――そしていきなり車道に踏み入りそうになり、伊勢崎さんに引き止められる。
「ぬわっ!? ちょっ、レヴィ! そちらは自動車の通行路ですっ!」
「あら、そうだったのですね、ごめんあそばせですわ。それではあちらに行ってみることにいたします!」
クルッと踵を返し、今度こそ歩道をズンズンと歩くレヴィーリア様。その背中を俺と伊勢崎さんは慌てて追いかけたのだった。
◇◇◇
いきなり肝を冷やす事態になったりもしたけれど、その後は伊勢崎さんがレヴィーリア様の隣を歩いてサポートをしてくれた。
「あの建物はなんですか?」「ここでは何が売られているのですか?」と矢継ぎ早に尋ねるレヴィーリア様に伊勢崎さんがスラスラと答えていく。
この辺りの繁華街は俺が勤めていた会社からそれほど離れてはなく、俺もそれなりに詳しいのだが伊勢崎さんも詳しかったようだ。駅近くだし、友人と出歩くこともあったのだろうか。
そんな頼もしい伊勢崎さんと楽しそうなレヴィーリア様の背中を眺めながら、その後ろを俺がついて歩く。そして突き刺さる視線の数々。
後ろにいるとよくわかるのだが、道ですれ違う人々が二人に振り返っているのだ。
「え、ヤバ。めちゃかわいくね?」「どこのモデル?」「オーラやばすぎ」「なんかの撮影してんの?」
振り返った人々がひそひそと囁きあっている。スマホで写真を撮ろうとする連中までいたので、さりげなく二人を背中で隠す。
……ああ、そうか。大家さんが言っていたのはこういうことなのだろう。
二人とも目を見張るほどの美人だし、いくら服装に気をつけても目立つのは避けて通れないということだ。しかしそうなってくると――
「ねえねえ今ヒマ? ヒマだよね? よかったらオレらと遊ばね?」
危惧した途端に想定通りのイベントが発生した。金やピンクに髪を染めたチャラ男たちが伊勢崎さんたちの前に立ち塞がる。
「お姉さま、突然話しかけてくるなんて、この者たちは少々無礼ではありませんこと? それともこれもこちらでは普通なのでしょうか?」
足を止められ、少し苛立った声のレヴィーリア様。そんな彼女の様子を気にかけることもなく、チャラ男たちはさらにテンションアゲアゲだ。
「ギャハッ! 何言ってんのかわかんねー!」「マジか、外国人じゃん!?」「ちょうどよくね? オレらで楽しいトコ、カンコーさせてあげよーぜ!」「おっ、ソレいいね~!」
などと口々に話すチャラ男たちだが、伊勢崎さんが短く答える。
「結構です。どうかお引取りくださいませ」
呆気に取られたように、一瞬シンと静まり返るチャラ男たち。だがめげることもなく数秒後にはまた騒ぎだす。
「おっ、この子は日本人じゃーん!」「言葉通じるのマジ助かるー!」「てかお嬢様!? お引取りくださいませウケる!」「とりま早く行こうぜ? クルマはあっちに停めてっから!」
そう言って強引に伊勢崎さんの腕を掴もうとするチャラ男。おっと、さすがにそれはNGだ。
俺は伊勢崎さんとチャラ男の間に割って入った。
カクヨムで先行投稿している本作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女』がカクヨムコン8の異世界ファンタジー部門で、特別賞とComicWalker漫画賞のW受賞いたしました!やったー!
詳しくは活動報告に書いてみましたので、よろしければコチラをお読みくださいませ!
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1337278/blogkey/3157511/
そしてこの機会に画面下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援していただけると嬉しいです。今後とも『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女』をよろしくお願いいたします~!\(^o^)/




